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.政治  投稿日:2026/4/29

食料品消費税「1%」は本末転倒、玉木代表が警鐘 「丁寧な議論を」


安倍宏行(Japan In-depth編集長)

【この記事でわかること】

・玉木代表は食料品消費税0%が困難で1%とする議論を「本末転倒」と批判した。

・「飲食料品だけ1%」と「軽減税率8%対象を全て1%」では実現スピードが異なる。

・玉木代表は「議論が荒っぽい。もっと丁寧にちゃんと議論した方がいい」と苦言を呈した。

 

4月28日の国民民主党・玉木雄一郎代表の定例記者会見で、食料品消費税0%案の代替として浮上している「1%案」についての質問に対し、玉木代表は「本末転倒という言葉が1番ふさわしい」と一刀両断した。

 

なぜ「0%から1%」への議論変更は本末転倒なのか?

 玉木代表はそもそも論として、税制上の「0%」には2種類あることを指摘した。一つは医療費のような「非課税取引」、もう一つは「課税取引だが税率0%(ゼロ税率)」である。両者は税負担としては同じだが、システムや事業者の対応では全く別物となる。

 高市総理は2026年2月20日の施政方針演説で、「軽減税率が適用されている飲食料品については、特例公債に頼ることなく、2年間に限り、消費税をゼロ税率とすることにつき、スケジュールや財源の在り方など、その実現に向けた諸課題に関する検討を加速します」と述べた(第221回国会における高市内閣総理大臣施政方針演説/首相官邸)。これは課税取引としての「ゼロ税率」を指す。

 玉木代表は、レジ改修などシステム上の問題が顕在化した今、「0%」の代わりに「1%ならできます」とする議論が出てきた経緯について、「選挙であれだけ0%って訴えといて、それで1%にしますというのはないだろう。だったら最初から1%と言うべきだ」と批判した。

 

「飲食料品だけ1%」と「軽減税率全て1%」はどう違うのか?

 現在の消費税は標準税率10%と軽減税率8%の2つで、軽減税率の対象には飲食料品だけでなく新聞も含まれる。

 「1%案」が早期実施可能とされる理由は、レジ・システムが既に8%という軽減税率に対応しているためだが、玉木代表によれば「軽減税率8%対象を全て1%にする」のなら確かに早くできる。しかしそれは新聞も含めて一律1%にするということを意味する。一方、現在議論の中心となっているのは「飲食料品だけ1%」案である。

 玉木代表は「便乗して、じゃ早くするために食料品だけじゃなくて新聞も1%にするなんて聞いてないよって話でしょ」と指摘。早期実施を優先して新聞まで1%とすれば国民の理解は得られず、かといって「飲食料品だけ1%」とすれば結局システム改修に時間がかかる、という構造的なジレンマについて言及した。そのうえで、「1%は早くできるから、と出してきていますけど、そこは少し冷静な議論が必要」と慎重な対応を求めた。

 

レジ改修に必要な期間はどれくらいか?

 レジ・システム改修に要する期間について玉木代表は「半年でできます、数週間でできます、1年でできます、いや数日でできます。これ、全部正しい」と述べ、業種・業態・事業規模によって異なると説明した。

 スマートフォン・iPadベースの簡易レジは数日で対応可能だが、大企業のオンプレミスで構築された会計・税制システム連動型では、機関システムや会計納税システムをセットで改修する必要があり、約1年を要する。「スマレジさんも実は現場のヒアリングで言っていた」と紹介。「1年でできる」と「数日でできる」の両論が並び立つ理由はここにある。

 高市総理は2026年2月26日の第1回社会保障国民会議で、「将来のシステム変更に備えて、柔軟なシステム、スマレジなども柔軟にしておくというのも一つではないか」と発言している(令和8年2月26日 社会保障国民会議/首相官邸)。

 

「丁寧な議論」を求める玉木代表の真意は?

