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ビジネス  投稿日:2026/9/23

メード・イン・ジャパンはどこへ?


執筆:福澤善文(コンサルタント/元早稲田大学講師)   

■本稿のポイント


 
・20年使用した東芝製洗濯機は修理部品の入手不可能で買い替え。東芝白物家電事業は2016年に中国の美的集団に売却され、製造も中国・タイの工場で行われていた。

・経済産業省の基準では洗濯機の標準使用期間は6~7年、補修用部品の保有期間も製造打ち切り後6年間と定められており、長寿命が強みだった日本製品が、購入時から寿命の決まった製品に。

・欧米が製品を長く使う方向性を志向する一方、日本は「安全性」を理由に寿命を規定しており、政府に日本製品の持続性という強みを取り戻す役割を求める。

20年間使い続けた東芝製の洗濯機が、修理部品の入手不可能により買い替えを迫られた。調べてみると、東芝ブランドの白物家電はすでに中国資本の傘下にあり、製造も海外で行われていた。かつて世界市場を席巻した「メード・イン・ジャパン」の強みは、いつの間にか失われていたのか。コンサルタントで元早稲田大学講師の福澤善文氏が、自身の体験をもとに日本製品の変化を綴る。

◆20年使った東芝製洗濯機、修理不能で買い替えへ

20年使用した我が家の洗濯機を買い替えなければならない。修理部品さえあれば、まだまだ使える洗濯機で、この東芝製の洗濯機の性能の良さと寿命の長さには大満足だった。しかし、修理業者によれば、修理部品が入手不可能なため、修理ができないということなので、買い替えはやむを得ない。「次も同じメーカー」を選ぼうと機種選びに取り掛かった。ところが、調べてみると、東芝とは名ばかりで日本の洗濯機メーカーではなくなっている。しかも洗濯物の容量は変わらないのに大型化しており、我が家には設置できない。何故このように大型化する必要があるのかよくわからない。

◆東芝ブランドの白物家電、いまは中国・美的集団の傘下に

東芝ブランドの白物家電事業は2016年に中国の美的集団(ミデア)に売却され、現在は東芝ブランドを引き継いだ東芝ライフスタイル株式会社が白物製品の企画、開発を行っている。現在の同社の資本構成は美的集団(80.1%)、株式会社東芝(19.9%)となっている。製造は全て、美的集団所有の中国の工場とタイの工場で行われている。このタイの工場は美的集団が東芝から白物家電事業を買収した際にまるごと同グループ傘下に移ったものだ。

総合電機メーカーでは世界でトップメーカーだった東芝は2006年に買収した原子力発電のウェスティングハウスによる巨額損失と、その後の不正会計で事業を切り売りした。白物家電も切り売りされたのだ。

東芝問題は日本経済に大きな影響を与えたものの、その当時、筆者は第三者的な立場で眺めていた。ところが、今、毎日使用している洗濯機の買い替えが必要となり、家電量販店へ足を運び、東芝製品に接するとなると、かつての東芝問題がいかに消費者にも影響を与えてきたかを痛感する。

かつては、家電量販店の白物家電売り場へ足を運ぶと、ほぼすべてが真の日本ブランドだったが、それらの日本ブランドも海外メーカーのブランドとなっているのには驚かされた。日本ブランドだから大丈夫だと信じて購入して、後で調べたら、実際には海外のメーカーのものだったということもあり得る。

思えば、メード・イン・ジャパンのブランドは良質で、なかなか壊れない日本製品の代名詞であり、80年代、90年代、日本製品は世界市場を席捲した。故障もせずに長持ちする日本製品こそ、世界市場で優位性を発揮できる日本のお家芸だったし、消費者が求めるものだった。

◆「寿命が決まった製品」に変わった日本製家電

現在、経済産業省の基準による洗濯機の設計上の標準使用期間は6~7年となっており、 メーカーは洗濯機の補修用性能部品(修理に必要な部品)の最低保有期間は製造打ち切り後6年間としている。言い換えれば、7年経って故障したら修理部品が無くなるので、修理はできず、買い替えろということだ。洗濯機に限らず、冷蔵庫などの白物家電には、標準使用期間が政府により設定されている。かつては長い期間の使用に耐えうる日本製品が、近年は、購入時から寿命が決まっており、期限が来たら買い替えなければならない製品と化した。日本はこの製品の寿命を「経年劣化による安全性」の観点からという理由で、「安全に使用できる期間」として規定している。

