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.国際  投稿日:2020/12/29

米、肥満でコロナのリスク大


ファイゲンバーム 裕香(ジャーナリスト)

「裕香のFrom California」

【まとめ】

・コロナ下でファストフード、ジャンクフード消費増。身体活動は減。

・肥満は高リスク—2021年3月までに米で小児肥満127万人増の予測も。

・健康的な食事と適切な運動への親や大人のサポートが不可欠。

米国国民健康栄養調査のデータによれば、2015年から2018年の間に、アメリカの子どもと、10代の若者の3分の1以上が日常的にファストフードを食べていたという。

メリーランド州ハイアッツビルにある国立健康統計センター(NCHS)の調査によると、2歳から19歳までの子どもと青年の11パーセント以上が、ファストフードから1日のカロリーの45パーセント以上を摂取していたと報告した。米国疾病予防管理センター(CDC)の調査では、小さな子どもよりも、年齢の高いティーンエイジャーの方がファストフードをより食べていて、白人の子どもよりも、黒人やヒスパニック系の子どもたちの方がファストフード を食べる割合が高いことも分かった。

更に、アメリカでは新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウン中に、多くのファストフードやジャンクフード製品の売り上げが急増し、ホットドッグの売り上げは、今年3月に前年比120パーセント以上増加した。

Insiderの編集者Sophie Kleemanは、ホットドッグは手頃で簡単に用意できて、アレンジしやすく、美味しいため「隔離生活において、最適な食べ物だ」と述べた。ピザチェーン大手のドミノピザでは、2020年第2四半期の売り上げが16パーセント増え、2020年前半の純利益は2億4,000万ドルと、2019 年より30パーセント多いと報告した。

ブルームバーグによると、2020年5月中旬までに、ポップコーンとプレッツェルの売り上げは約50パーセント増加し、ポテトチップスの売り上げも、2019年の同時期と比べて、30パーセント増加した。オレオやその他のスナックメーカーも、パンデミックの初期に、クッキーやクラッカーの売り上げが30パーセント近く伸びたと話す。

アメリカ人が、単にファストフードが食べたいという欲求のせいだけではなく、パンデミックで多くの人が職を失い、栄養価の高い食事をつくる時間とお金も減ってしまったからだ。また、4月から7月にかけて約3.6パーセント上昇した食料品価格も、ファストフード消費量の増加に拍車をかけた。長引く自粛生活で外出が制限され、在宅中は、だらだらと食べてしまい、家での間食がストレス解消や家族とのコミュニケーションにおいて、大きな役割を果たしていたと言われている。消費者は、通常より多くの塩味のスナックを食べていると、モンデリーズ・インターナショナルのCEO、Dirk Van de Putは述べた。

専門家は、学校の閉鎖により、アメリカでは肥満に該当する子どもたちの数が、さらに増える可能性があると警告している。アメリカでは、以前から子どもの肥満が多く、アメリカで生活する子どもの約3分の1近くが太り過ぎで、糖尿病予備軍で将来の生活習慣病につながると言われている。

ワシントン大学のRuopeng An教授によれば、学校閉鎖によりアメリカの子どもたちは体育の授業や休み時間や放課後のスポーツプログラムなどに参加する機会がなくなっていたり、自粛生活で屋外で体を動かす時間が減っており、小児肥満を誘発する恐れがあると、注意を呼びかけている。今年12月まで学校が閉鎖されたままの場合、「2021年3月までに、新しく約127万人の子どもが小児肥満となるでしょう」とRuopeng An教授は述べている。

2020年3月からアメリカのほとんどの公立学校では、学校閉鎖を実施したが、このような社会環境の変化が子どもの身体活動量を減少させた。大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーによれば、幼稚園から高校までの生徒の約60パーセントが2020-2021年度の新学期をオンライン授業のみで迎えたと推定している。残りの20パーセントは、オンライン授業と対面式クラスがミックスされたハイブリッドモデルを選び、残りの20パーセントが対面式のみを選んだ。(※アメリカでは、各学区が独立しているため、学区によって学校再開の対応やモデルは、異なっている)。

都市部や大規模な学区は、オンライン授業にしているケースが多く、同じ学区の中でもオンラインを選んでいるのは、白人よりも黒人やヒスパニック系の子どもに多いことが分かった。複数の世論調査で、黒人やヒスパニック系の親は子どもたちに対面式の授業を望んでいないケースが多いことも判明した。

肥満や健康促進のためのプログラムを支援する非営利団体 PHIT Americaの創設者Jim Baugh氏は、「コロナ下で、小学校のほぼ半数が体育の授業を提供していない。子どもたちは、未だかつてない程、座っている時間が増えた」と述べた。イギリスのスポーツ医学誌で発表された研究によれば、パンデミック前の調査でも、アメリカは子どものフィトネスにおいて、世界50か国中、47位にランク付けされている。

