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.政治  投稿日:2015/8/30

[細川珠生]【「謝罪に終止符」を打った総理談話】~戦後70年に想う~


 細川珠生(政治ジャーナリスト)|執筆記事 | プロフィール

Japan In-depth 編集部(Aya)

「謝罪やお詫びの盛り込むような談話であるなら、出さない方がいい」。70回目の終戦記念日を前に、前日の8月14日に出された「戦後70年談話」が出る直前まで、私は考えを同じくする人たちと、以上のような思いを述べてきました。

本来は、謝罪やお詫びを繰り返してきた戦後の日本の姿勢に終止符を打つために出そうとしていた総理談話。それが、色々な人の色々なリクエストによって、本来の目的を忘れたかのような、これまでと大差ない談話になるのではないかと大きな不安と不満を抱いていたのです。それでは、意味がないというより、日本にとって何もいいことはない、と思っていました。日本の正式な戦争に対する見解として拘束される総理の談話は、国内に対してはもちろん、国際的にも日本の信用や存在を高めるものでなければならないはずです。

時が来て、発表された「談話」は、「出してよかった」と心から思えるものになっていました。私が評価した点は次の3つです。

まず一つ目は、日本が「先の戦争」と言われているものに突き進んだ背景が、当時の広い国際情勢に照らしあわされて明らかにされているところです。

「100年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました・・・・・(中略)世界を巻き込んだ第一次世界大戦を経て、・・・(中略)当初は日本も足並みを揃えました。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった。こうして、日本は、世界の大勢を見失っていきました。」

というくだりです。なぜ、日本が戦争という手段を選んでしまったのか、選ばざるをえなかったのか、学校でも学んだことのない事実を明白に知ることができた点です。

二つ目は、先人たちの苦労、先人たちへの感謝について、忘れてはならないということを繰り返し述べている点です。「心に留めなければなりません」「思いを致さなければなりません」「この胸に刻み続けます」という言葉が、何度も出てきます。反省すべき点、誇るべき点、いずれも今を生き、これからを生きる日本人は忘れてはならないということは、歴史を紡いでいく上でもとても大切なことと思います。

三つ目、これが一番評価している点ですが、「あの戦争に何の関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」という箇所です。まさにこれが「謝罪に終止符」そのものと私は高く評価しています。

私は、戦後50年談話が出された時に、27歳でした。このころ、今の仕事を始めました。正直、本当にびっくりしたのです。「私が知らない戦争なのに、謝らないといけなんだ」と。当時は、まだ戦争経験者もたくさん存命でした。だから仕方ないのかな、というくらいに受け止めようとしました。しかし、10年後、60年談話の時も、また謝罪。当時も戦後世代が7割と言われていたのに、謝罪をしたのです。「一体、いつまで」というのが、私の率直な感想です。

仕事をしながら、謝るべき対象があるとすれば、それは国対国の交渉の中で、すでに済んだ話となっていることなどが分かると、日本の対外的な公式見解として拘束される「総理談話」として述べるにはふさわしくない内容であると思ってきました。

日本人は奥ゆかしく、つつましく、謙虚であるがゆえに、「悪いことしたなあ」と思うと、いつまでも謝る、いわば「へりくだる」習性のようなものを持っている国民性とも言えます。ただ、政府の公式見解となれば、日本人の国民性のようなものに影響されているようでは、賢い国とは思えません。

今回の「謝罪に終止符」を打った総理談話により、その重荷から解放された、私はそんな気分です。そして、これこそが、安倍政権だからこそできたと思わずにいられません。

しかし、談話の中では、先に挙げたように、過去の出来事について、「忘れてはならない」という姿勢を明確にしたことで、日本人はこれからも正直に、誠実に生きていく民族だということを、世界に明らかにしたことも事実でしょう。

私の世代でも、戦争は「歴史上の出来事」です。それだけ過去のことになりました。でも、終戦直後にソ連に侵攻された北方領土は、今はロシアが占拠し、実効支配の既成事実を重ね続けています。韓国には竹島の実行支配をさらに進め続けられています。尖閣諸島は国有化しましたが、領海侵犯が繰り返され、北朝鮮は日本に向けミサイルを向けています。

日本の周囲には、「戦後70年」たってもなお「終わり」となっていない問題がいくつもあります。国家の姿勢として「謝罪に終止符」を打ったあとは、これらの諸問題をきっちり解決することが、次に課せられた今を生きる大人たちの責任であると思います。

「子や孫、その先の世代の子供たちに、領土問題を解決しなくてはならないという宿命を背負わせてはなりません」。

そのために、一人ひとりの大人たちが何をすべきか、戦後70年を迎えた今、考えていかなればならないはずです。

2015年8月25日 父の七回忌命日に        細川 珠生

(この記事は、細川珠生氏の許可を得て、公式ウェブサイトから転載したものです)


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