無料会員募集中
.政治  投稿日:2026/7/12

「比例のみ45削減」はなぜか 金村龍那議員に聞く、二大政党制への論理


執筆:安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)

 

【本稿のポイント】

・自民・維新が提出した定数削減法案は、選挙制度協議会で1年以内に結論が出なければ比例代表のみで45議席を削減する内容。7月7日の党首会談で今国会成立は見送られ、継続審議となった。

・金村龍那議員は「比例のみ」の論拠を二大政党制への誘導だと説明し、議院内閣制と二院制の日本で多党化が進めば、決める政治が機能しないと語った。

・議員数の国際比較についても「これだけ衆参が同等の権限を持つ二院制はない。衆参合算で見るべきだ」と独自の反論を展開した。

 

比例定数を45削減すれば、比例で議席を得る少数政党ほど打撃は大きい。批判を浴びると分かっていて、なぜ日本維新の会は「比例のみ」に踏み込んだのか。Japan In-depthチャンネルで、連立政権の実務を担う金村龍那衆議院議員に聞いた。

▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「連立政権の”通信簿”」(2026年7月8日配信)

 

◆なぜ「比例のみ45削減」なのか?

金村氏は、当初の「3対2」案から比例のみへ転換した理由を、二大政党制への誘導だと説明した。

 

経緯はこうだ。連立合意で定数1割削減を掲げた維新に対し、野党側からは「小選挙区と比例の3対2の割合は維持すべきだ」という声が多く上がった。その声を受け、維新は小選挙区25・比例20という削減幅で法案化する。だが2月の衆院選で議席構造が大きく変わり、再提出の局面で方針が変わった。

 

「どういう選挙制度がこれからの日本に必要なのか」。金村氏はそう述べ、比例45削減に舵を切った理由を、民意の集約に足場を置いた政党選挙をすべきだという一点に集約させた。自民・維新が6月24日に共同提出した法案は、衆院の選挙制度協議会で1年以内に結論が得られなければ、比例のみで45議席を削減する内容である。

 

◆多党化は、なぜ問題なのか?

金村氏は、議院内閣制で多党化が進めば「決める政治」が機能しないと語った。

 

比例の割合が高い選挙制度は小政党を生き残らせ、多党化を促す。「多党化した先に、政策実現の可能性が本当にあるのか」ここが金村氏の核心だ。中小政党がいくら増えても実現可能性は高まらない、と言う。

 

さらに踏み込んだのが、二院制との関係だった。小選挙区比例代表並立制は民意の集約と民意の反映を両立する制度であり、一院制であれば素晴らしい制度だ、と金村氏は言う。だが日本は二院制であり、参議院がすでに民意の反映を担っている。にもかかわらず衆議院でも反映を強く担保すれば、多党化の流れはより強く出てしまうという論理である。

 

番組では視聴者から「小選挙区と比例、両方あってこそ機能するのではないか」という鋭い質問も飛んだ。金村氏はこれを受け止めたうえで、この二院制論で応じている。

 

◆少数政党に不利ではないのか?

「与党にとってのゲリマンダーではないか」という視聴者の問いに、金村氏は正面から答えた。

 

比例定数を削れば、比例で議席を得ている政党ほど打撃は大きい。金村氏もそれは認める。そのうえで、自分たちさえ生き残ればいいと掲げているわけではない、と述べ、包括的な政党に集約され、大きな塊として与党と野党が選挙で対峙するほうが健全な成長だと主張した。

 

中小政党から「自分たちを潰す気か」と受け止められる気持ちもよくわかる。そう率直に認めながらも、同じような立ち位置の政党が別々に1票を取り合う状況こそ国民にとって不幸だ、と反論する。この主張に説得力を感じるかどうかは、視聴者自身の判断に委ねたい。

 

◆日本の議員数は、本当に多いのか?

金村氏は「これだけ衆参が同等の権限を持つ二院制の国はない。衆参合算で見るべきだ」と反論した。

 

「G7と比べても日本の議員数は多くない。むしろ少ないのでは」という筆者の指摘に対し、金村氏は独自の論法を展開した。二院制を採用する国で、上院と下院がこれほど同等の権限を持つ国家はほぼない、というのだ。

 

根拠として挙げたのが、参議院の強さである。憲法改正の要件を満たさない限り、参院で否決されたものを衆院で再可決することはできない。それほど権限が拮抗しているのだから、議員数も衆参を合算して人口割りで見るべきであり、そう見ればG7と大差ないという主張だ。

 

もっとも、「45」という数字自体の論拠には、なお議論の余地が残る。金村氏は人口減少の予測値を根拠に「向こう30年を見通せば、そこまで減っているわけではない」と述べた。

 

◆この攻防は、何を残したのか?

法案は今国会での成立を見送り、秋の臨時国会での継続審議となった。

番組収録の前日にあたる7月7日、高市早苗首相と維新の吉村洋文代表が会談し、定数削減法案の今国会成立見送りと、副首都法案の今国会成立を確認した。金村氏が番組で語った「まず副首都法案を成立させる」という優先順位が、そのまま現実になった形だ。

 

一方で、選挙制度協議会は9月の国勢調査の結果公表までに何らかの結論を出すことになっている。金村氏は、この協議会に携わる人たちは閉会中も忙しい、と語った。この夏の議論こそが、秋の再挑戦を左右する。

 

選挙制度は、政治のかたちそのものを決める。金村龍那氏の論理を、ぜひ本編で確かめてほしい。

▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「連立政権の”通信簿”」(2026年7月8日配信)

 

◆番組で語られたそのほかの論点

・03:11~ 議員定数削減・選挙制度改革の現状

・06:55~ 会期延長と今後のスケジュール

・08:51~ 与党内の合意形成と国会運営について

・10:04~ 皇位継承を巡る議論と論点

・16:17~ 皇室典範改正と制度の意義

・37:16~ 副首都法案の具体的内容と期待される効果

・40:32~ 大阪都構想の経緯と住民投票の意義

・46:06~ 食料品減税と政治のスピード感

・51:26~ 維新の存在価値と今後の改革方針

 

【よくある質問(FAQ)】

Q1.今回の定数削減法案とは、どのような内容か。

A1.自民党と日本維新の会が2026年6月24日に共同提出した議員立法。衆議院の選挙制度協議会で法施行から1年以内に結論が得られなかった場合、比例代表のみで定数を45削減する内容。7月7日の党首会談を経て今国会での成立は見送られ、秋の臨時国会での継続審議となった。

 

Q2.なぜ「比例のみ」の削減に野党が反発するのか。

A2.衆院は小選挙区と比例代表が並立する制度で、一般に小選挙区は大規模政党が有利、比例は少数政党が議席を得やすいとされる。比例のみを削減すれば、比例で議席を得ている少数政党ほど打撃が大きくなるためである。

 

Q3.選挙制度協議会とは何か。

A3.衆議院に設置された、各党が参加する選挙制度に関する協議機関。今回の法案では、この協議会で1年以内に結論が得られるかどうかが、比例45削減の発動条件となっている。9月の国勢調査の結果公表を一つの節目として議論が進む見通し。

 

関連リンク

日本維新の会 公式サイト

衆議院 議案情報

Japan In-depthチャンネル(YouTube)

 

トップ写真:金村龍那衆議院議員 ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."