◆修理を重ねて使い続けたい消費者と、欧米との違い

寿命がきたからと買い替えを迫られる消費者にとっては、たまったものではない。気に入って購入した、使い勝手のいい商品は、修理を重ねてでも長く使いたいと思うのは当たり前のことだ。実は我が家の洗濯機、10年前と3年前に修理している。10年前は脱水時の弁を経年劣化で交換。3年前はドラムの芯棒の破損で、すでに部品はなかったものの応急処置で3年もった。修理の方の知識も技術もたいしたものだった。一方、欧米は、「環境(ゴミ削減・サステナブル)」を主目的として、長く使える物は長く使ってもらうという方向性で、日本とは真逆だ。

メーカーにとっては、製品を長く使用されるよりも、買い替え需要が決まっているほうが、企業利益を上げる意味では良いかもしれない。これが、日本経済の勢いを取り戻すためであればともかく、馴染みのある日本ブランドの元締めをたどると、海外メーカーであることを考えると複雑な思いだ。性能といい、持続性といい、日本の匠の技を使ったメード・イン・ジャパン製品はどこへ行ったのだろうか。修理部品の保管期間、製品の寿命を決め、消費者に買い替えを促進させるのではなく、高性能な日本製品の持続性という強みを取り戻させることこそ政府の役割ではなかろうか。

【よくある質問(FAQ)】

Q1:「美的集団(ミデア)」とはどのような企業ですか?
A:中国の大手家電メーカーです。記事によれば、2016年に東芝の白物家電事業を買収し、現在は東芝ブランドを引き継いだ東芝ライフスタイル株式会社の株式80.1%を保有しています。

Q2:東芝ライフスタイル株式会社とはどのような会社ですか?
A:東芝ブランドの白物家電(洗濯機など)の企画・開発を行う会社です。記事によれば、資本構成は美的集団が80.1%、株式会社東芝が19.9%となっており、製造は美的集団所有の中国とタイの工場で行われています。

Q3:「標準使用期間」とはどのような制度ですか?
A:経済産業省の基準に基づき、製品ごとに設定される使用期間の目安です。記事によれば、洗濯機の設計上の標準使用期間は6~7年とされており、冷蔵庫など他の白物家電にも同様に設定されています。

Q4:「補修用性能部品」とは何ですか?
A:製品の修理に必要な部品のことです。記事によれば、メーカーは洗濯機の補修用性能部品の最低保有期間を、製造打ち切り後6年間としています。

Q5:ウェスティングハウスとはどのような企業ですか?
A:原子力発電関連の企業です。記事によれば、東芝は2006年にこの企業を買収しましたが、その後の巨額損失と不正会計問題により、白物家電を含む事業の切り売りにつながったとされています。

(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

トップ写真:Media Tour of Bic Camera Yurakucho Store
出典:Tomohiro Ohsumi / 寄稿者 / GettyImages




この記事を書いた人
福澤善文コンサルタント/元早稲田大学講師

1976 年 慶應義塾大学卒、MBA取得(米国コロンビア大学院)。日本興業銀行ではニューヨーク支店、プロジェクトエンジニアリング部、中南米駐在員事務所などを経て、米州開発銀行に出向。その後、日本興業銀行外国為替部参事や三井物産戦略研究所海外情報室長、ロッテホールディングス戦略開発部長、ロッテ免税店JAPAN取締役などを歴任。現在はコンサルタント/アナリストとして活躍中。


過去に東京都立短期大学講師、米国ボストン大学客員教授、早稲田大学政治経済学部講師なども務める。著書は『重要性を増すパナマ運河』、『エンロン問題とアメリカ経済』をはじめ英文著書『Japanese Peculiarity depicted in‘Lost in Translation’』、『Looking Ahead』など多数。

福澤善文

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