 玉木代表は今回の議論の進め方を「ちょっと議論が荒っぽすぎて、もっと丁寧にちゃんと議論した方がいい」と苦言を呈した。

 そのうえで、消費税減税を実施する場合の代替案として、「100歩譲って、本当に消費税の減税をどうしてもすることであれば、5兆円の減税財源を2年間10兆円見つけることでだったら、8%一律減税でインボイスなくした方がいい」と述べた。これは消費税減税自体を推奨する発言ではなく、あくまで「どうしてもやるなら」という条件付きでの代替案である。

また、社会保障国民会議で議論されている給付付き税額控除についても、玉木代表は議論の現状に違和感を示した。デジタル庁から、給付付き税額控除の実施には簡素な方式でも2〜3年、所得・資産まで把握する形であれば4年以上を要するとの説明があったとし、「秋の臨時国会で通して、来年度4月からというのが最短だが、それすらできるのか」とその実現性に疑問を呈した。

 国民民主党が選挙時から訴えてきたのは、住民税減税と社会保険料還付を前倒しで実施する案である。具体的には、住民税控除額を178万円まで引き上げ最大5万9000円の減税効果を生み、住民税非課税世帯にはほぼ同額を給付する設計だ。これに加え、当面のインフレ対応として5万円程度の迅速な給付措置を組み合わせるとしている。

 

国民会議と総理の温度差をどう見るか?

 玉木代表は、社会保障国民会議の議論の現状について、「総理がまさに作られた国民会議での議論の温度と、総理がやりたいっていう温度差が、会議を開けば開くほど開いてきている」と指摘した。

 実務者協議の中で「食料品消費税0%に賛成」と明言した経済学者は2名のみだったと玉木代表は明かした。「あとはそれなりに、まあやるんなら仕方がないけど、これはちゃんと考えてくださいねみたいなのが多くて、業界の人から聞いてもやっぱり食料品だけゼロというのはちょっとどうかなという声がやっぱりある」とし、「これは別に財務省の陰謀とかじゃなくて、現場からそういう声が出てることについては真摯に耳を傾けた方がいい」と訴えた。

 玉木代表は最終的に、「そもそも物価高騰対策でやろうとしていて、イラン情勢の緊迫化でその物価高騰に対する再燃の懸念が高まっている中で、今目の前にある困っている個人や企業をどう助けるのか、スピーディに、そのためのベストな政策手段は何なのかということに、もう1回立ち帰って議論していくことが必要」と述べ、政策決定の原点回帰を求めた。

 

【よくある質問(FAQ)】

Q1. 軽減税率とは何か?

A. 2019年10月の消費税率引き上げに伴い導入された制度で、特定の品目について標準税率10%より低い8%の税率を適用する仕組み。対象は飲食料品(外食・酒類を除く)と週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)。

Q2. ゼロ税率と非課税取引はどう違うか?

A. ゼロ税率は「課税取引だが税率0%」、非課税取引は「そもそも消費税の課税対象としない」取引である。消費者の負担は同じだが、事業者にとっては仕入税額控除の扱いやシステム上の処理が異なる。医療費や住宅家賃などは非課税取引、輸出取引はゼロ税率の代表例である。

Q3. 給付付き税額控除とは何か?

A. 所得税額から一定額を控除し、控除しきれない場合は差額を給付する仕組み。低所得者ほど恩恵を受けやすい設計が可能となる。高市内閣は2026年1月、社会保障と税の一体改革の一環として超党派の社会保障国民会議を設置し、制度設計の議論を進めている。実施には所得情報のデジタル把握など複数年の準備が必要。

Q4. 社会保障国民会議とは何か?

A. 高市総理が2026年2月26日に第1回会合を開催した、超党派かつ有識者を交えた会議体。給付付き税額控除の制度設計を含む税と社会保障の一体改革を議論する。並行して、制度導入までのつなぎ措置として飲食料品の消費税ゼロ税率(2年間限定)の検討も進められている。

Q5. インボイス制度とは何か?

A. 2023年10月から導入された適格請求書等保存方式。事業者が消費税の仕入税額控除を受けるためには、登録事業者が発行する「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となる。免税事業者からの仕入れは原則として控除対象外となるため、小規模事業者の負担増として議論を呼んでいる。

 

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■ 1次情報

第221回国会における高市内閣総理大臣施政方針演説(令和8年2月20日)— 首相官邸

第1回社会保障国民会議(令和8年2月26日)— 首相官邸

高市内閣総理大臣記者会見(令和8年2月18日)— 首相官邸

国民民主党公式サイト

 

写真)国民民主党玉木雄一郎代表 2026年4月28日 定例会見にて

ⒸJapan In-depth編集部




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