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.国際  投稿日:2014/10/28

[宮家邦彦]【日米でエネルギー戦略構築せよ】~「力による現状変更」が起 きる前に専門知識集大成が必要~


宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(10月27日-11月2日)

執筆記事プロフィールblogWeb

今週は27日から北朝鮮に派遣される日本政府代表団と、29日に習近平国家主席との会談も予定される福田元首相の訪中が焦点だろう。同じく29日には日韓の防衛次官級会談も予定されている。11月10-11日に迫った北京APEC首脳会議での日中、日韓「首脳会談」に向けて動きが急になっている。決して焦る必要はないのだが。

ところが、これらはあくまで東アジア的現象。先週駆け足でワシントンに出張してきたが、現地での関心はエボラ熱、中間選挙、ISIS、高校での銃の乱射ばかりで、香港の民主化デモすらもうニュースではなくなりつつあった。それにしても、北米と東アジアと欧州に加え、中東までフォローするのはかなりの重労働である。

27日にある有力シンクタンクが主催する「エネルギーに関する日米協力」の可能性を考えるシンポジウムで喋る機会があった。新民族主義の時代に入り、エネルギーをめぐって「力による現状変更」が起きる可能性は高まっている。だが「エネルギー地政学」などというマジックワードに惑わされてはならないことも事実だろう。

そもそも意味が良く分からない。狭義の地政学(どこで石油・天然ガスが生産されるか等々)を語り始めれば、結局は森羅万象が関わってくるので、単純な答えは望めない。だから、エネルギーだけを取り出して議論しても出口はない。結局エネルギーは国家の大戦略の一部、しかもその重要な手段のひとつでしかないのだから。

エネルギーに関する日米間協力には大賛成だが、一体誰がこうした大戦略の一部であるエネルギー戦略を作るのか。今、日米両国に必要なのは、国際政治学、中東地域研究、アジア地域研究、エネルギー経済学、石油・天然ガス市場知識など様々な分野の専門知識を集大成して戦略を構築する地道な努力ではなかろうか。

これが出来る人は少なくとも日本にいないし、米国でも出会ったことがない。原因はこれまでの学会、産業界、政府組織、官僚組織の「蛸壺的」専門分野縦割り体制の弊害なのだが、これも日本だけの問題ではない。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 

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