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.経済,ビジネス  投稿日:2015/5/30

[遠藤功治]【アジア向け二輪需要拡大で業績堅調】~ “キラリと光るダイヤモンドの原石企業” 群馬県編 1~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

地方創生企業の紹介ということで、地方のきらりと光る、自動車関係企業を紹介しているこのシリーズ、今回は第4回目としまして、群馬県桐生市に本社がある、「ミツバ」と言う会社を取り上げます。

桐生は群馬県中部に位置する、古くから織物を中心として発展した都市、今では残念ながら、繊維産業自体は大幅に縮小してはいますが、“ぐんま絹遺産”として登録されているものも多く、明治に建てられた三角形の屋根の工場群なども“重要伝統的建築物”に指定され残っています。世界遺産に登録された、同じ群馬県内の富岡製糸場ほど有名ではありませんが、日本の繊維産業の歴史を知る上で、重要な歴史遺産が数多い町です。

ここの名物料理に“ひもかわうどん”がありますが、これは幅がかなり広いうどんです。否、パッと見、うどんには見えません。昔織物工場で働いていた女工さんたちが、忙しい仕事の合間に、時間が無いので細く切る暇も無い、切る手間を省いた幅の広い生地の状態で茹でて食べた、と言われているものです。

市中央部を渡良瀬川が流れる風光明美な地方都市ですが、現在の人口は約10万人、それも近年は減少を続けています。東京から桐生には、浅草から東武の特急で1時間40分ほどと比較的近く、JR両毛線や上毛鉄道なども乗り入れています。最近注目の、わたらせ渓谷鉄道のトロッコ列車も、桐生から出ています。

さてミツバという会社、ホンダ系の自動車部品メーカーで、ワイパーやスターター、小型モーターなどを主力製品とする東証1部上場会社です。創業は戦後すぐの1946年、三ツ葉電機製作所として生まれ、当初は自転車用の発電ランプから始まりました。その後、自動車・二輪車用にホーンやワイパー、スターターなどに進出、1989年に東証1部上場、国内の大半の工場は群馬県内ですが、米国・メキシコ・中国・フィリピン・タイ・インドネシア・ブラジル・ハンガリーなど、海外進出にも積極的。

従業員数は連結ベースで2万人強ですが、時価総額は1,500億円ほどですから、自動車部品会社の中では中規模と言えます。売上高の約半分がホンダ向けですが、その他、日産自動車向けが15%、富士重向け4%、トヨタ向け4%、最近はVW向けが急速に伸びており、やはり売上高の約4%を占めるようになりました。ホンダ系と言ってもホンダの出資比率は3.6%で、他のホンダ系列会社と比べれば、その関係は緩いとも言えます。

発表されたばかりの2015年3月期決算では、売上高3,060億円と前年比12%伸び過去最高、当社として初めて3,000億円の大台に乗せました。営業利益も220億円と前期比30%増で過去最高益を更新しました。2016年3月期の会社計画も、売上高は5%増の3,200億円、営業利益は4%増の230億円で、小幅に保守的予想ではありますが、引き続き過去最高を更新する計画です。

この堅調な業績の背景には、二輪車の伸びがあります。他のホンダ系自動車部品メーカーの多くにも共通していることですが、二輪車市場で圧倒的にシェアが高い部品群を生産していることから、二輪車関係の部品の利益率が非常に高いのです。売上高の中で、二輪車関係が占める比率は約20%程度ですが、利益に占める比率は、約半分程度と推計されます。

従って、この二輪車関係の部品が堅調であれば、会社全体の業績もしっかりしてくる、ということになります。当社はホンダ系ということもあり、世界シェア第一であるホンダの二輪車の影響を大きく受けます。特に近年、市場が拡大しているインド・インドネシア・ベトナムなどに於いて、ホンダ向け売上が大きく拡大している訳です。

利益の残り半分が四輪車用、大きく分けて3種類に分類されます。その第1が“視界系”と呼ばれるもので、ワイパー・ウオッシャー・ドアミラーなど。ワイパーと言ってもワイパー単体ではなく、モーターやその他付属部品も含めたシステム機器です。

第2が“利便系”と呼ばれるもので、パワーウインドウモーター・パワーシートモーター・サンルーフモーター・ドアロックアクチュエーターなど。第3が“エンジン・走行系”関係で、スターターモーター・電子制御スロットルモーター・電動パワステモーター・電動サーボブレーキ用モーター、などとなっています。つまり、当社の技術の主体は小型モーターです。

【熾烈な競争、求められる独禁法違反対応】~ “キラリと光るダイヤモンドの原石企業” 群馬県編 2~ に続く。本シリーズ全2回。)

トップ画像/株式会社ミツバ HPより引用

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