[宮家邦彦]【外交ミニマム・コンセンサスを作れ】~中韓の対日攻勢が続く2015年~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー(12月29日-2015年1月4日)
2015年も外交・安保分野では様々な事件が起きるだろうが、引き続きお付き合い願いたい。今後一年はアベノミクスと日本外交にとって正念場となる。日本経済再生の議論はエコノミストや専門家にお任せし、今週は2015年の外交・安保を展望しつつ、いわゆる戦争関連「記念日」について考えてみたい。
細かいものを挙げ始めればキリがないが、まず6月22日に日韓基本条約調印50周年がある。8月15日に第二次世界大戦終結後70周年が、9月3日には抗日戦争勝利70周年記念日がやって来る。この他にも中国では、例えば7月7日の盧溝橋事件、12月3日のいわゆる南京事件など数多くの戦争関連記念日がある。
2014年11月の日中首脳会談で一段落したとはいえ、歴史・領土問題をめぐる中韓の対日攻勢は今後も続くだろう。残念ながら、これが東アジアの現実だ。2015年に日本人と日本国家は、好むと好まざるとに関わらず、過去70年間の生き様を問われことになるだろう。されば、日本はこの一年如何に対応すべきだろうか。
この点については、今も日本国民の間にコンセンサスがない。それどころか、意見の相違はむしろ最近広がっているようにすら思える。外交的に見れば、現状は決して好ましくない。他方、最近の関係隣国等の動きに鑑みれば、中韓とは勿論のこと、日本国内ですら、意見の相違を完全に埋めることが益々難しくなりつつあることも事実だ。
民主主義には言論の自由がある。日本国内の意見の相違もある程度は仕方がない。問題は国内の様々な極論を排して、日本国民の「ミニマム・コンセンサス」を作ることだ。最大多数の日本人が最低限合意できる立場で一致し、それを意見の異なる関係国と議論する際に一貫して表明し続ける、これこそが重要ではなかろうか。
この「ミニマム・コンセンサス」は、日本の生き様、すなわち不戦の誓いや自由、民主、人権、人道、法の支配といった普遍的価値に基づくものでなければならない。日本国民がこの「ミニマム・コンセンサス」で一致できれば、悪意ある外国から足元を見られたり、揚げ足を取られることもなくなり、日本の立場はむしろ強化されるだろう。
今後一年の日本外交は、こうした点について国会での議論が深まるか否かにかかっている。ちなみに、2015年11月20日はMicrosoft Windows発売開始30周年だそうだ。全ての事象が急速に変化しつつあるこのIT時代にこそ、国民が最低限合意できる一貫した立場を持つことが望ましいと思うのだが・・・。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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