[宮家邦彦]【邦人保護と危機管理の議論、国会で深めよ】〜新たなテロ事件を誘発させない為に〜
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年2月9-15日)」
「イスラム国」人質事件の悲劇から一週間が経った。筆者の最大の関心は日本がこの事件から如何なる教訓を学ぶかだ。検証委員会が立ち上がり、対外諜報機関についての議論も始まりそうだ。「安倍責任」でも「自己責任」でもない、「邦人保護」、「危機管理」のための具体的措置とその基本的人権との関係などを国会で議論すべきだ。
また、多くの世論調査によれば国民の過半数は政府の対応は概ね妥当と見ている。それはそれとして、議論がそこで終わってしまえば、日本の危機管理は進化しないだろう。他方、上手くいったことも、失敗に近かったことも、全て公開すれば、今後第二、第三の人質・テロ事件を誘発しかねない。これが検証作業の難しい所だ。
〇欧州・ロシア
9日に米独首脳会談が11日にユーロ圏の財務大臣がギリシャ問題を議論した後、12日にはEUの首脳会議がブラッセルで開かれる。同日、欧州議会は対ロシア経済制裁について議論する予定だ。更に、13日にはドレスデンで連合国のドレスデン爆撃70周年式典が開かれる。これからこの種の70周年式典が目白押しだろう。
〇アメリカ両大陸
10日にコロンビア政府と反政府革命軍が和平交渉をキューバのハバナで行う。CNNによれば この左翼ゲリラ組織・コロンビア革命軍は和平交渉の場に同国代表でミス・ユニバースとなった女性を招くと表明したそうだ。何が何だかよく判らないが、何とも大らかな人々ではないか。
〇東アジア・大洋州
9日にタイの暫定首相が訪日し、ミャンマー、タイ、カンボジアを結ぶ鉄道について議論する。同じく9日から米国の国務副長官が韓国、中国、日本を訪問する。また、11日から13日まで米韓合同軍事演習が行われる予定だ。このところ、韓国や中国が静か過ぎるのがやや気になる。アジアでも戦後70周年式典があるだろうに・・・・。
〇インド亜大陸
9日からイスラエルの経済相がインドを訪問する。同じく9日から11日までシンガポール大統領が訪印する。一方、12日には中国の外相がパキスタンを訪問する。
〇中東・アフリカ
8-9日にG20の財務相会合がイスタンブールで開かれる。7-12日には英国の皇太子がサウジ、ヨルダン、クウェート、カタル、UAEを訪問する。9日にはロシア大統領がエジプトを訪問する。10日にはパレスチナの大統領が欧州で初めてパレスチナを国家承認したスエーデンを訪問する。
CNN等によれば、近くイラク軍がモスル奪還作戦を敢行する可能性があるという。この軍事作戦が成功するためには、現地スンニー派部族長への粘り強い働き掛けと巨額の現金が必要なのだが、果たして2006-7年の「サージ」を繰り返せるか。お手並み拝見である。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。