ホルムズ危機とロシア制裁「戦略なき米国」が招く日本の進退窮まる複合危機
執筆:宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2026#11
2026年3月16-22日
■ 本稿のポイント
・AIが侵食した「牙城」: 筆者になりすまし原稿冒頭を執筆したAI。その完成度が突きつける人間の役割と存在意義への根源的な問い。
・「同盟の試金石」の崩壊: 米国の戦略・大義名分なきホルムズ海峡協力要請に、欧州は拒否。日本は安全航行に深く依存しながらも、進退窮まる外交的苦境。
・イラン危機が生んだ「禁断の前例」: 原油高騰を背景とした米国の対露石油制裁一時緩和。ロシア財政を潤し、孤立化失敗を世界に示した勝利宣言。
・EUの「エネルギー的ハラキリ」: ロシア側からの挑発的な揶揄。自国の誤りを認めず、戦略なき対抗措置を続ける欧州への痛烈な批判。
筆者の「牙城」をAIが侵食する衝撃が走る一方で、トランプ政権の戦略不在は、同盟の試金石たるホルムズ海峡問題で日本を進退窮まる状況に追い込んだ。さらにイラン危機がもたらした原油高騰は、米国の対露石油制裁を一時緩和させる「禁断の前例」を生み、ロシアの重要性を再認識させた。本稿は、AIの衝撃と、外交・安全保障上の難題が複合的に絡み合う緊迫の一週間を、宮家邦彦氏が独自の視点で鋭く分析した、示唆に富む外交論考です。(Japan In-depth編集部)
AIが「宮家スタイル」で書いた3段落――その不気味な完成度
「ホルムズ海峡」という言葉を、先週末からこれほど何度も聞くことになるとは思っていなかった。対イラン軍事作戦を理由にトランプ大統領が習近平への訪中延期を求めた、と報じられた時、正直「ここまで来たか」と思った次第だ。
トランプ政権はホルムズ海峡の確保・再開通に向け、同盟国・友好国に支援を求めた。だが欧州は一斉に断った。フォーリンポリシー誌が「Trump Seeks Help to Reopen Hormuz. Europe Says No.」と見事な一行で要約したが、欧州にとってはホルムズを通過するエネルギーの輸送先はアジアであって自分たちではない、という割り切りがあるのだろう。
そして欧州が断った後、トランプ氏の矛先は中国とアジアに向いた。日経新聞によれば、トランプ氏自身が「ホルムズ海峡が同盟の試金石」と述べ、「日本の反応を知りたい」とまで言ったという。うーん、これはなかなかの言い方だ。では、この状況をどう読むか。筆者の仮説はおおむね以下の通りだ・・・・・。
さてさて、ここまで読んできた読者の皆様は、どこか違和感を持たなかっただろうか。「別に?!」と言われたら身も蓋もないのだが、実は上記3パラグラフ、全てAIが作成したものだ。過去の外交安保カレンダーを全てAIに読み込ませ、面白半分に筆者のスタイルで「今週の原稿を書いて」と命令したら、出来上がったのがこれである。
正直、凄いというより、気味が悪い、とすら思った。これでは筆者はいずれ「不要」となるだろう。機械がここまで書けるとなると、人間はもっともっと創造的になる必要があるのだが、筆者にはそこまでの自信がない。自信はないのだが、今後とも一字一句心を込めて書いていくしかないと腹を決めた。もうAIを使うことは当分ないだろう。
戦略も大義名分もないホルムズ協力要請――日本はなぜ進退窮まるのか
その上で一言言わせてもらおう。今週は高市訪米という大イベントがあるが、本来はペルシャ湾の安全航行に深く依存する日本が、ホルムズ海峡の自由航行を維持するための国際的努力に協力するのは当然だ。ところが今回はこれと真逆の事態が進行している。
そもそも今回の戦争はイランの暴発ではなく、イスラエル主導で始まったもの。米大統領には戦略も大義名分も同盟国への根回しもない。更に、ホルムズ海峡安全航行に向けた国際協力システム構築を言い出したのは戦争長期化が懸念されてからのこと。こんな状況の下では同盟国も「協力したくてもできない」のではないか。詳細は今週の産経新聞WorldWatchコラムに書くつもりなので、ご一読願いたい。
ロシア・メディアの視点:対露石油制裁の緩和が示す「前例」と孤立化の失敗
さて、次は吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、今週は同研究員がまとめた「米国によるロシア産石油制裁の緩和――ロシア・メディアから」を以下の通りご紹介する。ロシア・メディアが「イラン戦争により石油市場が売り手市場になった」ことを手放しで歓迎しているかのようで、実に興味深い。
