[宮家邦彦]【カスピ海は海か湖か?で激論】~沿岸諸国首脳会議、ロシアとイランが綱引き~宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月29日-10月5日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週の筆者の注目はカスピ海沿岸諸国首脳会議だ。29日からカスピ海北部のロシア港湾都市アストラハンで開かれる。会議にはロシア、アゼルバイジャン、イラン、トルクメニスタン、カザフスタン各国の大統領が参加する。
この機会に是非ともカスピ海の地図を見てほしい。世界最大の湖だが塩湖であり、面積はほぼ日本の大きさ。石油・天然ガス、漁業などの資源が豊富だ。グルジアは黒海には面しているが、ウズベキスタンと同様、カスピ海の沿岸国ではない。
過去10年間、カスピ海沿岸国家間の領海確定協議は難航した。焦点は、カスピ海は「海か、湖か」なのだそうだ。海であれば、外国船の通過を許す国際条約が有効となり、逆に、湖であればその義務はない。どちらでもよい、という訳にはいかないようだ。
鉱物資源についても、海であれば領海や排他的経済水域が設定されるので資源の多い北部ロシアに有利となり、逆に、湖なら海洋法が適用されないため、資源の少ない南部イランに有利となるらしい。
これまでカスピ海分割では、2国間の中間線を境界と主張するロシア等旧ソ連4カ国と、均等分割を主張するイランとの間で鋭く対立してきたが、どうやら最近になってウクライナ問題で国際的に孤立しつつあるロシアが動き始めたようだ。
今回の首脳会議では、カスピ海の境界線画定や地域協力に関する合意事項を盛り込んだ政治声明を採択するという。焦点の領有権問題では、各国の沿岸25カイリに帯状の水域を設け、「国家主権」と「排他的漁業権」を行使できると定めるらしい。
しかし焦点の中央部分の水域については引き続き共同管理とするらしいから、根本的な解決ではなさそうだ。それにしても、ロシアは広いものだと改めて実感する。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。http://www.canon-igs.org/blog/
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