[宮家邦彦]【前代未聞、米・イスラエル関係急速に悪化】~首脳会談も開かれず~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年3月2-8日)」
今週は長年米国の対中東政策を見てきた者にとって信じ難い現象が起きている。総選挙直前のイスラエル首相が共和党下院議長の招待に応じて訪米し議会演説を行うが、オバマ大統領はこれに反発して首脳会談を行われないのだから。
確かに選挙直前の訪米はタブーかもしれないが、イスラエルのリクードと米国の共和党保守派は共同してオバマ・ホワイトハウス主導の対イラン交渉を潰そうとしているのだ。こんな高度な芸当を堂々とやってのけるのはネタニヤフぐらいだろう。
〇アメリカ両大陸
冒頭でも述べたが、これほど冷え切った米・イスラエル関係は70年代以降記憶がない。イスラエルが米国内政を弄んできたのは事実だが、米国の対イラン政策に対するネタニヤフ首相の懸念も理解できる。米イスラエル関係は新時代に入ったのか。
米国の民主党のイスラエル労働党寄り・リクード嫌いの傾向は何も今に始まったことではない。このままネタニヤフをコケにしてヘルツェルが勝てばよいが、ネタニヤフが再選されたらオバマはどうするつもりか。米イスラエル関係は滅茶苦茶になるだろう。ちなみに、気の早い話だが、米国では8日から夏時間に移行するそうだ。
〇欧州・ロシア
3日には再び英仏露・ウクライナ外相がパリで会合を持つが、恐らく「会議のための会議」に終わるだろう。先週ロシアでは有力野党指導者が暗殺されたが、今更ながらプーチンの恐ろしさを感じる。モスクワはロシア革命前に戻りつつあるのだろうか。
〇東アジア・大洋州
1-4日にウクライナ外相が訪日する。韓国大統領が1-9日に湾岸地域のクウェイト、サウジ、UAEを訪問する頃、米韓両軍は2-13日に2万人弱を動員して合同軍事訓練Key Resolveを実施する。北朝鮮が軍事的挑発を再び行わないと良いのだが・・・。
〇インド亜大陸
今週はインド外相が2日にバングラディシュ、3日にパキスタン、4日にアフガニスタンを訪問する。これら三国はいずれもイスラム諸国だが、最近のISを含む中東情勢の悪化と何か関係あるのだろうか。気になるところだ。
〇中東・アフリカ
2月28日から3月2日までトルコ大統領がサウジアラビアを訪問する。新国王が即位して初めての首脳会談となる。3日にはトルクメン大統領がトルコを訪問する。ISの軍事的台頭で中東地域の混乱が続く中、エルドガンは一体何を狙っているのだろう。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。