(本文)
トランプ政権は12日、イラン危機に関連して原油価格が高止まりするなか、対露制裁の緩和に踏み切った。海上輸送中のロシア産原油・石油製品を対象に、1か月の販売を許可する。ウクライナやEU、欧州各国などは「制裁を維持すべき」として批判している。
ロシアでは、今回の米国による制裁緩和措置は、一時的な措置だとして慎重に見る専門家も存在するが、やはりクレムリン周辺からは、直接的に国家財政を潤すとして歓迎する声とともに、世界の原油市場におけるロシアの重要性を改めて示すものだとして評価する声が多い。
ドミトリエフ発言:「EUはエネルギー的“ハラキリ“をしている」
◆「EUはエネルギー的“ハラキリ”をしている」――ドミトリエフ発言、3月13日付RIAノーボスチ・Lenta報道(要点抜粋)
今回の米国の制裁緩和措置を受け、キリル・ドミトリエフ ロシア直接投資基金総裁は、「ロシアのエネルギーなしにエネルギー危機からの脱却は不可能」であり、「米国は事実上、ロシアなしでは世界市場の安定を維持できないことを認めた形だ」と自身のテレグラム・チャンネルに書き込んだ。
同氏は、今回の制裁緩和でロシアの予算収入は100億ドルを超える可能性があるとの見方も示した。
さらに、EUが今回の緩和措置に反対していることに対し、「EUはエネルギー的“ハラキリ”を続けようとして」いるとし、「EUは戦略的エネルギー政策上の誤りを認め、その責任を償う方がよい」とXに投稿した。
ユシュコフ分析:制裁緩和は「前例」となり、ロシア孤立化戦略は失敗した
◆「エネルギー資源をめぐる競争:米欧のガソリンスタンドでのパニックは正当か」――イーゴリ・ユシュコフ 金融大学エキスパート、3月13日付TASS(要点抜粋)
ユシュコフは、現在起きているのは燃料不足によるパニックではなく、エネルギー資源をめぐる国際的な競争の激化だと論じている。そのうえで、次の点を指摘している。
現在のエネルギー危機で最も恩恵を受けるのは、ロシアを含む産油国だ。特にロシアにとっては、エネルギー資源の価格上昇にとどまらず、ロシア産原油のディスカウント幅が縮小することも大きな意味を持つ。(注:これまでロシアの原油は、欧米の厳しい制裁の影響で、中国やインドに大幅な割引価格で販売されていた。)
また、今回のエネルギー危機により、ロシアが世界の石油・ガス市場において重要なプレーヤーであるという認識が改めて世界で深まった。
さらに重要なのは、今回のような対露制裁の凍結は、今後の「前例」となり得ることだ。(注:今後も同様の制裁緩和が行われ得るとの見方を示したもの。)
ロシア産エネルギー資源をめぐる競争はさらに激しくなっている。タイ、日本、韓国などがロシア産原油の購入に関心を示しており、これは世界的な競争の激化と、ロシアを孤立させようとする試みが失敗したことを示すものだ。
今週の外交・安保カレンダー(3月17日〜22日)
続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。
3月17日 火曜日
シンガポール首相訪日(3日間)
フィンランド大統領、2日間の訪英終了
3月18日 水曜日
国連事務総長ブラッセル訪問、欧州委員会委員長と会談
ナイジェリア大統領訪英(2日間)
3月19日 木曜日
欧州評議会首脳会議(ブラッセル)
日本首相訪米、米大統領と会談
3月21日 土曜日
ラ米カリブ共同体首脳会議(コロンビア)
3月22日 日曜日
スロベニアで議会選挙
仏で地方選挙の決選投票
伊で司法改革に関する国民投票(2日間)
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
■ 歴史を深く知るためのFAQ:ホルムズ海峡と世界の石油事情
Q: ホルムズ海峡は具体的にどこに位置し、なぜ世界の石油輸送において「戦略的な要衝」と呼ばれるのですか?
A: ホルムズ海峡は、中東のペルシャ湾とオマーン湾(アラビア海)を結ぶ非常に狭い水路です。この海峡を通って、サウジアラビア、イラン、UAE(アラブ首長国連邦)、イラク、クウェートなどの主要産油国から、世界の石油(特にアジア向け)の約3分の1が海上輸送されています。そのため、この海峡が封鎖されると世界のエネルギー供給が滞り、原油価格が急騰するため、「戦略的なチョークポイント(航路の要所)」として極めて重要視されています。
Q: イラン危機とは、どのような経緯で発生し、国際情勢にどのような影響を及ぼしているのですか?
