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.社会  投稿日:2014/9/1

[為末大] 【知っていることと使えること】


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

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私が前にいた業界では足が速くなることが一番大事で、それを実現できる人が選手であれコーチであれ一番尊敬された。だからみんなこうすれば足が速くなるという理屈をそれなりにもっていたのだけれど、振り返ってみると大きく二つのタイプがいたように思う。

 

片方は検証型の人。その理屈は正しいかどうか、本当に効くかどうかをいつも試しては結果を見ていた。もう一つは知識型の人。こうすれば速くなるということを知ることを重要視すること。どれだけ知っているかを重要視するタイプ。

 

一人とても素直な人がいて、その人の口癖は”じゃあそうしたら?”だった。一通りこうやれば速くなるはずだ、こうすれば勝てるはずだと話し終わったところで、その人が口を開く。うまくいくのを知っているならなんでやらないの?知識型はそう言われるとぐっと詰まってしまう。

 

実は知っていることと、それを使えることの間にはとても大きな差がある。スポーツの場合わかりやすい。泳ぎ方の本を読んだだけでは泳げるようにはならないから。現実社会はすこしわかりにくい。競馬の予想が当たる人が、なぜか自分で馬券を買わずに予想を売っていたりする。

 

知識は知識のままでおいておけばきれいなままでいられる。実践に移してしまうと、もしかしたらうまくいかないかもしれないし、失敗するかもしれない。知識型は潔癖性で失敗嫌いの人が多かった。実践さえしなければ失敗もしなくていい。

 

四国の老齢の先生が持っていたノートがある。数冊にも及ぶノートは数十年間で自分が犯した失敗を書いてあった。いつも平易な言葉で喋っていた人だったけれど、何とも言えない含蓄があった。

 

 

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