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.国際  投稿日:2026/8/14

与野党対話開始も、交渉の行方には悲観論-ベネズエラ


執筆者:山崎真二(元時事通信社外信部長)

 

■本稿のポイント

・ベネズエラで暫定政権と野党勢力の対話が始まった。

・背景にはベネズエラの政治的安定を重視する米国の意向。

・野党勢力の最有力代表マチャド氏の不参加が問題。

 

ベネズエラで暫定政権と野党勢力による与野党対話が今月6日、首都カラカスで開始された。トランプ政権の後押しでフィゲラ元国会議員が野党代表を務める一方、最有力指導者マチャド氏は不参加。元時事通信社外信部長の山崎氏が、対話の背景と今後の行方を分析する。(Japan In-depth編集部)  

■対話開始には米国の後押し

 

  ベネズエラではこのほど、ロドリゲス暫定政権と野党勢力が国内の民主化問題を話し合う「与野党対話」を開始した。実質的に第1回目となる対話は今月6日、同国首都カラカスで行われた。対話プロセスは12月まで続く見込みで、政権側はロドリゲス暫定大統領の兄でホルヘ・ロドリゲス国会議長、野党側はディノラ・フィゲラ元国会議員がそれぞれ代表を務める。この対話開始には米国の意向が強く働いたとみられる。トランプ政権が1月末、ベネズエラへの軍事侵攻で当時のマドゥロ大統領を強制連行した後、同国ではロドリゲス暫定政権が成立、それまでの反米から対米協調路線に転じた。暫定政権は石油産業の外資開放や政治犯の釈放など一定の改革に踏み切ったが、その背景には米国の強い圧力があったのは確実。中南米問題の専門家の間では「石油利権確保を最優先するトランプ政権がベネズエラの政治的安定を図る政策の一環としてこの与野党間対話を強力に後押ししている」との見方が有力だ。

■トランプ政権の仲介で野党代表を起用

 

 野党勢力の代表にフィゲラ元国会議員がなったのも、米国が同議員なら暫定政権側と折り合いがつくとみて早い段階から接触、仲介工作を進めてきたといわれる。周知の通り、ベネズエラの野党勢力の指導者として圧倒的に人気を有するのはノーベル平和賞受賞者のマリア・コリナ・マチャド氏。マチャド氏は2024年のベネズエラ大統領選で当時のマドゥロ政権の政治弾圧で出馬ができず、自分の身代わり候補を立てた。同政権の息のかかった選管当局はマドゥロ大統領(当時)の勝利を宣言したが、実際にはマチャド氏の身代わり候補が圧倒的大差で当選したことは明らかとされており、マチャド氏が現在のベネズエラ野党勢力を代表する人物と内外で認められている。しかし、海外亡命中のマチャド氏が帰国すればベネズエラ国内で混乱が起きるのを恐れたトランプ政権によって、マチャド氏でなくフィゲラ氏が野党勢力の代表として起用されたというのが、現地での専らの見方だ。

■マチャド氏不参加は「決定的欠陥」

 

 ベネズエラではマドゥロ前政権下でも、政権側と野党勢力との間で交渉がたびたび行われたが、国内の民主化は全く進まなかった。ただ、今回はこれまでと違い米国の強い関与があることから与野党対話が進めば自由で公正な選挙実施につながる可能性があるとの期待が生まれているのも事実。とはいえ、マチャド氏が参加しない与野党対話は「決定的欠陥」(ベネズエラ問題専門家)との声が早くもベネズエラ内外から聞かれる。米国の中南米問題の専門家の一人は「マチャド氏不参加の与野党対話は意味がない」と断言する。ベネズエラの有力紙「エル・ウニベサル」も「このプロセスに一部の重要人物が加わっていないことがさまざまな部門から問題視されている」とし、「野党が十分に幅広い(国民を)代表になっていなければ、どのような合意であっても政治的、社会的に正統性を欠く」と述べている。

■「実体のない見せかけに終わる」か

 

 加えて問題とされるのは、野党勢力代表のフィゲラ氏が2018年から海外亡命生活を送っており、国内での政治的影響力がほとんどないということ。こうした人物が暫定政権と交渉して仮に合意に至ったとしても、その有効性には疑問符がつく。一方、暫定政権側の代表であるロドリゲス国会議長は過去にメキシコやバルバドスでの野党側との協議でも政府を代表して参加、「交渉術に長けた名うての策士で、与野党対話で主導権を握るだろう」(ベネズエラの政治専門家)とみる向きも多い。しかも、ロドリゲス議長は第1回対話で優先議題は最近ベネズエラで起きた大地震の復興対策だと指摘、民主化問題を後回しにする考えを強調している。今回の与野党対話を巡っては「12月に成果を発表する」(フィゲラ氏)との楽観論が聞かれるのとは裏腹に「実体のない見せかけに終わるだろう」(米国の中南米問題専門家)との悲観的見方が広まりつつあるようだ。

(了)

■よくある質問(FAQ)

Q1. ベネズエラの「与野党対話」とは何ですか?
A. ロドリゲス暫定政権と野党勢力が国内の民主化問題について話し合う枠組みです。2025年に開始され、12月まで継続する見込みです。

Q2. マリア・コリナ・マチャド氏はどのような人物ですか?
A. ベネズエラ野党勢力を代表する政治家で、ノーベル平和賞受賞者です。2024年大統領選では出馬を阻まれ、身代わり候補を擁立しました。現在は海外に亡命中です。

Q3. なぜマチャド氏は今回の対話に参加していないのですか?
A. 記事によれば、マチャド氏が帰国した場合の国内混乱を懸念したトランプ政権の意向により、代わりにディノラ・フィゲラ元国会議員が野党代表として起用されたとみられています。

Q4. トランプ政権はなぜこの対話を後押ししているのですか?
A. 記事内の専門家分析では、石油利権の確保を優先するトランプ政権が、ベネズエラの政治的安定を図る政策の一環として対話を支援しているとされています。

Q5. 対話の今後の見通しはどうですか?
A. 野党代表のフィゲラ氏は12月の成果発表に楽観的ですが、記事では専門家の間に「実体のない見せかけに終わる」との悲観的な見方も広がっていると指摘されています。

(本稿リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

 

写真)カラカスで行われた与野党対話に臨むホルヘ・ロドリゲス国会議長

出典)Jesus Vargas/Getty Images

 




この記事を書いた人
山崎真二時事通信社元外信部長

 

南米特派員(ペルー駐在)、ニューデリー特派員、ニューヨーク支局長などを歴任。2008年2月から2017年3月まで山形大教授、現在は山形大客員教授。

山崎真二

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