A: 記事が書かれた時点での「イラン危機」は、イランと米国・イスラエルとの間で高まった緊張状態を指します。特に、イランの核開発、地域への影響力拡大、そしてホルムズ海峡周辺での軍事的な衝突の懸念などが背景にあります。この危機は、原油価格を高騰させ、世界経済に影響を及ぼすだけでなく、米国の同盟国(日本を含む)に対する安全保障協力の要請を引き起こすなど、国際政治に複合的な問題をもたらしています。
Q: 世界の主要な石油産出国はどこで、原油価格はどのように決定されているのですか?
A: 現在の主要な石油産出国は、米国、サウジアラビア、ロシアなどです。原油価格は、OPEC(石油輸出国機構)と非加盟国(OPECプラス)による生産調整、地政学的な緊張(中東情勢やロシアへの制裁など)、そして世界の経済状況(需要と供給のバランス)といった複数の要因が複雑に絡み合って決定されます。特に、OPECプラスの動向と、中東の安定性が大きな影響力を持ちます。
Q: 対露石油制裁は、元々どのような目的で、誰によって課されたものですか?
A: この制裁は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、主に米国やEU、日本などのG7諸国が課したものです。目的は、ロシアの主要な収入源である石油・ガス輸出を制限することで、ロシアの戦費調達能力を奪い、経済的に孤立させることにあります。具体的には、ロシア産原油の海上輸送に対する保険や金融サービスを制限する「価格上限(プライスキャップ)」の導入などが中心的な措置です。
■ シリーズ・アーカイブの紹介
本連載は、国際情勢を独自の視点で鋭く分析する宮家邦彦氏による「外交・安保カレンダー」シリーズのアーカイブです。過去の記事も併せて読むことで、複雑に絡み合う世界情勢の推移を深く理解することができます。
▶︎ [連載「外交・安保カレンダー」バックナンバーはこちら]
写真)ホルムズ海峡の衛星図で、ペルシャ湾とオマーン湾間の世界の航路と海上交通を表す白いグラフィックラインが示されています。戦略的石油輸送コンセプトの写真素材
出典)Alones Creative/Getty Images
執筆:宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2026#11
2026年3月16-22日
■ 本稿のポイント
・AIが侵食した「牙城」: 筆者になりすまし原稿冒頭を執筆したAI。その完成度が突きつける人間の役割と存在意義への根源的な問い。
・「同盟の試金石」の崩壊: 米国の戦略・大義名分なきホルムズ海峡協力要請に、欧州は拒否。日本は安全航行に深く依存しながらも、進退窮まる外交的苦境。
・イラン危機が生んだ「禁断の前例」: 原油高騰を背景とした米国の対露石油制裁一時緩和。ロシア財政を潤し、孤立化失敗を世界に示した勝利宣言。
・EUの「エネルギー的ハラキリ」: ロシア側からの挑発的な揶揄。自国の誤りを認めず、戦略なき対抗措置を続ける欧州への痛烈な批判。
筆者の「牙城」をAIが侵食する衝撃が走る一方で、トランプ政権の戦略不在は、同盟の試金石たるホルムズ海峡問題で日本を進退窮まる状況に追い込んだ。さらにイラン危機がもたらした原油高騰は、米国の対露石油制裁を一時緩和させる「禁断の前例」を生み、ロシアの重要性を再認識させた。本稿は、AIの衝撃と、外交・安全保障上の難題が複合的に絡み合う緊迫の一週間を、宮家邦彦氏が独自の視点で鋭く分析した、示唆に富む外交論考です。(Japan In-depth編集部)
AIが「宮家スタイル」で書いた3段落――その不気味な完成度
「ホルムズ海峡」という言葉を、先週末からこれほど何度も聞くことになるとは思っていなかった。対イラン軍事作戦を理由にトランプ大統領が習近平への訪中延期を求めた、と報じられた時、正直「ここまで来たか」と思った次第だ。
トランプ政権はホルムズ海峡の確保・再開通に向け、同盟国・友好国に支援を求めた。だが欧州は一斉に断った。フォーリンポリシー誌が「Trump Seeks Help to Reopen Hormuz. Europe Says No.」と見事な一行で要約したが、欧州にとってはホルムズを通過するエネルギーの輸送先はアジアであって自分たちではない、という割り切りがあるのだろう。
