玉木代表「放置すれば1割増税」インフレ増税への対応を
安倍宏行(Japan In-depth編集長)
本稿のポイント
・所得税の「103万円の壁」を所得制限なく178万円へ引き上げ、物価高に伴う約2兆円規模の「ステルス増税」を解消する。
・住民税の非課税枠を178万円に拡大することで、1世帯あたり実質5万9,000円の減税を実現する。
・米国の事例などを参考に「インフレ連動制」を導入し、税率の区切り(ブラケット)を物価に合わせて自動調整する意欲を示す。
・低所得層支援に「社会保険料還付」を提案し、マイナポータルやPayPay等のデジタル基盤を活用して迅速に給付する。
物価上昇に伴い、実質的な増税が生じる「ブラケットクリープ(インフレ増税)」。この「隠れ増税」に対し、現役世代や中所得層への支援はどうあるべきか。Japan In-depth編集長安倍宏行が、5月12日、国民民主党の定例会見で玉木雄一郎代表に、中所得層への対策について聞いた。これに対し、玉木代表は「年収の壁」引き上げで対応するというこれまでの姿勢を維持する考えを示したうえで、「ブラケット(税率の区切り)自体のインフレ連動(物価スライド)も含めて考えていきたい」と意欲を示した。
2兆円規模の「ステルス増税」をどう解消するのか?
安倍編集長は、現役世代を苦しめている「隠れ増税(ブラケットクリープ)」への対策について、インフレが進行する中、所得税の仕組みが物価連動になっていないため、実質的な増税が生じている現状をどう是正すべきか聞いた。
これに対し玉木代表は、現行の「年収の壁」引き上げ(年収665万円以下を対象に178万円まで壁を引き上げたもの)では対応しきれておらず、約2兆円規模の「ステルス増税(インフレ増税)」が生じていると指摘。「103万円の壁」を所得制限なく178万円に引き上げることでこの負担を緩和したいとの考えを強調した。
住民税5.9万円減税のインパクト
加えて、玉木代表は、具体的な現役世代・中所得層への対策として「住民税の6万円減税」を掲げた。これは基礎控除と給与所得控除を合わせた非課税枠を、現在の119万円から178万円へと59万円引き上げる提案だ。
「住民税率は10%であるため、実質的に5万9,000円の減税となる」と玉木代表は説明する。現在、一部で議論されている「消費税の食料品分ゼロ」が1世帯あたり年間約6万円の恩恵と言われていることを引き合いに出し、「我々の提案する住民税減税の方が、より早く、円滑に、多くの人に恩恵を届けることができる」と、その実効性とスピード感をアピールした。
玉木代表は「放っておくと勝手に増税になってしまう分を調整し、増税にならないように努力しているのが国民民主党だ」と述べ、減税ポピュリズムとの批判に反論した。
税率ブラケットの「インフレ連動制」導入へ
高市早苗氏がインフレ連動に理解を示したことを受け、今後の制度設計について問われると、玉木代表は「アメリカ等の事例も踏まえ、ブラケット(税率の区切り)自体のインフレ連動(物価スライド)も含めて考えていきたい」と意欲を示した。
玉木代表は、このままの仕組みを放置すれば「今後10年間で皆さんの税負担は知らないうちに1割増えることになる」と警鐘を鳴らす。インフレ下における税制の不備を「隠れ増税」として正面から問題提起し続けることで、国民の可処分所得を守り抜く姿勢を改めて鮮明にした。
社会保険料還付とマイナンバー活用の迅速な給付
税金を払っていない、あるいは払えない低所得層へは減税では支援が出来ないため、玉木代表は「給付付き税額控除」の導入を視野に与党と議論する姿勢を示した。特に同党が独自に提案しているのが、主に勤労世帯・現役世代を対象とした「社会保険料還付」という形での給付だ。
給付の手法についても具体的な案を示した。地方自治体の事務負担を軽減し、スピード感を確保するため、マイナポータルを活用した「マイナポイント」や、PayPayなどのキャッシュレス決済ポイント、自治体独自のアプリ等を通じて配布する仕組みを提言。「『給付を早く受けるためにマイナンバーを登録してください』と徹底する良い機会だ」と述べ、デジタル基盤を活用した迅速な分配の重要性を説いた。
よくある質問
Q1:「ブラケット(税率の区切り)」とは何のことか?
A: 日本の所得税は、収入が増えるほど税率が上がる仕組み(累進課税)になっており、その税率が変わる境目を「ブラケット」と呼ぶ。
Q2:物価が上がると、なぜ「増税」になってしまうのか?
A: 物価高に合わせて給料が上がっても、税率の境目(ブラケット)が昔のまま固定されていると、「給料は増えたが、高い税率が適用される枠」に勝手に入ってしまい、手元に残るお金が実質的に減ってしまう。これを「ブラケットクリープ」と呼ぶ。
Q3:住民税の「5万9,000円減税」は誰が対象か?
A: 主に現役世代や中所得層が対象。非課税枠を119万円から178万円に広げることで、住民税率10%分にあたる約6万円弱の負担を減らす。




























