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藤田正美(ジャーナリスト)
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ウクライナ情勢が厳しくなっている。ロシアとウクライナ政府、それにウクライナの反政府勢力は、今週初めに会談したが結局物別れに終わった。一方でNATO(北大西洋条約機構)はロシアの動きに対して、緊急即応部隊を編成するという方針を発表した。さらにポーランドの首相は国内にNATOの恒久的な基地(兵力1万)を設けるという提案をした。
もちろんロシアはこうした動きに反発し、ウクライナ紛争の平和的解決に向けての努力を阻害するものだと非難している。しかし、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力に武器や兵士を供給しているのはロシアだ。ロシア国内には孤立主義的な感情が高まり、プーチン大統領が強硬になればなるほど支持率が高くなるという危険な構造になっている。
問題はウクライナ情勢が深刻になる一方で、EU経済が失速しかかっていることだ。もしロシアと事を構えるというような事態になれば、一気に悪化する懸念もある。
EU経済の第2四半期に予想外に悪かった。ヨーロッパの牽引車であるドイツが0.6%のマイナス成長となり、イタリアは2四半期続けてマイナス成長、いわゆる「景気後退」となった。EU第2位のフランスもマイナス0.1%と冴えない。
2010年からヨーロッパを揺るがせていたいわゆるソブリンリスク(国家債務危機)は一段落している。少なくともギリシャを始めとする諸国は資金調達できるようになったし、国債発行時のリスクプレミアムも小さくなった。
しかし問題が解決した訳ではない。不良債権を抱えた銀行の再建も進んでいないし、失業率は高止まりしたままだ。もっと大きな問題は、日本型のデフレに落ち込む危険性があるということだ。ユーロ圏の物価上昇率は徐々に低下して直近ではわずか0.7%。もしこれがデフレになると、企業も個人も負債を圧縮しようとしてそれがまた経済を停滞させることになる。
失業率も高い。ギリシャやスペインは相変わらず4人に1人が失業している。フランスも10%を超えているし、イタリアは12.6%だ。ユーロ圏全体でも11.5%にも達する。もちろん年代別で言えば、若年失業率が高い。
こうした状況にあっては、ロシアに対してEUが一枚岩で事に当たるのも簡単ではない。ロシアに近く、脅威を感じている国ほど強硬になりがちだが、ドイツやフランス、イギリスなどにとっては、どちらかと言えばロシアとの経済的結びつきが重要だ。
とはいえ、プーチン大統領が強硬なだけに、EUも経済制裁を強化せざるをえないが、そうなればブーメラン効果で自分たちも傷を負う。そこにデフレが加わったりすると、EUの傷はますます深くなるということも考えられるのである。
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