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.政治  投稿日:2025/8/22

石破さんはなぜ留任するべきなのか?(1):地方創生


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

「地方創生2.0基本構想」には行政側の謙虚な反省が記載されている。

・岸田政権のデジタル田園都市国家構想を継承し、リベラルな政策を進められるのは石破さんだけ。

・石破さん以外に既得権益者を説得し主導できるのは石破さんくらいだろう。

石破茂首相の辞任を求める「石破おろし」の動きが自民党内で加速しているそう。総裁選の前倒しするのか。自民党総裁選挙管理委員会において、前倒し議論が開始された。新聞報道によると、議員と都道府県連代表の過半数が賛同すれば、9月に総裁選が実施される見通しだそうだ。石破首相が不出馬を表明すれば、事実上の退陣となり、ポスト石破を巡るレースが本格化する。石破政権は今、まさに「岐路にたっている」状態なのである。

しかし、国民にとっては自民党内のことにすぎない。辞任するかどうかは自民党内で話し合ってくださいというだけだ。自民党の路線としては、リベラル・中道の支持を取るしかないので、誰に代わっても厳しくなる。参政党や日本保守党が維持し、岩盤保守が復活することはもはやない。

今回から、石破政権の意味を多様な視点でその理由を考えていきたい。第一は、地方創生だ。

 

■理由1:石破さんの「地方創生2.0」の可能性

東京一極集中問題。筆者が30年近く言い続けている(筆者の過去記事)が、この問題は一向に解決しない、それどころか悪化する一方だ。

【出典】総務省資料より

 

この問題を解決に少しでも貢献できる政治家となると、石破さんくらいしか思い浮かばない。首相になってからも「令和の日本列島改造」とも位置づけ、人口減少や地域格差といった課題に真正面から向き合いながら、地方が持つ魅力と可能性を最大限に引き出すことを求めているのだ。

 

「地方創生2.0」の主な特徴

  • 若者・女性に選ばれる地方づくり
    • 最低賃金の引き上げ
    • 育児休業の取得促進
    • 地域コミュニティや生活インフラの強化
  • 東京一極集中からの脱却
    • 二拠点居住の推進
    • 地方への企業誘致や人材分散
  • 地方経済の高付加価値化
    • 農林水産業や観光のブランド化
    • スタートアップ支援やオープンイノベーションの促進
  • デジタル・新技術の活用
    • AIやWeb3.0を活用した地域活性化
    • デジタル公共財の普及
  • 「産官学金労言」の連携による地域主導の改革
    • 地域が自ら課題を見つけ、解決策を考える仕組みづくり

 

こうした「地方創生」を本格的に進めることができるのは石破さんしかいない。

 

■理由2:失敗から学ぶ地方創生最後のチャンス

「地方創生2.0基本構想」の資料を読んでみればわかるのだが、謙虚な反省が記載されている。行政側が真摯な反省を示していることなんて、なかなか見られないことだ。総務省資料にも「若者・女性からみて「いい仕事」、「魅力的な職場」、「人生を過ごす上での心地よさ、楽しさ」が地方に足りないなど 問題の根源に有効にリーチできていなかったのではないか」「人口減少がもたらす影響・課題に対する認識が十分に浸透しなかったのではないか。」「人口減少を前提とした、地域の担い手の育成・確保や労働生産性の向上、生活基盤の確保などへの対応が不十 分だったのではないか。」「産官学金労言の「意見を聞く」にとどまり、「議論」に至らず、好事例が普遍化されないなど、地方自らが主体的に考え行動する姿勢や、ステークホルダーが一体となった取組、 国の制度面での後押しが不十分だったのではないか。」といった反省の文言が続く。こうしたことを可能にした石破政権の体制も凄い。とても優秀な平将明さんをデジタル庁、「県庁は不要」「道州制も不要」の発言で話題の村上誠一郎さんを総務大臣にするなど、「最強の布陣」と言える。

ちなみに、地方を豊かにするためには、(1)省庁移転と企業本社移転、(2)企業の生産性の向上・付加価値に見合った価格設定で「海外に高く売れるモノを作って売る」こと、(3)実質賃金の上昇を実行することに注力すればいい。

 

■課題:都内の再開発を止めることができるか?

「地方創生」の失敗としては

・若者と女性が東京へ流出防止できず

・大企業本社の地方移転が進まない

・売れる商品・サービス開発とイノベーション支援が不十分

・権力構造の再配置ができなかった

・昭和の「社会モデル」に手を付けられず

・「エコシステム」という空虚なキーワードが並び、実質的に運用できるモデルは提示されず

・総花的かつ、「あれも」「これも」の政策メニューが並び、行政関与が少しばかり過剰に

などの点があげられる。

 

岸田政権は「一極集中の是正」を明確にして、「新しい資本主義」という構想を掲げ、デジタル田園都市国家構想を進めてきた。その流れを継承し、リベラルな政策を進められるのは石破さんだけだろう。

 

実際のところ、人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査で「地方から東京への集中は望ましくない」と答えた者の割合が全体で48.3%もいる。国民の約半数。東京都民も40%程度である。地方から東京への人・モノ・カネ・情報の移転が止められない現状では、とりあえず都心の再開発を促進する法律の見直しをするしかない。都市空間の規制強化、地域分散、DX化が問題解決案になる。しかし、利害関係者は山ほど多い。不動産業界・ディベロッパーなどなど。石破さん以外にこれらの既得権益者を説得して主導できるのは石破さんくらいしかみあたらない。

地方創生の関係者は頑張っている。地方創生の反省をもとに、着実に進んでいる地方創生を止めてはいけない。

 

トップ写真)東京の都市景観の写真素材

出典)Starcevic /Getty Images

 




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