共同親権、2026年4月施行で何が変わったのか
安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)
【本稿のポイント】
・2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の共同親権が選択可能となった。
・梅村みずほ参議院議員(参政党)は、DV・虐待の「仕立て上げ」による親権剥奪が男女双方に発生していると指摘した。
・共同親権は子どもの「セーフティネット」として機能する一方、選択制ゆえの新たな課題も残された。
2026年4月1日、改正民法が施行され、日本でも離婚後の「共同親権」が選べるようになった。先進国の中でも単独親権のみを維持してきた日本が、ようやくグローバルスタンダードへ舵を切った歴史的な法改正である。だが、この制度をめぐる論争は、施行をもって終わったわけではない。共同親権の導入を後押ししてきた参政党・梅村みずほ参議院議員が、Japan In-depthチャンネルの対談で明かしたのは、男女どちらにも起きている「DV連立て上げ」と、それを支える「離婚スキーム」の実態だった。
▶対談の全編動画はこちら https://www.youtube.com/live/j-5KvTOCvYM
なぜ「ストップ児童虐待」が共同親権につながるのか
「STOP!児童虐待」を一貫して掲げてきた梅村議員の政治家としての原点は、元アナウンサーとして報道現場で目にしてきた虐待死事件である。なぜ虐待防止の問題意識が、共同親権の導入という制度改革に行き着くのか。
梅村議員は、2018年に東京都目黒区で当時5歳の船戸結愛ちゃんが、母親の再婚相手である継父からの虐待によって衰弱死した事件、そして2026年3月に京都府南丹市で小学6年生の安達結希君(11)が母親の再婚相手である養父によって殺害された事件に触れて、以下のように述べた。
「結愛ちゃんが亡くなったとき、お母さんも辛かろうなと思ったんですが、それと同時に『生みの父親』──実の父親は今どこにいるんだろう、と。今回(南丹市の事件)も全く出てこなかったですよ」
単独親権下では、親権を持たない実親は子どもの安否や生活状況を知る術がほとんどない。離れて暮らす親が子どもの異変に気づけないことが、結果として虐待死を防ぐ最後の砦を奪っているのではないか。
共同親権の意義について、梅村議員は、両親双方が親権を持つことで、子どもを取り巻く「多層のセーフティネット」が機能すると主張した。
男女どちらにも起きる「親権剥奪スキーム」とは何か
共同親権の議論で最も論争となってきたのが、DV被害者の保護との関係である。「DV被害者を加害者から逃がせなくなる」という反対派の主張に対し、梅村議員は別の角度から問題を提起した。
「DVをやってないのに、DVをやったかのように仕立て上げられて、親権を剥奪するために出ち上げられる事例も枚挙にいとまがない。そういうことは男性だけじゃない、女性もこの嫁は子供に虐待するんだ、精神的な病があるんだという風にされて、追い出しを受けたり、親権を剥奪されるスキームができてきている」
つまり、相手を家庭から追い出して子どもを自分のものとするために、DV・虐待・精神疾患などの主張を「仕立て上げる」ケースが、男性側からも女性側からも生じているという。
この問題で梅村議員が強く批判したのが、一部の弁護士の関与だ。「こうしたら別れられますよ」というノウハウを示し、結果として子どもの養育費を弁護士報酬として継続的に受け取る構造があると指摘する。
「子供の養育費は、当たり前に子供を養育するための費用であって、そこを弁護士の報酬とすることは、多くの国民の皆さんからすると驚きだと思いますし、あってはならない。海外では法的に整備もされている」
これは、もはや「離婚ビジネスと言ってもいい」のかもしれない。子どもの福祉が経済的インセンティブの背後に追いやられている現状への憤りが、言葉に滲んでいた。
共同親権はDV被害者を守れるのか
一方で、DV被害者団体や反対派の法曹界からは、共同親権が「DV加害者と離婚後も関わり続けることを強いる」との懸念が根強く示されている。この点について、法務省は次のように整理している。
DVや虐待のおそれがある場合、家庭裁判所は共同親権を定めることができず、必要的に単独親権としなければならない。協議離婚で相手から共同親権を求められても、応じる義務はない。
【出典】民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕(法務省)
ただし梅村議員は、この「選択制」にこそ新たな宿題が残ったと指摘する。協議離婚で「単独親権でいいよね」と相手から押し切られたとき、真の意思に基づく合意か、支配下での合意か、外部から見分けるのは難しい。
「支配の構造に置かれていて、本当は娘や息子と一緒に暮らしたい親も、『分かりました』と泣き寝入りして親権を取れないリスクは未だ残ったまま」
改正法は付則で「親権者の定めが父母双方の真意であることを確認する措置について検討を加える」と定めているが、具体策はこれからの課題だ。
「片親阻害」とは何か
対談では安倍編集長が、自身の取材で出会った少女のエピソードを紹介した。
離婚後、母親に引き取られたその少女は、母親から父親について「ひどい人だった」と繰り返し聞かされて育った。だが18歳になり、本人の意思で父親に会いに行ったところ、父親は彼女のことを「大好きで愛してくれて、ずっと会うことを待ち望んでいた」存在だった。少女は涙ながらにこう言ったという。
「私のこの10数年間は何だったのか」
これは「片親阻害(parental alienation)」と呼ばれる現象だ。一方の親が他方の親について子どもに繰り返し否定的な情報を与えることで、子どもの認知を歪める。梅村議員はこれを「虐待そのもの」と呼ぶ。
