【民主化にはほど遠いミャンマー】~バングラデシュに数十万の難民~
久保田弘信(フォトジャーナリスト)
バングラデシュ南部の街Cox’s bazar(コックス・バザール)には世界一長いビーチが広がっている。その長さ120キロというから想像を絶する。
夕方になると地元の人達が夕日を眺めに来る観光スポットだ。
コックス・バザールの隣街テクナフからセントマーティン島へ観光船が出ている。あまり観光地らしい観光地がないバングラデシュにあってセントマーティン島は観光のメッカとなっている。その観光船がかつて日本の瀬戸内海で使われていた船だというのが面白い。船には現在も今治→←瀬戸の看板が残されている。
この観光船の対岸に見えるのがミャンマー。近海では漁も行われているが、船はバングラデシュの船ばかり。よく見れば、対岸のミャンマー領には監視塔や有刺鉄線を見る事ができる。
2012年6月14日。ミャンマーから1500人以上のロヒンギャ難民が隣国のバングラデシュに逃れて来た。バングラデシュ政府は「難民受け入れは国益にならない」(モニ外相)として1500人以上の難民を追い返した。この事件は世界中で大きなニュースとして扱われたが、日本のメディアはこの事件を殆ど報じなかった。
ロヒンギャ族は仏教国ミャンマーにあってイスラム教徒であるため迫害を受けていて、人権さえ与えられていない状態にある。現在バングラデシュには国連(UNHCR)の管轄下にある難民キャンプは二つしかなく、それぞれの人口は1万人前後。残り20万人以上の難民が登録を受けられず、非正規のキャンプに住んだり、街中に隠れ住んだりするような状態になっている。バングラデシュに不法入国してくるロヒンギャ難民は後を絶たず、その総数は30万人とも40万人とも言われている。
国連(UNHCR)が管轄する難民キャンプは二つだけになってしまったが、NGOが運営する難民キャンプがテクナフ近郊にある。このキャンプでは1万人以上のロヒンギャ難民の人達が生活をしている。長い人は20年以上難民キャンプくらしをしている。
ある難民が自国に帰れない理由を「泥棒が入って警察を呼んだら警察が根こそぎ家財道具を盗んで行ってしまった。そんな国に帰れる訳がない」と語った。バングラデシュでもロヒンギャ難民は正当な扱いを受けられず、難民キャンプでは学校を作る事が許されず、教育の機会さえ奪われている。
日本政府はミャンマーの民主化を認め、円借款を破棄した。実際はロヒンギャ問題を含めミャンマーは民主化にはまだまだ遠い状態にあると日本人は知るべきだろう。