[大原ケイ]【オバマ、「テロに立ち向かう」】~一般教書演説:中産階級支援も~
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
28日に行われた一般教書演説でオバマ大統領は、ブッシュ政権下で起こったリーマン・ショックの影響から立ち直ったアメリカ経済の姿を訴え、さらなる発展のための政策づくりを呼びかけた。そしてこのまま所得格差が広がるのを傍観しているわけにはいかないと、まずは中産階級を応援する提案がなされた。
「シャルリ・エブド」襲撃テロ事件を受けた発言としては、オバマ大統領は、中東の脅威を煽る結果になるだけの戦争を続けるのではなく、新たなテロに立ち向かうために国力を結集し、未来の世代のために地球の環境と安全を守っていこうと訴えた。日本と異なり、やろうと思えば中東の安い原油に頼らずとも、石油、天然ガス、風力発電など、国産資源でエネルギーが賄えるのがアメリカの強みだろう。
昨年11月の中間選挙により、共和党が下院だけでなく、上院でも過半数を占めたが、オバマは「レイムダック」どころか、「もう2回も大統領選挙に勝ったのだから、後は好きなようにやらせてもらう」と堂々と一念を貫く姿勢を見せた。
中産階級を支持する、というのは、つまり所得格差がこれ以上広がるのを避け、富裕層に対して増税するだけにとどまらない。幼児保育から大学までの教育、健康保険、マイホーム、年金など、すべてのステージに渡り、中産階級の負担を軽減することだと述べた。その一環として、最低賃金額を上げ、男女間の給料格差をなくし、有給病欠や保育休暇を義務付ける法案を提出するよう、議会に要請した。
中産階級の支援といえば、共和党と、彼らのバックについている超富裕層が声高に反対しそうな格差是正への方針も語られた。つまり、脱税や海外のペーパーカンパニーに資金を移せないよう、税法の「抜け穴」を塞ごうというわけだ。アメリカでは既にトマ・ピケティ著「21世紀の資本」についての議論がなされ、アメリカでの格差があまり広がっていないように見えるひとつの原因として、こうした行方不明の海外流出資本が相当額あるとされている。
外交面では、アフガニスタン撤退、キューバとの国交回復などに加えて、イランの核問題にも取り組む予定があることを披露した。
教育改革においても、誰もが最低2年は学費無料で地元のコミュニティー・カレッジに通えるようにするという大胆な案も。そして学力向上のためにもネット環境の整備が必要だとし、教育施設の高速ネット回線施設も呼びかけた。
特に、ソニー・ピクチャーズへのハッカー攻撃に代表されるサイバーテロについても、銃や爆弾を使ったテロと同じように厳しく対応する決意を語った。「警官対デモ隊、赤い州対青い州、市民対非合法移民で、仲間割れしている時ではない。アメリカは人種や宗教を乗り越えて、同じ価値観を共有する家族として、苦難を乗り越え、今こそ協力して未来への礎を築いていこう」と締めくくった。