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.政治  投稿日:2015/1/19

[西田亮介]【民主党は革新的提案型政党になれ】~寛容な社会を擁護し、経済成長を肯定せよ~


西田亮介(立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授)

執筆記事プロフィールWebTwitterFacebook

 

民主党の代表選が行われ、岡田克也氏が勝利した。1度目の投票ではどの候補も過半数に達することができず、細野氏、岡田氏が、民主党国会議員らによる決選投票となった結果、長妻氏を支持したグループが岡田氏支持に回った影響が大きい。

これは、投票権を持たない外部から眺めてみると、なかなか難しい決断のように思える。長く民主党の顔役として、要職を務めてきた同氏だが、実績豊富と見ることができると同時に、目新しさに欠く。また多くの一般有権者に強い負の印象を持たれている2009年から2012年にかけての民主党政権下で執行部を務めた印象も根強く残っていると思われる。

4月には統一地方選挙が控えているが、果たして有権者の共感を集めることができるかどうか懸念が残る。今回の代表選を左右するとも言われていた、そして統一地方選の当事者でもあり、直接選挙を支えることになるはずの、換言すれば、もっとも関心が高くてもおかしくないはずの党員・サポーターの投票率は、これまでで2番目に低かった。

党員・サポーター投票率46・2%…民主代表選 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150118-OYT1T50032.html

新しい役員人事は本稿執筆時点では、まだ発表されていないが、統一地方選を控え、選挙の顔を選ぶという意味において、もっとも関心が高くても良いはずの党員・サポーターの投票率が低かった理由についてはよく熟慮する必要があるだろう。

さて代表選が終わった民主党に期待したいのは、寛容な社会を擁護し、経済成長を肯定する、革新的な提案型政党として旗幟鮮明にできるかという点である。代表選以前にも書いたが、誰が代表になっても、これらに尽きる。付け足しておくなら、現実的な安全保障の道筋だろうか。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20150107-00042066/

http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20150114-00042237/

随分、過剰なリクエストのようにも見えるかもしれない。だが与党の主張と実績、他党の動向や勢力の変化によって、民主党が意図せずとも、その相対的なポジショニングが変化している。野党のなかでは特徴が見えにくくなり、リベラルな主張もたとえば若年世代の就労支援などのように与党が着々と実績にしている分野もある。このままでは民主党は埋没しかねない。

特徴を際立てつつ、一般有権者の共感と支持を獲得する必要があるだろう。それにあたって、従来の理念と政策、ガバナンスについて、成果と失敗を腑分けし、迅速に、そして明確に提示してほしい。

それを現在改めてリベラルと呼ぶかどうかはさておくとして、寛容な社会の擁護は、昨今の風潮のなかで、また過去の「新しい公共」等のNPOの支援や寄付税制の改革も含め、重要な旗印になるのではないか。

地方分権もまた民主党がかねてから主張してきた分野である。地方創生が、統一地方選を踏まえて、構造改革を伴わない大盤振る舞いが、問題の根本解決に繋がらないことなど論点は多数あるはずだ。

政治の透明性の改善も、かつて開かれたオープンガバメントを主張した経緯がある。昨今のオープンデータの議論はいつの間にか経済成長中心の議論となったが、民主党はこの点、より踏み込もうとしていたはずだ。「クローズ」と「オープン」も対立軸の提示としてわかりやすい。

他方で、民主党の経済政策と経済観は、多くの有権者の認識とずれている可能性が高い。各紙の世論調査を見ても、年金・介護など生活に直結する主題と、雇用・景気の主題は強い関心を持たれている。「失われた20年」で有権者は経済成長の必要性を身に染みて感じたはずだ。脱成長などといった曖昧な文言ではなく、経済成長に資する政策を提示することは支持を回復することはできないだろう。

ここまでいささか期待過剰気味に筆を走らせてきたが、最後は、改めて先のエントリと同じ文言で締め括りたい。民主党が、そして民主党の次の代表が、経済成長を肯定し、革新的で、寛容な政党に変貌できる道筋を具体的に提示できるなら、もう一度、その可能性を見てみたいと思う一般有権者は意外と存在するのではないか。少なくとも、筆者はその1人である。

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