[安倍宏行]ココロのバリアフリー〜温泉施設のガス爆発事故から
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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2007年に東京都港区西麻布で起きた温泉施設のガス爆発事故。記憶に新しい人もいよう。その事故で大けがをし、車いす生活を余儀なくされた池田君江さんが立ち上げたのが「ココロのバリアフリー計画」だ。車いすの人、妊婦、お年寄りなどが、安心して入る事が出来るお店を増やし、紹介していこうという活動だ。17日、その活動の主体をNPO法人に変えたので、そのキックオフパーティーがあったので出席してきた。
(池田夫妻、貫社長と共に)
池田さんの活動にはお知り合いになってからずっと注目してきたし、車いすの方がレストランへの入店を拒否されて、店名をネット上に晒し、問題となった時も、みんなが「ココロのバリアフリー」を持てば、こんなにギスギスしないのに、と呟いた事もあった。
今回、池田さんの活動をグループ全体に広めている、飲食業社長に話を聞く事が出来た。「串カツ田中」チェーンを経営する株式会社ノート代表取締役・貫啓二さんだ。
Q ◉ 最初どんな感じだったんですか?
A ◉「最初、池田さんはご主人と娘さんといらっしゃったんです。特に事前に電話とかなく来て、入りたいけど無理だろうな~、て感じでしたね。もうネガティブ・オーラゼロだったんです。文句言うたろ、って感じじゃなかった。違和感ゼロでした。」
Q ◉ 断ることはしなかった?
A ◉「断る理由なんてないでしょ。お客様来たー!って。求めてきてくれてるわけでしょ?」
Q ◉ グループでバリアフリーを徹底してると?
A ◉「いや、出来るだけ徹底しよう、と。完全じゃないとダメって事になると辛くなるじゃないですか。徹底はしてないですよ。ただ最大限の努力はやります。100%は無理よ。でも、無しにしちゃうよりいいじゃないですか。(フランチャイズの)加盟契約にも(項目が)入ってるし、マニュアルにも入ってる。」
Q ◉ そうした活動で社員も変わりましたか?
A ◉「モチベが上がりました。社会の役に立ってるという気持ちを従業員は感じてますね。最後は、貢献、じゃないですか。サラリーマン、給料だけのやつは続かないですよ。バリアフリーが役にたなない事は無いんです。売り上げだけじゃない、喜び、満足度なんです。役に立っているとスタッフも嬉しそうなんです。自信満々な顔してるもん。」
この社長の明るさ、ポジティブさも、「ココロのバリアフリー」がグループ全体に広がって行く大きな理由の一つだな、と思った。
そして、来賓のあいさつが続き、とある人たちが紹介された時、「えっ?」と思った。
なんと、加害者と言ってもよい、温泉施設を運営していた会社の社長が呼ばれたのだ。司会をしているのは池田さんのご主人、池田克明さん。
株式会社ユニマット不動産の菅原啓之社長と、株式会社ユニマットダイニングの稲塚晃裕常務だ。菅原氏に聞くと、池田さんがこうした活動をしている事は存じ上げていたが、実際にこうした場に呼ばれる事は初めてだという事だった。
稲塚氏は、グループ傘下のフレッシュネスバーガー直営20店舗でバリアフリーに取り組んでいる事、イタリアンレストランチェーン20店舗も同様である事を説明、他にも協力店を増やしていく計画で、グループ全体でも(バリアフリー)の考えを共有していくことを約束した。
池田夫妻からは
「あの事故があって、今こうして多くの人と知り合い、支えられていると思える。」
という言葉があり、歴史的和解といってもいい、この瞬間に立ち会った私達の胸を打った。
まだまだ、バリアフリーは道半ば。多くの駅にはエスカレーターすらない。重い荷物をひっぱり上げる旅行者、足を引きずるようにして上るお年寄り・・・ましていわんや車いすの方が駅を使うのは至難の業だ。
2020年オリンピックが来る前に、都心のバリアフリー化は無論の事、全国に広がってもらいたい。
そして、それを支えるのが私達一人一人の「ココロのバリアフリー」なのだということを忘れないようにしたい。
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