[細川珠生]【福島第一、汚染水との戦いに前進】~廃炉に向けた動きを冷静に見る必要性~
Japan In-depth 編集部(Aya)
先週、Japan In-depth安倍編集長とともに福島第一原発を訪れた細川氏。その現状について取り上げた。震災後一年半ぶり、2回目の訪問となった今回。「少しずつかもしれないけれど、着実に進んでいると実感した」と細川氏は述べた。印象的だったのは、汚染水の問題。前回訪れた際は、水との戦いだったという。地下水は、原子炉建屋の中を通ることで汚染水になってしまう。地下水をどう建屋の手前でコントロールするかが課題だった。前回訪問時は、1日400トン発生する汚染水をくみ上げ、タンクにとにかく溜めていくことしかできなかったが、現在は、多核種除去設備(ALPS)などを含む複数の浄化設備で処理するようになり、2015年5月27日、貯蔵タンクの底に残る水を除き、ストロンチウムを含む高濃度汚染水の全ての浄化処理を完了した。
汚染水対策が着実に進展していることに、安倍も驚いたという。「全部が日本のメーカーだということに、日本の技術の高さを思い知らされた」と細川氏は話した。他にも、建屋周辺の井戸(サブドレイン)からくみ上げた地下水を浄化して海に放出する汚染水対策について地元の漁業者と合意するなど、汚染水対策水に大きな進展があったのが今年5月。また、建屋を囲む形で土を凍らせ汚染水の侵入を防ぐ“凍土壁”などの試験運転も終わっている。事故から4年半が経ち、水の問題はコントロール出来る段階に入った。今後汚染水の発生を1日100トンレベルにまで減らしたいと東電は語る。「本来の仕事である廃炉に注力できるようになる。まだまだだが一つ先が見えてきた。」と細川氏は語った。
前回の視察の際には、四号機は使用済燃料プールからの燃料取り出しに時間がかかる見通しだったが、予想以上に早く終わり、燃料は2014年12月に撤去された。細川氏は、「(原子炉の)一つがひと段落ついているというのは大きな前進だ」と話した。また、三号機では、がれきの山を遠隔操作で取り除いていたが、それらは除去され、これから燃料を取り出す段階まできた。着々と進んでいる現場を二人は目の当たりにした。
一方、一号機・二号機の作業はまだ進んでいない。ロボットを投入し、中の様子を見ている段階だが、燃料の取り出しが始まるまでには10年かかると言われている。今回の廃炉作業は世界に例のない、このためにオーダーメイドで開発されている技術である。技術開発センターも近くに作られ、2015年度内には模型を使い実験が行われる予定だという。「廃炉になった原子力発電所は日本の技術を大いに生かせる場面がある。」と細川氏は話した。
今回、細川氏と安倍氏は建屋近くにまで取材で入った為、防護服を身に付けた。しかし、線量が減って、今回は全面マスクではなく、半面マスクをつけての取材だった。敷地の中では、線量を抑えるために地表がむき出しになっている場所はモルタルなどで覆うフェーシングが行われており、作業員の装備はさらに簡易的なものになる予定だという。作業環境はかなり改善されている印象だ。「そこがなかなかみんなに伝わらない。それが残念だ。」と細川氏は述べた。
現場の作業員たちは、年間20ミリシーベルト以内に被爆量を抑えるようコントロールしながら、並々ならぬ努力で作業を続けている。細川氏はこのことを知ることの重要性を強く訴え、「報道では水が漏れたとか、(作業が)失敗した等という情報が多いが、(汚染水対策や廃炉に向けての準備などが)着々と進んでいるということも事実。できるだけそれらも情報として集める努力をして、冷静に考えることが国民として必要だ。原発だからすぐに悪ととらえない冷静な姿勢を持っていたい。」と話し、締めくくった。
(この記事は、ラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2015年8月29日放送 の内容を要約したものです)
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