[古森義久]<河野談話が慰安婦強制連行の証明?>朝日新聞の虚報「取り消し」もアメリカには伝わっていない実態
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
アメリカの首都ワシントンで8月中旬、日本と韓国の歴史問題に関する大規模な討論会が開かれ、駐米韓国大使をはじめとする韓国代表たちが日本をさんざんに非難した。
その非難は慰安婦問題での「日本軍による女性たちの強制連行」が主体だった。朝日新聞の強制連行虚報の取り消しはアメリカにも韓国にも通じていないことがいやというほど明示された。
ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」は8月19日に「歴史が北東アジアの将来の前進を阻む 」と題する討論シンポジウムを開いた。三部から成る構成で、主題は日本と韓国の間の歴史をめぐる摩擦がアメリカのアジア政策にどう影響するか、だった。
この場ではまずアメリカ駐在韓国大使の安豪栄氏が基調演説で日韓関係がうまくいかず、首脳会談が開かれないのは日本側が韓国側の前提条件に応じる「常識」がないからだとして、その実例として慰安婦問題をあげ、「日本軍による女性の強制連行には証拠があるのに、それを認めないのはおかしい」と日本を糾弾した。
安大使は「朝日新聞が『日本軍による組織的な強制連行』説を虚構だったとして否定した」という日本人記者からの指摘も、まったく無視する形で「河野談話一つをみても、その種の強制連行を認めている 」と述べ、河野談話が日本軍による強制連行を証明したという解釈を明らかにした。
続いて在米の韓国人学者の李晟允氏(タフト大学教授)も日本側の歴史認識が日韓関係の真の正常化を阻んでいるとして、「日本軍の性的奴隷だった慰安婦の強制連行を否定するのは無責任な修正主義だ 」と述べた。李氏は 「その強制連行を否定するのは日本政府だけだろう 」とも述べて、朝日新聞の虚報取り消しを無視する態度を明白にした。
この討論会ではアメリカ側の専門家の多くからも、「日本軍が女性を組織的に強制連行して慰安婦としたことは否定できない」という意見が表明された。討論全体の流れは韓国代表がアメリカ側の一部関係者を引き込んで、慰安婦問題での「強制連行」をもっぱら繰り返して糾弾する結果となり、朝日新聞の取り消しがアメリカ側には伝わっていない実態を印象づけた。
同討論会では日本側の現在の状況を説明する代表が含まれておらず、聴衆の間から「日本の駐米大使は招かれていないのか」という批判的な質問も出た。主催者側の答えは「日本大使は招いていない」ということだったが、日本政府のこの種の歴史問題での対米発信、対外発信の欠落が明白となった。
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