[古森義久]<朝日新聞・慰安婦問題報道の虚構>誤報を認めながら、なお日本側の「非」を対外的に発信し続ける犯罪性
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
朝日新聞が8月5日と6日の紙面で長年の慰安婦問題報道の虚構をついに認めた。
いわゆる従軍慰安婦の問題が日本にとって国際的な「ぬれ衣」となってきたことや、そんな事態を引き起こした朝日新聞の誤報の責任ついては、私もこの連載コラムの6月30日分で「<慰安婦問題>河野談話と朝日新聞の罪-なぜ事実ではない『強制連行』が世界中で広まったのか?」というタイトルの一文で取り上げた。
その元凶の朝日新聞が2日にわたり、ついに長文の訂正記事を出したのだ。朝日新聞が慰安婦問題についての虚構の報道を始めたのが1982年だったから、32年後にやっとそのミスを認めたのである。世界のジャーナリズムの歴史でも珍しい大誤報の自認であり、同時に日本の国家や国民の名誉を長年、不当に貶めてきた日本の戦後史上でも珍しい「犯罪」の露呈なのだ。思えば、恐ろしいことではないか。
しかし朝日新聞の今回の訂正は慰安婦問題の本質にかかわる報道の間違いを認め、記事の取り消しまでを明白にしながら、なお全体として朝日新聞としての慰安婦問題への意識は変わらない、と断言する。
しかもこの訂正記事も冒頭では「慰安婦問題の本質 直視を」と他者に指示を与えるような表現を主見出しとして、自紙の重大な虚報の責任を認めない姿勢をみせる。朝日新聞としての日本国民への謝罪も反省もないのである。この点では私はむしろ「朝日新聞問題の本質 直視を」と訴えたい。
だがこの長文の朝日新聞の記事をよく読むと、年来の報道内容の主要点の虚構を虚構として認めている。ただ一般の目にそのように映らないために、空疎なレトリックを気の毒なほど多々、使って、実態を糊塗しているのだ。
この記事で朝日新聞がはっきり認めたのは、
- 慰安婦の「軍や官憲による強制連行」説の主要根拠となった吉田清治証言はまったくの虚偽だった
- 慰安婦の強制連行を裏づける材料とされた「女子挺身隊」は慰安婦とは無関係であり、その混同や誤用は虚偽だった
- 「軍による女性の強制連行」説にはなんの証拠もない
という諸点だった。いずれもその「虚偽」や「証拠もない」ことを朝日新聞は事実として長年、報道し、全世界に「日本軍の20万の性的奴隷」という虚構を広めるという結果を招いたのである。
だがその朝日新聞はいまも「強制」という言葉の意味をねじ曲げ、慰安婦問題での日本側の「非」をなお対外的に発信し続けるのだ。こうした朝日新聞の本質にはその被害者となる日本国民のオールジャパンとしての責任追及が必要であろう。
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