[安倍宏行]【サンフランシスコ“ドリームフォース2013”レポート】クラウドの雄、サンフランシスコ市内を占拠⁈
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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何やら物騒なタイトルだが、サンフランシスコに本社を置く、世界一の法人向けクラウドサービス会社、株式会社セールスフォース・ドットコムの一大ソフトウェア展示会、「ドリームフォース2013」が今、開催真っ只中なのだ。
何しろ、目抜き通りの一本を18日から23日迄封鎖し、会場の一部にしてしまうくらいの大規模なイベントだ。お陰で市内の交通は大混雑。街を歩いている4人に1人は同イベントの入場用IDカードを首から下げているのでは、と思う程だ。それでも市民からは文句も出てないようだ。それもそのはず、世界中から350の取引先企業がブースを設置、その従業員だけでも千数百名、それに加えて数百名に上ろうかというジャーナリストや、数千名に登る運営スタッフを足したら10,000人は下らない。彼らが開催期間中に市に落とすお金は計り知れなだろう。
ところで、セールスフォース・ドットコムと言っても、聞いたことのない人がほとんどだろう。しかし、インターネットの世界で知らない人はない位、急成長中の企業である。その若き総帥、マーク・ベニオフ氏率いるセールスフォース・ドットコムは、3年連続で米フォーブス誌に「世界で最も革新的な企業」ランキング1位に選出されているほどだ。2013年の19日9時から始まった巨漢のベニオフ氏のプレゼンテーションを聞こうと会場を埋め尽くした人はなんと14,000人!
今年のテーマは「Internet of Customers」即ち、これからは、「顧客のインターネット」の時代になる、というスローガンだ。ソーシャル、モバイル、クラウドを活用する事で、全ての企業は、アプリ、従業員、パートナー、製品、デバイスと顧客を繋ぐことができるようになる、とベニオフ氏は強調した。
2020年までに500億に上るモノがインターネットにつながることになるとの予測があるにもかかわらず、未だ60%の企業が顧客とつながる術を知らない。そのためのプラットホームを提供するのが同社ということである。そのため、同社は、モバイル対応のクラウド型カスタマープラットホームを開発、セールスフォース1と名付けた。今後の売り上げに期待がかかる。
一方で、この企業を知らしめているのは、そのフィランソロピー活動だ。就業時間、製品、株式の1%を、社会貢献活動に使うおう、という「1/1/1」運動である。
財団はこれまでに53,000時間を社会奉仕活動に使い、530億ドルの寄付を行い、20,000のNPOを援助して来た。
このセールスフォース・ドットコムの活動は他のIT企業の手本になっているという。企業が大きくなりその収益後大きくなればなるほど、社会への還元も大きくなる、というこれまでの欧米型資本主義とは一線を隠した、いわば公益資本主義の性格を帯びているところが新しい。
イベント会期中には、米Yahoo!のCEO、メリッサ・メイヤー氏や、Facebook COO シェリル・サンドバーグ氏ら、早々たるゲストも次々登壇する。
CEOマーク・ベニオフ氏が自ら2時間以上のプレゼンテーションのホストを務め、ゲストとのトークを繰り広げ、世界中から来た記者と質疑応答をこなす。
とにかくスケールがでかいし、ダイナミズムとエネルギーは桁外れだ。日本の経営者も一度このイベントを見に来るといい。成長の源がどこにあるのか、一目瞭然だろう。
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