[瀬尾温知]【FIFA会長選、誰が立候補?】~選挙条件に革命求めるジーコと沈黙貫くプラティニ~
瀬尾温知(スポーツライター)
「瀬尾温知のMais um・マイズゥン」(ポルトガル語でOne moreという意味)
FIFAの会長選に立候補する意向を表明しているジーコが10日、リオデジャネイロで記者会見を行い、「立候補するには5か国のサッカー協会の支持を得ること」という現在の条件が変更されなければ、立候補を取りやめる考えであることを明らかにした。会長選に立候補するには、5か国のサッカー協会の支持を得ることが条件となっているが、ジーコは「そこが腐敗の始まりだ」として、「もし変更がなければ立候補はしない。投票してくれるようお願いするために世界を回ってお金を費やすことはしない。現行の方式に反対で、選挙はサッカーに役立つ奉仕によって決まるべきだと考えている。FIFAは今度の選挙のやり方について会議を催すべきである。今はその出方を拝見させてもらう」と持論を語った。
また、「私は62歳になるが、FIFAの会長で記憶にあるのはアヴェランジェとブラッターのみ。この2人だけによって世界のサッカーが動かされているのは許し難い事実だ」と、独裁政権が横行する現況に憤りを露わにした。
ジーコは2006年のワールドカップドイツ大会に日本代表監督として出場したあと、トルコ、ウズベキスタン、ロシア、カタールなどのクラブチームの監督になり、イラクでは代表チームを指揮した。ブラジルではスポーツ大臣に就任したことがあるが、政治よりもサッカーそのものに情熱を捧げてきた。
ジーコの考えには、まずブラジルサッカー連盟の職務に就くのがいいのではないか、という理想があった。友人であり、UEFA・欧州サッカー連盟会長のプラティニにもそう奨励されたという。ただ、ブラジルで会長になるには、国内にある27州のサッカー協会のうち8州から支持を得ないと出馬できないので、FIFAと似たり寄ったりであるが、まだFIFAの方に可能性があると判断したと胸の内を語った。
そのプラティニは、ジーコの会見と同じ日に、パリで行われた欧州選手権2016(フランス)開催まで365日となったイベントに出席した。
プラティニは会長選への立候補が取り沙汰されており、本人の口からの発言が注目の的になっている。しかしこのイベントでは、UEFA会長としての立場に徹した。FIFAの不正問題が欧州選手権2016に悪影響を及ぼすのではないかと危惧しており、集まった記者達に「ここに来た多くの人はFIFAの未来、私の未来について聞きたがっているだろうが、今日はその日ではない。あと365日を祝う席であって、FIFAのニュースによって欧州選手権が隠れてしまうようなことがあってはならない」と前もって通知した。
FIFA会長選は今年の12月から来年の3月の間に行われる見通しだが、それまでにどれだけの不正が暴かれることになるのか。9日にはワーナー元副会長が2010年のハイチ大地震の義援金75万ドルを着服した疑いが強まり、アメリカ司法省が捜査していることが分かった。この先に更なる激震が起きそうな予感を抱かせるのは、アメリカの、FBIのパワーは侮れないと再認識している証拠だろう。