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ビジネス,社会  投稿日:2015/5/28

[七尾藍佳]【「幸せに働きたい!」ワーママと企業の関係に変化】 〜「仕事か子供か」二者択一迫らぬ社会 4 〜

2015-05-27 16.43.37
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七尾藍佳 ジャーナリスト・国際メディアコンサルタント)

「七尾藍佳の“The Perspectives”」

プロフィール執筆記事

「中小ベンチャー企業にとって若手人材の不足は深刻な問題で、成長のボトルネックになっています。ママ人材の活用は、その解決策。出産を機に仕事を辞めたママ層には、高スキル人材が埋蔵されているだけなく、人間性の高い方も多く、ミッションさえ共有しておけば成果を出してくれるので、安心して仕事を任せられる。そういったママ人材にベストな成果を出してもらうためには、働きやすい環境を会社側が柔軟に提供することが必要になってきます」。

こう語るのは、インターネット・メディアに特化したコンテンツ制作会社、株式会社エスタイルの代表取締役社長、宮原智将さん(37)。社員・アルバイト15名に加え、登録ライター300名を抱えるエスタイルは、この5月に「働くママ」向けのスマートフォン・メディア『BRAVA』を立ち上げ、正社員である2名の編集者が青山の本社ではなく、世田谷にある保育サービス付きシェアオフィスを拠点として働いています。

<シェアオフィス代にかかるコストより、人材面のプラスが大きい>

ただ、ママ社員二人が子供の近くで働ける環境を提供するためには、通常であればかからないシェアオフィスのコストが発生します。プラスアルファの費用について、宮原社長はどう考えているのでしょうか。

「保育料は社員本人が負担し、シェアオフィスの施設使用料を会社が払っていますが、実はこのコストはそんなに負担ではありません。というのも、ママ向けのシェアオフィスが持つ強力なママ人脈が活用できたことで、採用コストを削減できたというメリットがあったからです。採用に関して、弊社は人材エージェントを活用したり、広告を打ったりと費用をかけていますが、ママ向けメディアの編集者募集をシェアオフィスのサイトや、SNSを通じて告知してもらったところ、ハイ・スキルの人材から複数の応募があり、手応えを感じています」。

実際に利用を開始してみると、働くママたちが集うシェアオフィスには、単純に「箱物」としての利用価値のみならず、ひとつの「メディア」としての機能もあることが判明したのです。事実、シェアオフィスの人脈を通じてつながった育児休業中のママたちの中には、ライターや編集者として活躍していた人も多く、現在『BRAVA』編集部と仕事の話を進めている人もいるとのことです。

<会社の売り上げと社員の幸せはトレードオフじゃない>

コンテンツ制作などの知的集約型産業であれば、本社以外に<ハブ>を持つことで、その地域の特性や人脈を活かすことが本業にプラスとなるケースも多く、エスタイル社が提供するママ社員の働き方は、他社も参考にできそうです。逆に、「分業型の大手企業」だと「ハブがただの独立島になってしまいかねない」ので、あまり向かないだろう、というのが宮原社長の意見。

一方で、宮原さんは、「編集」という仕事では「<感覚>の共有が重要なため、本社とハブにいる人間が密に連携を取り、定期的に会って話をするなどのコミュニケーション・コストをかける必要が出てくる」という、「ハブ」を設けることのデメリットも認識しています。つまり、ワーキング・マザーが気持ち良く会社に貢献できる体制を作れるか作れないかは、会社の規模や業種如何に関わらず、最終的には「経営者の姿勢」に左右されるのではないでしょうか。宮原社長の「働き方」への考えを聞いてみました。

「僕は<幸せに仕事ができる>ことを追求したいんです。会社の<売り上げ>と社員の<幸せ>はトレードオフの関係である必要は無い。<楽しかったら仕事では無い>というのが、今までの日本人の仕事観でした。今の中国がそういう高度経済成長期の頃の日本に似ていますね。北欧は、ひとあし先に1ヶ月バカンスを取るのが当たり前、というワークライフバランスを実現している。

日本は、中国と北欧の中間的なところにいるんだと思います。ただ、人口ピラミッドが崩れていっている以上、日本経済も働き方の多様性をどんどん広げていかないと立ち行かなくなることは明らかです。柔軟で、多様な働き方のスタイルを提供して、働く人にとっての<楽しさ>と<幸せ>を本気で実現して行きたいと思っています」。

「幸せでない」ワーキング・マザーたちの声を耳にすることが多い中で、ワーキング・マザーが「幸せ」に働ける環境とはどんなものなのかを知ろうと、取材してきました。今回、宮原さんにお話を伺うことで、ワーママの「幸せ」は、会社や経営者、引いては「日本」が社会全体として「幸せ」をどう捉えるか、「幸せ」にどれほど重きを置くか、にかかっていると言えるのではないか、そう考えさせられました。

トップ写真:株式会社エスタイル代表取締役社長、宮原智将さん

 

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