無料会員募集中
.政治  投稿日:2025/6/22

理解不能な政治家の言動が加速させる若者の政治離れ


福澤善文(コンサルタント/元早稲田大学講師)

 

【まとめ】

  • 政治家の説明不足や公約違反が若者の政治離れを招いている。
  • 消費税やスパイ防止法、外国人の免許取得など「なぜ?」と思うことが多い。
  • 若年層投票率向上のために、政治家は「有言実行」と「分かりやすい説明」を。

 

選挙が近づくと現職の政治家と立候補者が民衆の前に現われ、「皆さんの声を政治に反映させます。」と声高に叫ぶ。そして、選挙が終わると所属する党とそこのお偉方に従い、民意とはかけ離れていく政治家も多い。選挙民から選ばれた政治家が民意を反映して、この国の将来を決めるのであって、所属する党や派閥、ましてや、選挙で選ばれたわけでもない官僚の言うままになってはいけない。

 

今の日本の政界は古い政治家から志ある若手への世代交代が必要とされている。しかしながら、少子化が進み、若い世代の人口はますます少なくなっており、投票する側も、政治家として選ばれる側も、人材不足が否めない。選挙権年齢が20歳から18歳へと変更され、実行されたのが2016年だが、若い年齢層の投票率はなかなか上がらない。自分の1票ではどうにもならないという諦め感と政治家の不人気が原因だ。

 

13歳のハローワーク公式サイトが実施した中学生の人気職業ランキングではプロスポーツ選手、イラストレーター、外交官、パティシエなどが上位にくるが、政治家は86位で、便利屋、ペットシッターよりも下だ。子どもたちに政治に興味を持ってもらおうという活動は、一部にあるにはあるが、政治はなかなか興味の対象にはならない。番組名とは裏腹に、討論になっていない日曜朝の政治番組や国会中継を観る子どもはあまりいないと思うが、ネットで政治家の発言を読んだり聞いたりして、どれだけの子どもたちが政治家の発言に感銘を受けるだろうか?いや、国民の実態と政治家の発言がいかに乖離しているか疑問を持つ子どもも多いはずだ。政治家の発言は回りくどく、意味をつかめないことが多い。政治家には子どもにもわかるように説明してもらわないと、子どもたちにとって政治は益々遠いものになっていく。

 

物価はなかなか下がらない。それでは、買い物時に支払われる消費税率を下げれば、支払い金額が下がり、国民の生活も楽になるはずだということは子どもでも分かる。消費税は社会保障とリンクしているので下げられないと政治家は言うが、大人も納得できない説明を子どもが納得できるはずがない。消費税を社会保障とリンクさせている国は日本以外にはないので、海外でも理解されないだろう。選挙対策で自民党は消費税率を下げずに、給付金支給を持ち出しているが、手間とコストもかかる上、効果も限定的と思われる給付金支給にどうして走るのか?

 

6月14日の産経新聞の産経抄に、スパイ防止法の制定について、「私は慎重だ」として、後ろ向きの外務大臣のことが書いてあり、多くの読者が驚いたことだろう。「日本はスパイ天国だ」との中曽根康弘総理大臣(当時)の発言があった1980年代中頃から、40年たったのに政府が何の立法措置もとっていないことに呆れてしまう。2020年にはスパイ容疑の在日ロシア通商代表部員が、警察庁の出頭要請に応じず、出国直前、空港にいたのがわかっていたにも拘わらず、拘束もせずに帰国させた。一方で中国ではスパイ容疑で日本人ビジネスマンが逮捕されている。どうして日本はいまだにこんな甘い対応しかできないのか。

 

外国人が外免切替制度を使い、簡単に日本の免許証を取得し、交通事故を起こすケースも多発している。警察庁長官が同制度の見直し検討を発表したのが、5月22日だ。一体いつ改定されるのだろうか。政府が調査、検討している間に同制度で日本の免許を取得する外国人が更に増える。なぜすぐに対策をとらないのだろうか。今の政治を見ていると、「どうして?」「なぜ?」と思うことが多い。それに対する政治家の説明は不明確だ。説明不足なのか、ロジックが通らない政治を行っているのか、わからないことも多い。選挙に関して言えば、『公約』を守らない政治家も多い。小学校で「約束を守るように」教えられている子どもたちの前で、当選するなり公約軽視、公約破りを行う政治家はみっともない。今やSNSであらゆる情報が開示されている。フェイクニュースを信じるのは大間違いだが、政治家が、あたかも国民が無知であるかのごとく、間違った主張をするのもみっともない。

 

大きな期待を持たれて誕生した旧民主党政権は政治改革ができずに支持者をがっかりさせた。あれだけ大騒ぎをした郵政民営化も今や失敗といっていいほどの惨状だ。就任前と今とでは態度が様変わりした現首相といい、期待感が大き過ぎるあまり、結果として大きな失望感を味わった人も多いはずだ。言い換えれば、政治家に過大な期待を持つべきではないということだ。

 

人口減少、少子化の流れは止まらない。この中で、政治に対する諦め感が蔓延して投票に行かない人々が若年層にまで及ぶのであれば、日本の将来に希望は無い。政治家は襟を正して一般国民にわかりやすい政治を目指すべきだ。その第一歩が、「有言実行」であり「子どもにも理解できる説明」だ。 

 

トップ写真)国会議事堂 出典)w-stock/GettyImages

 

 




この記事を書いた人
福澤善文コンサルタント/元早稲田大学講師

1976 年 慶應義塾大学卒、MBA取得(米国コロンビア大学院)。日本興業銀行ではニューヨーク支店、プロジェクトエンジニアリング部、中南米駐在員事務所などを経て、米州開発銀行に出向。その後、日本興業銀行外国為替部参事や三井物産戦略研究所海外情報室長、ロッテホールディングス戦略開発部長、ロッテ免税店JAPAN取締役などを歴任。現在はコンサルタント/アナリストとして活躍中。


過去に東京都立短期大学講師、米国ボストン大学客員教授、早稲田大学政治経済学部講師なども務める。著書は『重要性を増すパナマ運河』、『エンロン問題とアメリカ経済』をはじめ英文著書『Japanese Peculiarity depicted in‘Lost in Translation’』、『Looking Ahead』など多数。

福澤善文

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."