▲写真 イメージ 出典:Pixabay

米国保健福祉省では、子どもの身体活動として、毎日中程度から高強度の運動を少なくとも60分間以上行うことを推奨しているが、実際にはアメリカの子どもたちの4分の3以上は、推奨されている身体活動の水準を満たしていない。新型コロナウイルスによる休校は、これに拍車をかけている。

ロックダウン中のファストフードやジャンクフードの消費量の増加は、新型コロナウィルスのリスクを高めることにもつながる。ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究によると、BMI(Body Mass Index:ボディマス指数)が30以上の肥満の人は、ウィルスで入院する可能性が113パーセントも高く、死亡のリスクも48パーセント高いという。

医療機関の報告からも、アメリカの新型コロナウイルスの重症患者には、肥満や心臓病、糖尿病などの基礎疾患のある人が多いことが分かっている。肥満率もCDCの報告では、黒人(49.6パーセント)、ヒスパニック系(44.8パーセント)、白人(42.2パーセント)、アジア人(17.4パーセント)となっており、人種によって偏りがあることが分かる。アメリカノースカロライナ大学の栄養学の研究を主導したバリー・ポプキン教授は、肥満が引き起こす新型コロナウイルスのリスクは、想像よりもずっと大きかったと語る。その上で、多くの国で健康的な食生活を優先する必要があり、甘い飲み物やジャンクフード、加工食品は控えるべきだと述べた。

テキサス大学のLona Sandon氏は、「自宅にいる場合、毎日昼食か夕食の後に、散歩や自転車に乗ったり、ローラーブレードやスケートボードで公園に行くのも良い」とアドバイスした。腕立て伏せや腹筋運動、ジャンピングジャック(挙手跳躍運動)の回数を少しずつ増やしていったり、犬がいるなら1日に数回、散歩させるといった方法を提案している。そして、これらを楽しく行うことが大事だと述べた。

▲写真 イメージ 出典:Pixabay

身体活動の不足と長期にわたる学校の閉鎖により、子どもたちの健康が危ぶまれているが、健康的な食事と適切な運動を続けられるよう、親や近くにいる大人のより踏み込んだサポートが欠かせなくなっている。

-参考文献-

Coronavirus: Obesity ‘increases risks from Covid-19’(『コロナウイルス。肥満「コビド19からのリスクを高める」』)

Fast food makes an unhealthy comeback among kids(『ファストフードが子供たちの間で不健康な人気回復』)

People are ordering more pizza during the pandemic and Domino’s is taking the biggest slice of sales(『パンデミックの最中にピザの注文増。ドミノが最大のパイを手にしている』)

It’s okay that kids have more screen time during COVID-19

(『コロナ下では子どものスクリーンタイムが増えても仕方ない?』)

Projecting the impact of the coronavirus disease-2019 pandemic on childhood obesity in the United States: A microsimulation model

(『米国でのコロナウイルス感染症2019年パンデミックの小児肥満への影響予測: マイクロシミュレーションモデル』)

Stay-at-Home Orders Could Mean More Obese Kids: Study

『研究:ステイホームでの食事配達注文で子どもの肥満増か』

Hot dogs are the best coronavirus, COVID-19 quarantine food

(『ホットドックに栄冠、コロナ隔離食』)

Schools Brace for More Closures, OSHA COVID-19 Enforcement Priorities, Digital Learning Gap

(『コロナ禍でのさらなる学校閉鎖に備え、労働安全衛生庁の優先事項はデジタル学習ギャップ』)

Lack of physical activity during COVID-19 may fuel childhood obesity, new study finds

(『コロナ下での運動不足が子どもの肥満もたらす可能性―調査で判明』)

トップ写真:ファストフード(イメージ) 出典:Pxhere




この記事を書いた人
ファイゲンバーム 裕香ジャーナリスト

1999~2004:株式会社テレビ西日本 (福岡)にて、アナウンサーとして勤務。

2004~2006:ウガンダ共和国 NGO Ashinaga Rainbow Houseにてケアテイカーとして従事。

2006~2007:東京放送株式会社 24 時間ニュースチャンネル NEWS BIRD 契約キャスター 。

2007 :NPO 法人MUKWANOを設立。

2009:イギリス ブラッドフォード大学 アフリカの平和と紛争学修士号取得

東京大学大学院 総合文化研究科 地域文化学科(国際貢献)修士号取得

 

現在、カリフォルニア在住。バイリンガルMCプロフェッショナル所属

ファイゲンバーム 裕香

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