[古森義久]<慰安婦問題>河野談話と朝日新聞の罪〜なぜ事実ではない「強制連行」が世界中で広まったのか?
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
慰安婦問題というのは、国際社会での日本に対する冤罪だといえるだろう。6月20日に公表された河野談話検証の有識者新報告がそのことを改めて裏づけたーーアメリカでのこの問題をめぐる動きを長年、報道してきた私がいまの時点で感じる総括である。
私はワシントン駐在の産経新聞特派員として日本の慰安婦問題の取材に2000年代はじめからかかわり、とくに2007年のアメリカ議会下院での日本非難決議に関しては集中的に報道にあたった。
このプロセスではアメリカや韓国、中国側は一貫して慰安婦問題を「日本軍の20万人の性的奴隷(sex slave)」と断定した。日本軍が組織的、政策的に朝鮮半島などの一般女性を強制連行して拘束し、奴隷に等しい売春婦にした、という見解が前提だった。日本の官憲が公式の政策として女性たちを強制連行して「性的奴隷」にしていたというのだった。
ところがこの断定が事実ではないのだ。日本の軍や政府が組織的、政策的に一般女性を強制連行していたという主張の証拠はどこにも存在しないのである。
そのことを膨大な資料や証言を基に裏づけたのが今回の有識者新報告だった。慰安婦の徴用は実際には民間業者が全面的にあたった。女性の募集は当時の新聞広告などでも広く宣伝された。個々の女性のなかには家族の借金などを理由に本人の意思に反して徴用された人たちもいた。だが日本軍や日本政府が組織の方針として無理やりに女性たちを徴用したことはなかったのだ。
ではなぜ事実ではない「強制連行」が世界中で広まったのか。
最大の理由は1993年に出た当時の官房長官の河野洋平氏による「河野談話」だといえる。同談話には日本軍による強制徴用があったことを認めたように受けとれる文言が入っていた。河野氏自身も当時の公式会見で官憲による強制性を認める発言をした。
同時に朝日新聞が一貫して「強制連行」を強調する報道をした。いまでは虚構だらけの報道だったことが判明している。
今回の新報告は当時の河野氏ら日本側が韓国側の一方的な主張に引きずられ、事実でないことも事実であるかのように黙認してしまった経緯を詳述していた。 慰安婦は軍隊のための売春だった。そこには女性たちの明らかな犠牲や悲劇があった。その事実にはいまの日本の政府も国民も謙虚に同情や反省を述べてしかるべきだろう。
だが日本の軍隊や政府が罪のない若い女性たちを公式の方針として大量連行していたと断ずる糾弾はあくまで冤罪であり、ぬれ衣なのである。その点を主張することは後世の日本国民の名誉のためにも不可欠だろう。
【あわせて読みたい】
- <朝日新聞の安倍政権叩き>日本政府の政策批判と中国の暴力行為を同等に扱う朝日新聞は異様(古森義久・ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
- 米バージニア州の教科書で「日本海」と「東海」の併記決定の背景にある韓国ロビーの反日パワー〜全米人口1%未満の韓国系住民が、なぜ州や市を動かせるのか?(古森義久・ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
- <日本に韓国パク大統領とつきあう覚悟はあるか>海難事故に見るパク大統領の反近代的対応(藤田正美・ジャーナリスト/Japan In-Depth副編集長)
- <集団的自衛権行使の賛否>首都圏大学生500人に調査「よくわからない」が4割という実態
- <セクハラやじ報道の論点はズレている>少子化問題の原因を個々の女性に押し付けている固定観念が問題