古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
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いま日本国内で改めて論議を呼ぶ慰安婦問題は国際的な状況こそ重要である。日本の国家や国民の名誉が左右されるのは日本の国外でだからだ。
そのために慰安婦問題は国外で何を糾弾されてきたのか。この点に光を当てるため、私はあえて自分自身が2007年に出演したアメリカのPBS(公共放送網)系のテレビ番組での応答を前回のこのコラムで紹介した。
今回もその骨子の紹介を続けたい。日本の慰安婦問題は国際的には何が争点なのかをできるだけ多くの日本の人たちに知らせたいと願うからである。
ファリード・ザカリア「慰安婦の売春は任意ではなかった?」
古森義久「いえいえ、女性たちの行動は任意あるいは自発的だったということです。当時、軍の慰安婦を募集する広告が新聞などに頻繁に出ていました。募集だったわけです。当時、悲しいことながら、売春は合法でした。女性たちと日本軍当局の間には売春施設を経営する業者たちが存在しました。軍は確かに関与しました。だが軍当局が方針として女性たちを強制徴用したことはなかったのです」
ザカリア「しかし自分たちが強制徴用されたと主張する女性たちは確実に存在しますね」
古森「売春管理の業者たちが女性を強制徴用したケースはあったでしょう。家族の借金返済の穴埋め、親が娘を売春に供して、かなりの額の現金をもらう。最も悲しい形の人身売買でした。こういう場合は女性個人の次元では確かに強制があったでしょう」
ザカリア「しかし軍部が代金を払っていた。このセックス取引の制度的性格を明確にしましょう。将兵たちはセックスを得ても代金を払わなくてよかったのですね」
古森「いえ、そうではありません」
ザカリア「軍は組織として中間の業者と契約を結んでいた。そして女性からのサービスを買い、将兵に提供していた?」
古森「ただし個々の将兵は女性に代金を払っていました」
ザカリア「えっ、個別にですか」
古森「そうです。その支払いを示す記録は山のようにあります。女性の多くは高額の収入を得て、家族に送金することがごく普通でした。極端な場合、当時の日本の首相の給料より多い収入を得ていた女性もいたそうです」
ザカリア「でも売春施設は軍の基地内とか近くにあったのだから、軍がその開設は経営に関与しなかったはずがない」
古森「軍はインフラをつくりました。そのことは日本の政府も歴代首相も過ちだと認め、謝罪をしています」
ザカリア「しかしその謝罪が韓国でも中国でも本当の謝罪として受け容れられていない」
古森「日本の周辺にはこの種の問題での日本の謝罪を決して受け容れないという一定の勢力が存在します。慰安婦問題では日本の歴代首相が謝罪をしてきた。だが外部の勢力は不十分だという。国会の決議をせよ、という。ハードルが常に高くなっていくのです。
ここで強調したいのは、慰安婦というのも当時の戦争の一部です。日本が遂行した戦争行動はすべて厳重な懲罰を受けた。日本も日本国民もその代償を死をもってまで払ったのです。
戦争犯罪人として多数が裁判にかけられ、処刑されました。日本国は敗戦で完全に降伏し、懲罰を受け、巨額の賠償金を払いました。その一つの総括がサンフランシスコ対日講和条約でした。
戦争の清算として日本人はこれ以上、なにができるのか。日本国民の多くがいまこう感じていると思います」(つづく)
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