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.社会  投稿日:2021/3/15

「キーワードは恩返し、地方で夢の実現を」石破茂氏 下 一極集中問題の解決を【菅政権に問う】その10


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・コロナ禍で経済界に、地方に本社移転してもやれる、との意識。

・地方創生は「キャリア再生」と「地域再生」のハイブリッド。

・故郷や縁ある地域に「恩返し」を。「地方が世界を救う」発想も。

 

東京一極集中でカギになるのはやはり企業である。今回は企業経営とビジネスパーソンについて、前回に続いて石破茂衆議院議員(元地方創生担当相)に話を聞いた。

■ 地方への本社移転!経済団体も意識を変えてきた?

その前に、まずは企業の本社集中度合など数字を確認してみよう。

▲図 筆者作成(第一回より再掲)

集中度合は、「フォーチュングローバル500」都市別グローバル企業本社所在数占有率は73%、資本金100億円以上の本社は51%である。このように大手企業が集中している実態は明らかになっている。

石破さんは言う。

「(地方創生担当大臣時、経済団体は)本社を移転することのメリットを実感していなかった。しかし、コロナによって、地方に本社を移してもやれる、という意識が出てきたのではないか」。

石破さんは、地方創生担当大臣当時を振り返る。

「当時、経済団体のノリは悪かった。おそらく、中心になっている世代の人々が東京で成功した体験があるからだろう。官僚と同じメンタリティーなのかもしれない。故郷に帰ったら名誉市民、名誉県民となり、錦を飾るという夢、サクセスストーリー(成功物語)をかなえた人達だから、発想の転換ができないのかもしれない」と。

東京に出てきて(もしくは東京出身であるかもしれない)、仕事で出世し、東京にて生活の基盤を築いてしまうと、仕方のない面もある。

■人生100年時代の新たなキャリア

さらに、石破さんは語る。

「大きな会社に勤めても、みんながみんな、取締役になれるわけではない。同期で1割くらいではないか。うち(石破さんが勤めていた旧三井銀行)の同期でも3%くらいしか役付きにはならなかったと思う」

「出世は運の要素が大きくて、能力の高い人でも必ずうまくいく、というわけではない」

まさしくビジネスパーソンの世界をわかっている。そうなのだ。経営幹部になれなかったからといって、仕事にプライドと責任をもって行ってきた人たちなのである。

▲写真 首相官邸にて、内閣府地方創生人材支援制度の発足メンバーでの撮影。左下が石破さん。左上が筆者(著者提供)

■ 人生100年時代の「キャリア」と地方の可能性

石破さんは、

「そういう中央の人材に、地方でのキャリアを提案したい。過去に営業課長をやっていた、地元の支店にいた、故郷があるなど、何かのご縁のある地域に、40代、50代の社員が行って地元企業と協働することはできないか。もとの会社の方でも、こういう人材に退職金を割り増しするとか、後押しするような方策を考えてほしい。移住した先で起業したり、二地域居住で副業をやってもらうのもいい」と。

仕事でご縁のあった地域、もしくは、故郷に戻り、そこで新たなチャレンジをする。会社を退職するとカイシャという共同体が人間関係をはじめ中心であった企業人は、孤独になったりしがちである。

石破さんが進める地方創生では、ビジネスパーソンが、新たなチャレンジができ、社会に貢献できる。それなりの年月、仕事をしていたら、自分のビジネス経験は多様である。経験をベースに新たな挑戦に取り組んだってよい。そこでの新たな学びと成長は自分自身の再生にもつながる。「50Gおじさん」と言われて、仕事できないおじさんと揶揄されるが、そうしたことは偏見だと個人的には思う。

確かに地方暮らしは厳しい面もあるが、ビジネスチャンスは地方にこそある。石破さんが言う地方創生は、まさに、人生100年時代のキャリア再生と地域再生のハイブリッドなのだ。

石破さんは語る。

「キーワードは、恩返し。地方で夢を実現する、地方が世界を救う発想があってもいい」と。

はこちら)

トップ写真:インタビューに応じる石破茂元地方創生担当相(著者撮影)




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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