[宮家邦彦]【欧州の憂鬱・民族主義台頭】 宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月8-14日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週の原稿はロンドンからの夜行便の中で書き始めている。英国で会った友人はスコットランド独立賛成派が過半数を超える可能性が出てきたと心配していた。案の定、羽田に着いた翌日には世論調査で初めて賛成派が2%リードしたと報じられた。
おかげで月曜日に英ポンドは急落、あーあ、高値で交換して損をした。スコットランド独立問題はそれほど重要なのか、と今更ながら実感する。それにしても、有権者はあくまでスコットランドの住民だけで、イングランドに住むスコッツ達に投票権はない。
変なシステムだが仕方がない。しかし、スコットランドが独立すれば大英連合王国の神通力は消え、英米の特別な関係にも影響が出る。なんだかんだ言っても、「米国が戦い、英国がこれを支援する」というのが従来の欧米社会のパターンだったからだ。
イングランドを毛嫌いするスコットランドが、英米の外交に茶々を入れ始めたらどうなるのか。スコットランドだけではない、こうした少数派の極端な民族主義は今や欧州各地で見られる現象だ。最近の欧州議会の極右政党の躍進とも軌を一にする話である。
冒頭の英国の友人は、仮にスコットランドが独立・離脱を決めても、一年半後に彼らは必ず後悔する、と吐き捨てるように言っていたが、果たしてどうなるか。もしかしたら、それは英国だけでなく、欧州全体の更なる地盤沈下の始まりなのかもしれない。
アジアでは米国のスーザン・ライスNSC補佐官が7-9日に訪中する。2か月前ワシントンの民主党の友人に「スーザンに利点があるとしたら何か?」と尋ねたら、笑いながら「longevity(長寿)」と答えていた。オバマとの付き合いが長いだけ、という意味だ。
ワシントンでライスはその程度の評価ということか。最近の主要外交課題でライスがNSC補佐官として何か重要な役割を果たしたという話は殆ど聞かない。オバマ政権とは実に不思議な政府である。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
http://www.canon-igs.org/blog/
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