ホルムズ危機に迂回路あり── 山田吉彦議員に聞く、原油調達の現在地
安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)
【本稿のポイント】
・日本の原油輸入は94%を中東に依存し、うち93%がホルムズ海峡を経由する(2025年・経済産業省)
・迂回路としてサウジ・ヤンブー港とUAE・フジャイラ港が機能しており、山田吉彦議員は「8割以上、もう9割近く」を運び込めると説明した
・米国産、中南米産、さらにロシア・サハリン2からの原油まで、調達先の多角化が進んでいる
「このルートは、両方とも今使えています」。ホルムズ海峡の緊張が続くなか、国民民主党の山田吉彦参議院議員はそう言い切った。何を根拠にそう語るのか。Japan In-depthチャンネルで、海洋政策・海洋安全保障の専門家に聞いた。
▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「日本の急所は“海峡”だ」(2026年7月6日配信)
日本の原油は、どれだけ中東に依存しているのか?
2025年時点で94%を中東に依存し、うち93%がホルムズ海峡を経由している(経済産業省)。
番組冒頭、安倍編集長が示したのは「原油9割超が止まる日」というスライドだった。石油備蓄は248日分(2026年1月末)。経済産業省の資料によれば、国家備蓄146日・民間備蓄96日・産油国共同備蓄6日という内訳で積み上げられている。今年3月には、IEA(国際エネルギー機関)が史上最大規模となる4億バレル超の協調放出に踏み切り、政府もガソリン価格を170円程度に抑える補助を続けてきた。オイルショックの教訓から積み上げてきた備えではあるが、それでも供給の大半を一本の海峡に預けている不安は消えない。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部
ホルムズが封鎖されても、原油は届くのか?
山田氏は、サウジ・ヤンブー港とUAE・フジャイラ港という2つの迂回路が「両方とも今使えています」と語る。
ホルムズを通らないルートとして、山田氏が挙げたのがこの2港だ。「8割以上、もう9割近くですね」と、日本への運び込みが可能になっていると説明する。シンガポール周辺で他国に持ち出した原油を積み替え、日本へ運ぶ手法も使われているという。紅海側のリスクだったイエメンの武装勢力についても、「フランス海軍が空母まで入れて睨みを利かせている」と、現場の動きを具体的に語った。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部
もっとも、値段は高い。売れなかった時期の損を取り返そうとする産油国が、当面は高値で取引せざるを得ないという。イランが持ち出した「60日に限り自由通航を認める」という通行料構想も、市場の不安をあおる一因だと山田氏は指摘する。「安定するまでには、まだ時間がかかると思います」。紅海側のパイプラインが攻撃を受けた場合の心配についても質問が飛んだが、山田氏は「一度攻撃を受けてもリカバリーは早い」としたうえで、「サウジアラビアを敵に回すのかということに関して、やはりイランは抑えてます」と、イランがこれ以上の攻撃には踏み込みにくい事情があると分析した。
中東以外からの調達は、増えていくのか?
山田氏は米国産アラスカ原油や中南米のスポット、さらにロシア・サハリン2からの原油までも選択肢に挙げた。
「アラスカ原油は質がいいので、欲しいところですね」。日本の製油所が好む「ライト&スイート」の性状に近いという。中南米原油は質が重く、使いにくいとも語った。中東から喜望峰を回ってスエズ運河を経由しない大迂回ルートも計画自体はあるというが、「コストが高いのと時間がかかるので、まだついてません」と、実現には至っていない現状も率直に明かした。
また、ロシア・サハリン2からの原油調達についても触れた。「これは、規制の対象外になっています」。量はまだ1回あたり70万バレル程度とまとまってはいないが、「日本が投資して、日本が作ってきたものです。取り上げられるくらいなら、その原油は日本が受け取ったほうがいい」と山田氏は語る。ウクライナ侵攻をめぐる複雑な感情がある一方、自民党内でも同様の判断が下されたと明かした。この判断の重みは、ぜひ本編で確かめてほしい。
国際法は、日本を守ってくれるのか?
山田氏は「アメリカもイランも、国連海洋法条約を批准していない」と指摘し、国際法だけに頼れない現実を語った。
トランプ大統領が「通行料など許さない」と発言したことに触れ、山田氏はこう続けた。「トランプ大統領の中に国連海洋法条約の基準というのは、あったとしても薄い」。国際法の下で航行の自由を守るべきだという日本の常識が、大国の論理の前では通用しない可能性があるという。ホルムズ海峡の航行ルートについては、国際機関や日本の関係者も随時状況を確認しながら動いており、「速度は遅いですが、徐々に徐々に回復してます」とも語った。
この危機は、日本に何を迫っているのか?
山田氏は「船をしっかり確保しておかないと、日本は電気すら困る時代が来る」と述べ、造船・原発政策の見直しを訴えた。
エネルギー基本計画は7年間つくられていない。LNG船の建造技術は韓国が主流になりつつあり、「今からクレーンを発注しても7年後」という納期の壁もある。石油からの脱却、国産の造船力の維持が急務だと山田氏は語った。
止まったままの原発についても、山田氏は言い切った。「止めているだけでは、リスクは実は変わらない。むしろ稼働していたほうが、はるかにチェックできる」。現在も原発20基以上が停止したままで、2040年には電力不足に陥るとも指摘される。原子力を学ぶ学生が減り、母校・東海大学の原子力学科も学生が集まらず消えたと明かし、「技術を絶やしてはいけない」と繰り返した。造船の現場でも、働き手のおよそ4人に1人が外国人になっているといい、「この環境で作り続けるのは厳しい」と危機感をにじませた。
原油も、資源も、原子力も、安全保障も、突き詰めれば「海」でつながっている。山田吉彦氏の話を、ぜひ本編で確かめてほしい。
▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「日本の急所は“海峡”だ」(2026年7月6日配信)
■ 番組で語られたそのほかの論点
・(24:40) エネルギー基本計画は7年間未策定/LNG・水素運搬船の最新技術
・(27:47) 止まったままの原発20基以上/再稼働が進まない規制の現実
・(31:48) 南鳥島レアアース試掘成功/中国依存9割からの脱却なるか
・(36:11) 探査船「ちきゅう」老朽化と海洋開発基本法構想
・(41:00) 使用済み核燃料、南鳥島での最終処分は可能か
・(51:31) 米国が原子力回帰/スリーマイル再稼働とデータセンター需要
・(53:23) 原子力潜水艦が支えた「トモダチ作戦」の裏側
・(55:53) 能登に漂着した中国製の巨大パイプ、原因者負担の追及
・(59:03) 国民民主党、秋に独自の安全保障方針を発表へ
FAQ
Q1.ホルムズ海峡とは、どこにある海峡か。
A.イランとオマーン・UAEの間に位置し、ペルシャ湾と外洋(オマーン湾・アラビア海)を結ぶ海峡。世界の原油輸送の要衝であり、日本の原油輸入の9割以上がここを経由する。
Q2.ヤンブー港・フジャイラ港とは何か。
A.ヤンブー港はサウジアラビア紅海側の輸出港、フジャイラ港はUAEのホルムズ海峡外(オマーン湾側)の輸出港。いずれもホルムズ海峡を経由せずに原油を積み出せる拠点として、迂回ルートに使われている。
Q3.サハリン2とは何か。
A.ロシア極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業で、日本企業も出資している。同事業からの資源は、日本のロシアに対する経済制裁の対象外として扱われている。
関連リンク
経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」(2026年3月24日)
トップ写真:山田吉彦参議院議員 ⒸJapan In-depth編集部



























