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.政治  投稿日:2026/9/21

少子化対策、障害児支援が「たった一つの決定的な答え」猪口邦子氏


【本稿のポイント】

・初代の少子化担当大臣を務めた猪口邦子氏は、国がやるべき少子化対策は「一点に近い」と言い切った。障害のある子と家族を国が徹底的に支える政策である

・背景にあるのは、共働き夫婦が子どもを持つ前に交わす「万が一」への不安だ。猪口氏は、親の所得が上がると障害児支援が外れる現行制度を「立論としておかしい」と批判した

・20年前に猪口氏が向き合った壁は出産費用だった。いま母親に足りないのは「時間」だとして、選択的週休3日制も提唱した

 少子化対策で国がやるべきことは「たった一つ」だと、初代の少子化担当大臣を務めた自由民主党の猪口邦子参議院議員(参議院環境委員長)が語った。2025年の出生数は67万1236人、合計特殊出生率は1.14。20年前の当事者は、いま何を見ているのか。

 本編動画: 「少子化対策20年 なぜ止まらない?」猪口邦子氏 2026年9月15日(火)22:00〜プレミア公開

猪口氏が言う「たった一つの決定的な答え」とは何か

特別支援が必要な子どもと家族を、国が徹底的に守り切ることだ。猪口氏は番組の中盤、こう切り出した。「私は、たった一つの決定的な答えを持っています」(21分45秒〜)。

「もし国の助けが必要なければお邪魔しませんよ。でも何か困りごとがあったら、あなたのすぐそばに国はいます。特別支援の必要なお子さんたちに重点化して、徹底的にその家族を支援する。国がやるべき政策は、これ一点に近いのです」(22分28秒〜)

保育所の増設でも、現金給付でもない。猪口氏は、こども家庭庁が「大変な予算」を持ちながら出生率が下がり続けていることに筆者が触れると、ハードの整備とは別の次元にこの答えを置いた。

なぜ「安心の保証」が少子化対策になるのか

共働きの夫婦が子どもを持つ前に交わす「万が一」の会話に、国が答えていないからだ。猪口氏は、互いに充実した仕事を持つ夫婦を例に挙げた。愛し合う二人だから子どもが欲しい、年齢も年齢だから作ろう——けれど「万が一ということもあるしね」。「こういう静かな秘密の会話は、すごく多いのではないかと思う」(23分53秒〜)。

それに対して国が発するべきメッセージを、猪口氏はこう言い表した。「何があっても、お母さんが仕事をやめるようなことにはならない。必ず国が助けの手を差し伸べる」。そして「全ての子どもは国の宝」(24分48秒〜)。

この政策に重点化すれば「きっと奇跡のように、子どもたちがたくさん生まれてきます」(25分29秒〜)と猪口氏は言った。なぜそこまで言い切れるのか。20年前に大臣として若い世代に届けた「直感」との対比で語った部分は、本編で確かめてほしい。

所得制限は何が問題なのか

親の所得が上がると、障害のある子への支援が打ち切られる仕組みになっているからだ。筆者が「部長になると給料が増えて障害児の支援が外れるから、部長にならないでくださいと妻に言われるケースがある」と水を向けると、猪口氏は「そんなことがあってはならない」と即答した(26分02秒〜)。

「稼ぐために仕事をしているのではなく、自分のキャリアと社会貢献のために仕事をしている。その結果として所得があるから、あなたの子どもへの特別支援の経費は切ります、というのは立論としておかしい」

制度を確かめる。障害のある20歳未満の子を育てる父母などに支給される特別児童扶養手当(厚生労働省)には所得制限がある。受給者本人の所得(年収ではなく控除後の額)が扶養親族1人の場合で497万6000円、配偶者や扶養義務者の所得が653万6000円を超えると、手当は支給されない。猪口氏は、こども家庭庁に対し「まさにこういうことの制度設計を、この時代に合わせてやるべきだ」と注文した(26分27秒〜)。

20年前の壁は何だったのか、いまは何が違うのか

20年前の壁は出産費用、いまの壁は時間だと猪口氏は言う。2005年10月、第3次小泉改造内閣で内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)に就いた猪口氏に、小泉首相の指示書は「下落傾向にあるのをV字型回復しなさい」だった(1分09秒〜)。当時の合計特殊出生率は1.26(厚生労働省)で、過去最低だった。

猪口氏が最初に取り組んだのは出産費用だ。「この国で出産費用を退院のときに払わなければならないというのが、若いカップルにとってどれほどの負担か」(3分31秒〜)。出産育児一時金(厚生労働省資料)は2006年10月、30万円から35万円に引き上げられた。合計特殊出生率はその後2015年に1.45まで回復し、再び低下して2025年は1.14である。猪口氏は「私の政策は、その効果を出し切った」(2分59秒〜)と総括した。

では、いま何が違うのか。「20年前と今とで大きく違うのは、全てのお母さんが働いていること」(8分31秒〜)。パートではなく、課長昇進の直前で出産する。「その時に必要なのは時間です」。猪口氏が推すのは選択的週休3日制で、「(休む)理由を聞いてはいけない制度」にすることが肝だという(9分13秒〜)。猪口氏によれば、千葉県庁はすでにほとんど導入している。

週休3日で生まれた1日を、猪口氏はなぜ「副業」でも「兼業」でもなく「才能シェア」と呼ぶのか。「村一番の子をみんな東京に集めて、週1回戻してやりなさい」という地方論と、番組後半の再生可能エネルギー賦課金「再設計」発言も含め、84分の本編で聞いてほしい。

本編動画: 「少子化対策20年 なぜ止まらない?」猪口邦子氏 2026年9月15日(火)22:00〜プレミア公開

◆番組で語られたそのほかの論点

・才能シェア——一人の才能を2か所で使う(10分15秒〜)

・「自由の最前線は時間の自由」(17分37秒〜)

・家が狭くて結婚できない——住宅という壁と「令和版文化住宅」(26分55秒〜)

・原子力は国が責任を持つべきか——「国家の記憶」(43分52秒〜)

・規制のための規制になっていないか——官僚的惰性と現場民主主義(52分18秒〜)

・再エネ賦課金は「機能を果たした。再設計してもいい」(1時間05分56秒〜)

・浮体式風力と造船業の復活、EEZ活用(1時間06分46秒〜)

・ペロブスカイトとヨウ素——千葉の資源(1時間10分18秒〜)

・スタートアップと公共調達——「死の谷」(1時間12分19秒〜)

・南極条約議定書の担保法と「思想は法律に宿る」(1時間16分01秒〜)

【よくある質問(FAQ)】

Q1:合計特殊出生率とは何ですか?
A:その年の15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性がその年の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当します(厚生労働省「人口動態統計」の定義)。

Q2:特別児童扶養手当はいくら支給されますか?
A:2026年4月からの支給月額は、障害の程度により1級が5万8450円、2級が3万8930円です(厚生労働省)。

Q3:出産育児一時金は現在いくらですか?
A:2023年4月から原則50万円です(厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会資料)。

関連リンク

・Japan In-depthチャンネル(YouTube)

・本編動画「少子化対策20年 なぜ止まらない?」https://youtu.be/Mn05i4fZmxA

トップ写真:猪口邦子参議院議員(左) 2026年9月15日

ⓒJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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