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.政治  投稿日:2026/7/31

吉村知事はなぜ同日選にこだわるのか――大阪市会の反発と、松井氏の一言


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【本稿のポイント】

・吉村洋文大阪府知事が住民投票と知事選の同日実施にこだわる背景には、大阪市会の維新議員の反発がある 。

・憲法96条は選挙と同時の投票を認めているが、2007年の国民投票法制定時に立法者は「想定していない」と明言した。

・国民民主党は秋の臨時国会に、調整規定を復活させた同日選実施禁止法案を再提出する。

2026年7月24日、副首都法が参議院本会議で成立した。賛成123、反対121の2票差である。その夜、日本維新の会代表の吉村洋文大阪府知事は、来春の大阪府知事選と「大阪都構想」の住民投票を同じ日に実施する考えを示した。附帯決議に「重複しないように最大限調整する」と書き込まれた、その直後だった。国民民主党の足立康史参議院議員は、Japan In-depthチャンネルで言い切った。「絶対にできません」。根拠は19年前の国会答弁にあった。(Japan In-depth編集長 安倍宏行)

詳細は本編動画で:https://www.youtube.com/live/66HDgQY9jjY

吉村知事はなぜ同日実施にこだわるのか?

足立氏の見立ては「追い込まれている」である。

橋下徹氏は2015年、松井一郎氏は2020年、いずれも住民投票の否決を受けて政界を去った。「吉村さんもやめたいんです」と足立氏は言う。3度目の住民投票を花道にする――それが描かれた筋書きだった。

ところが大阪市会の維新議員が抵抗した。3年余り前の統一地方選で「都構想はやらない」と訴えて当選した彼らにとって、任期中の実施は公約違反になる。「やらないことが公約を守ることなんです」。市会側が示した条件は、統一地方選と同日か、それ以降。吉村氏は同日より前にやりたい。折り合う点は「同日」しか残らなかった。

さらに松井氏から条件がついたという。同日でやるなら辞めるな、と。辞めたかったのに、辞められなくなった。「もう4年やらなあかんことになった」――足立氏は吉村氏の胸中をそう推し量る。同日選への執着は、勝算ではなく退路のなさから来ているという見方である。   

批判されている当人は、国会にいない。吉村氏は府知事だからである。7月24日の参院特別委員会では、足立氏の求めに応じて、法案の発議者である岩谷良平衆院議員が吉村氏に連絡を取り、その回答を代わりに答弁した。

同日実施を目指すという発言は、投票率や有権者の利便性、経済的合理性の観点から述べた「思い」である。実施日を決めるのは選挙管理委員会だと認識している。それが吉村氏の回答だった。撤回するとは言わなかった。

「思いは維持するんですね」。足立氏が念を押すと、岩谷氏は「細かい話までできたわけではない」と述べるにとどまった。

憲法96条は同時実施を認めているのではないか?

足立氏は憲法96条を読み上げた。憲法改正の承認は「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票」による、とある。選挙と同時に投票することを、憲法自身が認めているように読める。

だが2007年、憲法改正国民投票法が制定されたとき、発議者の保岡興治氏はこう答弁したと足立氏は指摘する。制度を選ぶ投票と人物を選ぶ選挙は、別に行うことが適当である。同時実施は想定していない。根拠は、同時実施に必要な規定を法案に整備しなかったこと。「法案全体を見ていただければ明確だ」と。

置かれた例外は一つだけだった。万一重なった場合に、政党の国民投票運動を妨げないとする調整規定である。

この経緯を通しで説明するのは「本邦初公開」だと足立氏は言った。制定から19年が経ち、当時の議論に加わった議員はもう国会にいない。「これが分かっている国会議員は、もう僕だけかもしれません」。憲法の条文、それを実施する法律、そして実際の運用――三層に分けて読まなければ、同時実施の可否は判断できないという説明である。

吉村氏が持ち出す大都市法第7条第7項も、構造は同じだと足立氏は言う。住民投票は「普通地方公共団体の選挙と同時にこれを行うことができる」。首長の死亡や辞職で選挙が突発する場合に備えた規定であって、目指すための規定ではない。「まさか大都市法7条7項を引っ張って同日選を目指す政治家が存在するとは、法は想定していないんです」

有権者に何が起きるのか?

実例はすでにある、と足立氏は言う。

公職選挙法は、選挙期間中に街頭で政治活動ができる政党を、候補者を届け出た確認団体に限っている。2月8日の大阪府知事選では、候補者を立てた大阪維新の会だけが街頭に立ち、出せなかった政党は動けなかった。

来春はこれが住民投票に及ぶ。知事選に候補者を出さない政党や市民団体は、住民投票をめぐる訴えができなくなる。「4年の人を選ぶ知事選挙のおかげで、100年の未来を決める住民投票が制限される。法の不備でしょう

秋の臨時国会で何が起きるのか?

国民民主党が公明党と共同提出した同日選実施禁止法案は否決された。足立氏は理由をこう説明した。参議院に出した案は、簡素化を求められた際に調整規定が落ちていた。「100点じゃないから否決されたんです」

秋の臨時国会には、その規定を戻した完全版を出し直す。「必ず多数を取れると思います」。9月の内閣改造で維新から入閣者が出れば、予算委員会でも問う構えだ。

複雑な論点であることは足立氏自身が認めている。それでも「8月、9月、10月、11月、12月、1月、2月、3月、ずっと毎日説明します」と繰り返した。来春の投票日までに残されているのは、その8か月である。

制度を選ぶ投票と、人物を選ぶ選挙を同じ日に行う。それが法律で禁じられていないことは確かだ。問われているのは、禁じられていないことをやってよいのか、という一点である。

詳細は本編動画で:https://www.youtube.com/live/66HDgQY9jjY

◆番組で語られたそのほかの論点

・[02:30]〜  可決を支えた「与党外の5票」と、3つの要因

・[05:30]〜  チームみらいの修正案は誰が作ったのか

・[09:37]〜  副首都法はそもそも何のための法律か

・[14:41]〜  首都・東京にも「首都だから」の措置はない

・[19:02]〜  高市総理と維新、連立合意書の「約束」

・[32:40]〜  附帯決議と、撤回された答弁

・[1:06:15]〜  大阪市民から隠された「第三の選択肢」

・[1:08:16]〜  「3つのヨシマンダー」とは何か

・[1:14:23]〜  広告規制と表現の自由

◆とっておきの話は、メンバー限定スペシャル動画「本音解禁!」で

番組では語りきれなかった話は、メンバーシップ限定のスペシャル動画「本音解禁!」でお届けします。維新から国民民主党へ移った立場から見た今回の審議、代表選に何を期待するか、そして党勢拡大に何が足りないのか。「ヒゲアベ解説委員」以上のメンバーの方が視聴できます。是非メンバーになって応援してください!

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【よくある質問(FAQ)】

Q. 副首都法の正式名称は何か?

「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律」である。自民党と日本維新の会が共同で提出した議員立法。

Q. 附帯決議に法的拘束力はあるのか?

ない。委員会が法案を議決する際に運用上の留意事項を付す慣行で、国会法にも議院規則にも明文の根拠はない。法律の一部を構成する附則とは性質が異なる。

Q. 大都市地域特別区設置法はいつ成立した法律か?

2012年8月29日成立、平成24年法律第80号。7会派の共同提出により制定された。

トップ写真:足立康史参議院議員(2026年7月30日@千代田区霞が関)ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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