[宮家邦彦]<目的は何?>駐ウクライナ・ロシア大使、ウクライナ第二代大統領、欧州安全保障協力機構が親ロシア勢力と会談[外交・安保カレンダー(2014年8月4-10日)]
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
ヨーロッパは相変わらずバカンスの真っ最中。今週の大きな動きは、駐ウクライナ・ロシア大使、ウクライナ第二代大統領、OSCE(欧州安全保障協力機構)の代表がウクライナの親ロシア勢力と会うことぐらい。
申し訳ないが、この四者が会って一体何をするのだろう?逆に言えば、今はこれぐらいしかやることがないということか。
確かに、8月1日に発効したEUによる対ロシア経済制裁は中身があった。ロシア最大の貯蓄銀行、国営ガス大手、ガスプロム系銀行、大手VTB銀行、ロシア開発銀行と農業銀行に対し、EU域内での資金調達を禁止するという。昨年は域内でロシア公的金融機関発行債券の約半分、755億ユーロ(約1兆円)が取引されたそうだ。
こうなれば、日本政府も追加制裁をせざるを得ない。「EU-α」の制裁は不可避だろうが、いずれにせよ、こうした欧米の追加制裁でプーチンが根を上げるとは到底思えない。彼はこうした西側の圧力を追い風にロシア民族主義を一層煽って生き延びようとするだろう。古今東西、経済制裁で倒れた政権などあまり思い付かない。
8月8日に、英製薬大手、GSK幹部贈賄事件関連の裁判が上海で開かれる。今回の被告人は同贈賄事件を調査していた英国人と中国系米国人の夫妻で、容疑は「市民の私的情報を違法に取得したこと」だそうだ。こんな容疑では注意のしようもないが、何か中国側にとって都合の悪い情報でも集めたのだろうか。当然、冤罪の可能性がある。
英米両政府も裁判に強い関心を持っているらしい。だからかどうかは知らないが、同裁判は中国では珍しく公開されるという。件の贈賄事件では被疑者の英国人現地法人社長と中国人の愛人とのいかがわしいビデオが流出したそうだ。中国では典型的なスキャンダルだが、外国人と愛人のビデオとはちょっと驚いた。何とも情けない。
そこまでではないが、最近外国人対するビザ発給が遅れるなど、中国に住む非中国人の受難が続いていると聞く。こういう人々こそ中国の友人だと思うのだが、関係当局はその逆のことを考えるのだろうか。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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