そして欧州が断った後、トランプ氏の矛先は中国とアジアに向いた。日経新聞によれば、トランプ氏自身が「ホルムズ海峡が同盟の試金石」と述べ、「日本の反応を知りたい」とまで言ったという。うーん、これはなかなかの言い方だ。では、この状況をどう読むか。筆者の仮説はおおむね以下の通りだ・・・・・。
さてさて、ここまで読んできた読者の皆様は、どこか違和感を持たなかっただろうか。「別に?!」と言われたら身も蓋もないのだが、実は上記3パラグラフ、全てAIが作成したものだ。過去の外交安保カレンダーを全てAIに読み込ませ、面白半分に筆者のスタイルで「今週の原稿を書いて」と命令したら、出来上がったのがこれである。
正直、凄いというより、気味が悪い、とすら思った。これでは筆者はいずれ「不要」となるだろう。機械がここまで書けるとなると、人間はもっともっと創造的になる必要があるのだが、筆者にはそこまでの自信がない。自信はないのだが、今後とも一字一句心を込めて書いていくしかないと腹を決めた。もうAIを使うことは当分ないだろう。
戦略も大義名分もないホルムズ協力要請――日本はなぜ進退窮まるのか
その上で一言言わせてもらおう。今週は高市訪米という大イベントがあるが、本来はペルシャ湾の安全航行に深く依存する日本が、ホルムズ海峡の自由航行を維持するための国際的努力に協力するのは当然だ。ところが今回はこれと真逆の事態が進行している。
そもそも今回の戦争はイランの暴発ではなく、イスラエル主導で始まったもの。米大統領には戦略も大義名分も同盟国への根回しもない。更に、ホルムズ海峡安全航行に向けた国際協力システム構築を言い出したのは戦争長期化が懸念されてからのこと。こんな状況の下では同盟国も「協力したくてもできない」のではないか。詳細は今週の産経新聞WorldWatchコラムに書くつもりなので、ご一読願いたい。
ロシア・メディアの視点:対露石油制裁の緩和が示す「前例」と孤立化の失敗
さて、次は吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、今週は同研究員がまとめた「米国によるロシア産石油制裁の緩和――ロシア・メディアから」を以下の通りご紹介する。ロシア・メディアが「イラン戦争により石油市場が売り手市場になった」ことを手放しで歓迎しているかのようで、実に興味深い。
(本文)
トランプ政権は12日、イラン危機に関連して原油価格が高止まりするなか、対露制裁の緩和に踏み切った。海上輸送中のロシア産原油・石油製品を対象に、1か月の販売を許可する。ウクライナやEU、欧州各国などは「制裁を維持すべき」として批判している。
ロシアでは、今回の米国による制裁緩和措置は、一時的な措置だとして慎重に見る専門家も存在するが、やはりクレムリン周辺からは、直接的に国家財政を潤すとして歓迎する声とともに、世界の原油市場におけるロシアの重要性を改めて示すものだとして評価する声が多い。
ドミトリエフ発言:「EUはエネルギー的“ハラキリ“をしている」
◆「EUはエネルギー的“ハラキリ”をしている」――ドミトリエフ発言、3月13日付RIAノーボスチ・Lenta報道(要点抜粋)
今回の米国の制裁緩和措置を受け、キリル・ドミトリエフ ロシア直接投資基金総裁は、「ロシアのエネルギーなしにエネルギー危機からの脱却は不可能」であり、「米国は事実上、ロシアなしでは世界市場の安定を維持できないことを認めた形だ」と自身のテレグラム・チャンネルに書き込んだ。
同氏は、今回の制裁緩和でロシアの予算収入は100億ドルを超える可能性があるとの見方も示した。
さらに、EUが今回の緩和措置に反対していることに対し、「EUはエネルギー的“ハラキリ”を続けようとして」いるとし、「EUは戦略的エネルギー政策上の誤りを認め、その責任を償う方がよい」とXに投稿した。
ユシュコフ分析:制裁緩和は「前例」となり、ロシア孤立化戦略は失敗した
◆「エネルギー資源をめぐる競争:米欧のガソリンスタンドでのパニックは正当か」――イーゴリ・ユシュコフ 金融大学エキスパート、3月13日付TASS(要点抜粋)
ユシュコフは、現在起きているのは燃料不足によるパニックではなく、エネルギー資源をめぐる国際的な競争の激化だと論じている。そのうえで、次の点を指摘している。
現在のエネルギー危機で最も恩恵を受けるのは、ロシアを含む産油国だ。特にロシアにとっては、エネルギー資源の価格上昇にとどまらず、ロシア産原油のディスカウント幅が縮小することも大きな意味を持つ。(注:これまでロシアの原油は、欧米の厳しい制裁の影響で、中国やインドに大幅な割引価格で販売されていた。)
