[宮家邦彦]【ギリシャ、戦時賠償請求でドイツ挑発】~独は解決済みとの立場~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年4月6-12日)」
今週注目するのはギリシャの対ドイツ戦時賠償請求である。事の起こりは、2月10日にギリシャ新政権が第二次大戦中のナチスによるギリシャ占領で被った損害の賠償としてドイツに1620億ユーロ(約22兆円)を請求したことだった。その後も、ギリシャは、ドイツに戦時賠償責任を認めたギリシャ最高裁の2000年の判決を執行する、ギリシャ国内のドイツ資産を没収する用意がある、などとドイツを挑発するかのように要求をエスカレートさせている。
ギリシャ新政府によれば、ドイツは1960年の協定でギリシャに1億1500万マルク(当時のレートで約97億7500万円)を支払ったが、それはギリシャ側の被害を完全に賠償するものではない、ということらしい。
これに対し、ドイツ政府は、東西両ドイツが旧連合国の米英仏ソと1990年に結んだ「ドイツ最終規定条約」により賠償問題は「法律的にも政治的にも解決済み」との立場を崩していない。それにしても、これって、どこかで聞いたような話ではないか。
〇欧州・ロシア
そのギリシャ新首相が8日に訪露する。プーチン大統領に天然ガス価格の値引きやギリシャ農産物の禁輸免除、財政支援などを求めるらしい。対独賠償請求といい、対露接近といい、ギリシャのやり方は掟破りではないか。ギリシャをユーロ圏に入れたのがそもそもの間違いだったのでは?
〇アメリカ両大陸
今週はあまり目立った動きはない。
〇東アジア・大洋州
6-10日に米国防長官が日韓を訪問する。日本ではガイドライン、韓国ではミサイル防衛などが議題になるだろう。7-8日にはロシア首相がタイを訪問する。強かなロシアは、クーデター以降孤立感を深めるタイに接近するのだろうか。
7-12日には台湾の両岸関係担当者が訪中し、外国企業優遇税制廃止やAIIB参加問題が話し合われるという。台湾企業を非外国企業として扱えということか。日本では12日に統一地方選挙第一ラウンドの投票が行われる。
〇インド亜大陸
6日、ニューデリーで日本とインドの外務・防衛当局間で次官級対話(2+2)が開かれる。両国の海洋分野での協力強化が議論されるという。10年前に日印の2+2会合など一体誰が予想しただろうか。インド洋の戦略環境が変化しているのだろう。
インド首相が9-12日に訪仏、12-14日に訪独する。ドイツではハノーヴァー見本市に400社のインド企業と17の同国地方政府の代表が同行・参加するそうだ。一方、中国の習近平国家主席は10-11日にパキスタンを訪問する。
〇中東・アフリカ
そのパキスタンにサウジアラビアが対イエメン軍事介入に参加するよう求めている問題を6日パキスタン議会が審議する。一方、イランは8日に外相をパキスタンに派遣する。イランがイエメンのホーシー(シーア派)勢力を支援しているからだ。それにしても、このパキスタンの二股、三股外交、見事と言う他ない。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。