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.社会,ビジネス  投稿日:2015/6/7

[遠藤功治]【株価一人負けのマツダ、その理由は?】~大手自動車会社決算と今後の課題 マツダ 1~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

前回ではトヨタ自動車の決算と今後の課題等につき取り上げました。その中でマツダとの提携についても簡単に触れました。今回は、そのマツダの現状と今後について述べたいと思います。

2015年3月期の営業利益は、前年度比11.4%増益となる2,028億円で、過去最高益を更新しました。2016年3月期の業績予想も、営業利益は3.5%増の2,100億円で、再度、最高益を更新するとしています。大手全国紙や自動車を専門とするメディアの多くも、この最高益更新を大々的に報道し、今やマツダという会社が完全に蘇ったとの印象を世間に与えました。

ところが、一箇所だけ、この実績・予想を冷淡に受け取ったところがありました。株式市場です。マツダの株価は、2014年後半に3,200円台をつけてから、この決算発表前後までほぼ一貫して下げ続け、決算発表前後の株価は2,300円台と、約30%の下落となりました。この間、トヨタの株価は約50%、スズキも約50%、日産が約30%、そして一人負けだ、リコールだと騒がれていたホンダでさえも、20%以上株価は上昇しました。株価の動きだけ見ると、マツダは過去最高益更新にも拘わらず、少なくともこの半年間、一人負けでした。

これはどういうことなのでしょうか。まず、株価は半年以上先を見据えての動きということです。現在のマツダにおける大幅な業績回復は、株価にはとっくの昔に織り込み済みということです。マツダの株価は、2012年春、500円台でした。それが昨年末には3,200円台ということは、2年ちょっとで株価は6倍上昇したことになります。

とっくの昔に昨年度・今年度の過去最高益は株価に織り込み済みなのです。反対から言うと、過去半年の一人負けの状況というのは、今後のマツダの業績について、市場が非常に懐疑的である、ということに他なりません。このところの急速な円安で、株価はやや持ち直し、足元は2,700円台と、5月につけた直近の底値から400円程度は上昇していますが、2014年末の高値からは依然15%程度低い水準、自動車大手の中で、現在の株価が、昨年後半時の株価を上回っていないのは、マツダだけなのです。

マツダの業績推移ですが、2000年3月以来、純利益ベースで赤字に陥ったのは5回、2009年3月期から2012年3月期は4年間連続の赤字と非常に厳しい業績が続きました。リーマンショック・東日本大震災・タイの洪水などに加え、最も業績に響いたのは超円高です。

当社の場合、海外生産比率が当時は20%以下と低く、大半は日本からの輸出、対ドル1円の違いで営業利益には約60億円程度の影響があり、対ドル80円を切るような円高下では、輸出は全く利益を生まず、国内販売も低調であったことから、収益は低迷を続けました。また、それ以前から、Fordとの提携によるメリット・デメリットが混在していた訳ですが、商品開発や地域戦略などで、Fordとの提携が明らかに後後まで負の遺産として残ったことも影響したと推定されます。

【トヨタがマツダにアプローチした理由】~大手自動車会社決算と今後の課題 マツダ 2~ に続く。このシリーズ全3回)

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