[宮家邦彦]<ウクライナ騒乱事件はロシアの仕業?>陽動作戦か?それとも本格的介入の準備か?[外交・安保カレンダー(2014年4月14-20日)]
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
◆宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2014年4月14-20日)
20日の日曜日はキリスト教のイースター(復活祭)だ。
この聖なる日は基本的に、「春分の日後の最初の満月の次の日曜日」とされており、西方教会と東方教会では計算が微妙に異なるのだそうだが、2014年は両教会とも同一日となっている。欧州では復活祭の前の聖金曜日(Good Friday)と翌日の月曜日も休日となるらしい。
当然ながらEU諸機関も4月17日から21日まで休みに入るが、その直前の4月14日〜15日のEU外相理事会ではウクライナについて議論する。また、17日にはウクライナで米、EU、露、ウクライナの四か国が会談するという。立ち上がりから厳しい局面が続くが、ウクライナ暫定政府は大丈夫なのだろうか。他人事ながら気になるところだ。
最近のウクライナ南東部での騒乱事件はどこまでがロシアの仕業なのだろう。ここにもクリミアで見られたような例の正体不明のロシア人らしいミリシアがいる。これを見る限りは、常識的に、またロシアがスペツナツ(特殊任務部隊)を投入したようにも思えるのだが。このまま、流血の惨事となるのか。イースター休暇の直前だけに衝突拡大が懸念される。
ロシアが意図的にやっているとすれば、その真の目的は何なのだろう。単なる陽動作戦か、それとも本格的介入の準備なのか。目的がウクライナ暫定政権に「連邦制」受け入れさせることなら理解できないではないが、そうだとしても暫定政府側がデモ隊の強制排除を始めれば、全てが一夜にして変り得る。正直、今は先を読み切れない。
中国では、14日にシリア反体制勢力が北京を訪問する。同日には同じく北京で第6回となる中印戦略対話が開かれる。また、今週は六者協議の中国側代表・武大偉が訪米する。更に、21日からは河野海幕長が「西太平洋海軍シンポジウム」に参加するため訪中するという。日中海軍トップ会談が開かれれば2009年以来だそうだ。
それにしても、中国はよくまあ様々な仕掛けを考えだすものだ。個々のイベントに大成功がなくても、これらを積み重ねていく実行力、忍耐力には脱帽する。GDPは日本をちょっと追い越したばかりなのに、彼らが宣伝費・政治工作費に使う資金は半端ではない。人民を犠牲にすれば、あの種の資金が使えるということなのか。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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