[宮家邦彦]【日中首脳会談の次は日韓?】~論理的に動くか、朴大統領~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー(11月10日-16日)
当初今週の焦点は北京APEC会合で日中首脳会談が開かれるか否かだった。ところが、11月7日に日中「四点合意」が発表されたこともあり、形式や時間はともかく、首脳会談(またはそれに近いもの)が開かれることはほぼ当然視されるようになった。
しかし、この「四点合意」なるもの、実態はかなり曲者である。何しろテキストだけで、日本外務省作成の日英版と中国外務省作成の中英版の四種類もあるからだ。しかも、それぞれが時に微妙に、時には大幅に、異なるのだから始末が悪い。
だからだろうか、この日中「四点合意」に日中共通の解釈は存在しない。恐らく、そんなものは存在すべきでないかもしれない。双方が勝手に自らの解釈を表明しているからこそ、こうした「合意」が辛うじて存在し得るのだろう。
そもそも、外交上の了解や合意には一定の「曖昧さ」が付き物だ。まして、日中関係のような場合には、常に「戦略的曖昧さ」が必要となる。この点を忘れて、これら四種類のテキストの共通点と相違点だけを論じても、あまり生産的だとは思わない。
「戦略的曖昧さ」は国家間の合意・了解に生命を与え、その長寿を保証する重要な要素だ。今回の日中「合意」は、過去数年の対立と摩擦を乗り越え、日中を新しい均衡点へ導く重要な一里塚となり得るものであり、またそうでなければならない。
北京でのイベントが出揃ったところで、誰もが注目するのは日韓首脳会談開催の可能性だろう。日本の一部には「日中首脳会談が実現すれば、韓国は必ず着いて来る」と信じる向きがある。そう考えるのは自由だが、果たしてそうなるだろうか。
普通の韓国高官ならここで「万事休す」だろうが、朴大統領は違う。詳細には入らないが、彼女の発想はあらゆる意味で特殊である可能性がある。いずれにせよ、韓国が論理的に行動するとすれば、ネピドかブリスベンで日韓首脳会談があっても全くおかしくないのだが・・・・。
これ以上は言うまい。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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