「片親阻害という言葉を使うことを、共同親権に反対してきた人は極端に嫌う。『そんなものはない』と。──当たってるからでしょ」
もっとも、この概念をめぐっても賛否はある。DVや虐待の現場では「片親阻害」が加害者から悪用される懸念も指摘されている。
日本の単独親権はなぜ「岩盤」と呼ばれたのか
先進国で離婚後の単独親権制度を維持してきたのは、インド、トルコ、北朝鮮、日本程度とされる。それを動かしたのは何だったのか。
梅村議員は、外国人配偶者の事例が国際問題化したことを大きな要因として挙げる。日本人配偶者に子どもを連れて行かれ、長期間にわたって会えなくなる外国人親が、自国政府を動かし、日本政府にプレッシャーをかけてきた。梅村議員自身、フランス国民議会から指名で呼ばれ、オーストラリアでは外相のペニー・ウォン氏と1対1で面談した経験を持つ。
「ペニー・ウォン外務大臣は、『私は普段、現政権との関係を重要視するから、野党の議員と1対1で話をすることはほとんどない。ただ子どもの権利というものをオーストラリア政府がどれだけ大切に思っているか、お分かりいただけるだろう』と」
国際結婚の破綻で子どもを「連れ去る」行為は、アメリカや多くの先進国では刑事罰の対象だ。日本は2014年にハーグ条約を批准したが、それ以前の事案は条約の射程外で、今も救済の道がない国際カップルが多数存在する。
残された宿題──「共同養育計画」と社会の意識改革
梅村議員は今後の課題として「共同養育計画」の制度化を挙げた。海外には、離婚届の提出に詳細な養育計画書の作成を義務付ける国もある。
「これからはパパもママも親でい続けられる。男女の仲は終わったけれども、最初の共同作業が経験とだったら、最後の共同作業はどうやって子供を育てていくのか。この共同養育計画を作る時代になっていくべき」
法律を通すことは始まりに過ぎない。地方自治体、企業、産婦人科、学校現場、それぞれが「自分ごと」として取り組まなければ、改正民法は機能しない。梅村議員はそう強調した。
「日本人は自分ごとで考えていくのが苦手になってしまった」。対談中、何度か出てきたこの言葉に、共同親権という制度改革の本質的な課題が凝縮されている。法は枠組みを作っただけで、それを血肉化するのは社会の一人ひとりの意識でしかない。
対談の全編はこちら──共同親権だけじゃない、子どもを守る最前線
本記事で扱った共同親権の議論は、Japan In-depthチャンネルでの梅村みずほ参議院議員と安倍宏行編集長による対談(2026年5月25日配信)の一部である。本編動画では、共同親権以外にも、いま動く子ども保護法制の最前線が議論されている。
▶ 動画を視聴する
子どもを守る法律は足りているか?共同親権・日本版DBS・AI悪用の最前線|梅村みずほ参院議員
https://www.youtube.com/live/j-5KvTOCvYM
2026年5月25日(月)14:00〜ライブ配信。元フリーアナウンサーの梅村議員と安倍編集長が、共同親権・日本版DBS・AI生成CSAMという3つの動く子ども保護法制を約1時間で深掘り。
本編動画で語られた他の主な論点:
・日本版DBS(こども性暴力防止法)2026年12月25日施行──罰金刑10年遡及で「学校から先生が消える」リスク
・対象事業の二層構造──個人事業主・ベビーシッターは対象外という法の穴
・生成AI時代の児童ディープフェイク被害──現行法の二層空白と立法論
・国連サイバー犯罪条約14条──日本が選ぶべき立場
・国際結婚と「連れ去り」──ハーグ条約の射程外問題
・尊厳死と人生会議(ACP)──多死社会・超寿命化への備え
よくある質問(FAQ)
Q. 共同親権の導入で、養育費の支払いはどう変わるのか?
A. 改正民法では、養育費の不払いを防ぐため2つの仕組みが新設された。第一に、養育費債権に「先取特権」が付与され、当事者間の合意書面があれば、調停・審判等の手続きを経ずに差押え(強制執行)の申立てができる。第二に、離婚時に養育費を取り決めていなかった場合でも、暫定的に「法定養育費」として一定額を請求できる。法務省は2025年11月、法定養育費の金額を子ども1人あたり月額2万円とする方針を公表した。
Q. 共同親権で「親子交流(面会交流)」はどう変わるのか?
A. 改正民法では「親子交流」について複数の見直しが行われた。家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行う制度が新設されたほか、別居中の父母と子どもとの親子交流ルールも明確化された。また、祖父母など父母以外の親族と子どもとの交流について、家庭裁判所が「子の利益のため特に必要があると認めるとき」に限り、認められるようになる。
Q. 既に離婚している場合も共同親権に変更できるのか?
A. 変更できる。2026年4月1日以降であれば、既に離婚して単独親権となっている人も、家庭裁判所への申立てにより共同親権への変更が可能となる。ただし自動的に切り替わるわけではなく、家庭裁判所が子の利益の観点から個別に審査する。元配偶者の同意がある場合は調停で、同意が得られない場合は審判で裁判所が判断する。
Q. 離婚後に再婚し、子どもと再婚相手が養子縁組した場合、親権はどうなるのか?
A. 改正民法により、子連れで再婚し、子どもと再婚相手が養子縁組した場合の親権者ルールが明確化された。具体的には、養子縁組をした再婚相手とその配偶者(実親)が親権者となる。したがって、共同親権を定めた後に再婚して養子縁組をした場合、元配偶者は親権を失うことになる。
関連リンク(一次情報)
▼ 改正民法(共同親権等)/2026年4月1日施行
民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕(法務省)




