また、今回のエネルギー危機により、ロシアが世界の石油・ガス市場において重要なプレーヤーであるという認識が改めて世界で深まった。
さらに重要なのは、今回のような対露制裁の凍結は、今後の「前例」となり得ることだ。(注:今後も同様の制裁緩和が行われ得るとの見方を示したもの。)
ロシア産エネルギー資源をめぐる競争はさらに激しくなっている。タイ、日本、韓国などがロシア産原油の購入に関心を示しており、これは世界的な競争の激化と、ロシアを孤立させようとする試みが失敗したことを示すものだ。
今週の外交・安保カレンダー(3月17日〜22日)
続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。
3月17日 火曜日
シンガポール首相訪日(3日間)
フィンランド大統領、2日間の訪英終了
3月18日 水曜日
国連事務総長ブラッセル訪問、欧州委員会委員長と会談
ナイジェリア大統領訪英(2日間)
3月19日 木曜日
欧州評議会首脳会議(ブラッセル)
日本首相訪米、米大統領と会談
3月21日 土曜日
ラ米カリブ共同体首脳会議(コロンビア)
3月22日 日曜日
スロベニアで議会選挙
仏で地方選挙の決選投票
伊で司法改革に関する国民投票(2日間)
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
■ 歴史を深く知るためのFAQ:ホルムズ海峡と世界の石油事情
Q: ホルムズ海峡は具体的にどこに位置し、なぜ世界の石油輸送において「戦略的な要衝」と呼ばれるのですか?
A: ホルムズ海峡は、中東のペルシャ湾とオマーン湾(アラビア海)を結ぶ非常に狭い水路です。この海峡を通って、サウジアラビア、イラン、UAE(アラブ首長国連邦)、イラク、クウェートなどの主要産油国から、世界の石油(特にアジア向け)の約3分の1が海上輸送されています。そのため、この海峡が封鎖されると世界のエネルギー供給が滞り、原油価格が急騰するため、「戦略的なチョークポイント(航路の要所)」として極めて重要視されています。
Q: イラン危機とは、どのような経緯で発生し、国際情勢にどのような影響を及ぼしているのですか?
A: 記事が書かれた時点での「イラン危機」は、イランと米国・イスラエルとの間で高まった緊張状態を指します。特に、イランの核開発、地域への影響力拡大、そしてホルムズ海峡周辺での軍事的な衝突の懸念などが背景にあります。この危機は、原油価格を高騰させ、世界経済に影響を及ぼすだけでなく、米国の同盟国(日本を含む)に対する安全保障協力の要請を引き起こすなど、国際政治に複合的な問題をもたらしています。
Q: 世界の主要な石油産出国はどこで、原油価格はどのように決定されているのですか?
A: 現在の主要な石油産出国は、米国、サウジアラビア、ロシアなどです。原油価格は、OPEC(石油輸出国機構)と非加盟国(OPECプラス)による生産調整、地政学的な緊張(中東情勢やロシアへの制裁など)、そして世界の経済状況(需要と供給のバランス)といった複数の要因が複雑に絡み合って決定されます。特に、OPECプラスの動向と、中東の安定性が大きな影響力を持ちます。
Q: 対露石油制裁は、元々どのような目的で、誰によって課されたものですか?
A: この制裁は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、主に米国やEU、日本などのG7諸国が課したものです。目的は、ロシアの主要な収入源である石油・ガス輸出を制限することで、ロシアの戦費調達能力を奪い、経済的に孤立させることにあります。具体的には、ロシア産原油の海上輸送に対する保険や金融サービスを制限する「価格上限(プライスキャップ)」の導入などが中心的な措置です。
■ シリーズ・アーカイブの紹介
本連載は、国際情勢を独自の視点で鋭く分析する宮家邦彦氏による「外交・安保カレンダー」シリーズのアーカイブです。過去の記事も併せて読むことで、複雑に絡み合う世界情勢の推移を深く理解することができます。
▶︎ [連載「外交・安保カレンダー」バックナンバーはこちら]
写真)ホルムズ海峡の衛星図で、ペルシャ湾とオマーン湾間の世界の航路と海上交通を表す白いグラフィックラインが示されています。戦略的石油輸送コンセプトの写真素材
出典)Alones Creative/Getty Images




























