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.経済,ビジネス  投稿日:2015/5/30

[遠藤功治]【熾烈な競争、求められる独禁法違反対応】~ “キラリと光るダイヤモンドの原石企業” 群馬県編 2~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

(この記事は、【アジア向け二輪需要拡大で業績堅調】~ “キラリと光るダイヤモンドの原石企業” 群馬県編 1~ の続きです)

1台の自動車に使用される小型モーターの数は、100個から200個とも言われ、車の電動化に伴い、その数は増加し続けています。手動で上下させていた窓ガラスも、今では軽自動車でさえ大半は電動です。シートの位置調整やミラーの格納などにも、多数の小型モーターが内蔵されています。自動車用のモーターを生産している会社は、デンソー・日本電産・マブチモーターなど、数々の大企業が名を連ねており、激烈な競争が続いています。

その環境の中で、談合により価格を決めていたとして、過去2年間ほど、国内や米国・中国・欧州などで独禁法違反により司法当局から摘発を受け、当社も合計100億円以上の特別損失を計上、またこれに関連して米国では、価格を不当に吊り上げたとして、自動車ユーザーからの集団訴訟も起こり、その損害補償や弁護士費用の引当金などで、更に数10億円の損失を計上しています。近年当社だけではなく、多くの自動車部品会社が、独禁法違反で摘発を受ける状況が世界中で続いています。ある意味、この業界における激烈な競争の中で生まれた結果の談合、ということかもしれません。

自動車メーカー自体も、昨年の中国で見られたように、独禁法で摘発を受けるケースが稀にあるのですが、その件数に関して言えば、自動車部品が圧倒的に多数となっています。また、過去に摘発された企業も、デンソー・アイシン精機・ジェイテクト・住友電工・古河電工・日本精工・三菱電機・矢崎総業・NTN・不二越・豊田合成・サンデン・ブリジストン・・・錚々たる顔ぶれです。各社が払った罰金もけたたましい額に上り、ミツバの100億円強というのは少ない方でしょう。また、今まで、多数の日本人が刑事罰の対象となり、数十人が実刑判決を受けています。

何故これほどまでに自動車部品業界で独禁法違反が起こるのでしょうか。まず、世界に目を向けますと、電機や通信、半導体、貨物、医薬などで、独禁法違反が多く摘発されているのですが、自動車部品も非常に多い。そして独禁法違反で摘発された自動車部品会社は、大半が日本企業であるという事実です。電機の場合は台湾・韓国・欧州メーカ―、医薬の場合は欧州、貨物の場合は韓国・欧州企業が多く摘発されているのですが、自動車部品では圧倒的に日本企業です。何故なのでしょうか。

この業界、競争は激烈です。そして自動車メーカーからの値引き要求も過酷です。自動車メーカーは更なる競争を促すため、同じ部品を2社発注として、複数企業から購買します。このような環境下、日本企業の場合は同業他社でも付き合いがあり、日本人・日本企業としての団結心も強い。東日本大震災の時に見られたように、苦しいから取りあうのではなく、お互いに助け合う。競合していることは事実なのですが、一方で業界として共存を考える、互助会の精神とでも言いましょうか、建設業界の談合疑惑と性格は似ているかもしれません。経営幹部はコンプライアンス順守と声高に謳っているかもしれませんが、末端の営業では熾烈な受注合戦・消耗戦となっており、共倒れを防ぐためという考えで一致、結果的に談合となり、独禁法違反での摘発となり易い業界なのでしょう。

ミツバからやや話しはずれましたが、当社も堅調な二輪車需要・自動車生産の拡大・自動車の電動化・円安と、足元は比較的順風の中での最高益更新ですが、過去何度か直面した負の側面、つまり独禁法違反対応などに真正面から取り組み、この業界を引っ張っていくことも要望されている、そんな企業の立ち位置を認識すべき時期に来ていると思います。

(本記事は【アジア向け二輪需要拡大で業績堅調】~ “キラリと光るダイヤモンドの原石企業” 群馬県編 1~ の続きです。本シリーズ全2回。)

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