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.国際  投稿日:2015/10/2

[岩田太郎]【10人死亡、米・キャンパス銃乱射の悪夢再び】~これでいいのかオレゴン州 1~


 岩田太郎(在米ジャーナリスト)

「岩田太郎のアメリカどんつき通信」

執筆記事プロフィール

米オレゴン州南部のローズバーグ市の2年制大学アンプクア・コミュニティー・カレッジで10月1日に26歳の容疑者、クリス・ハーパー=マーサーが、「お前たちの宗教を言え」と質問して銃を乱射、10人が死亡、3名の重傷者を含む7人が負傷した。銃所持禁止のキャンパスでの憎悪犯罪が疑われている。人口2万2千人の同市では、2006年2月にも現地高校で男子生徒が別の生徒を銃で負傷させており、悪夢が甦った。

また、17年前の1998年5月21日には、オレゴン大学のお膝元、中部スプリングフィールド市にあるサーストン高校で、銃の不法所持により退学処分を喰らったキップ・キンケル受刑囚(当時15歳)が乱射事件を起こして2名の生徒が死亡し、25名が負傷している。キンケル受刑囚は、成人として裁判を受け、現在、保釈なしの111年の懲役刑(再審請求却下)で収監中である。

オレゴン州では、ポートランド市やユージーン市など銃規制派が多数を占める「リベラル・スポット」と、保守的な「レッドネック(首の裏が赤く日焼けした白人農民の蔑称)」が多数派の地域が混在している。今回事件が起こったダグラス郡は、白人が92.4%を占める「レッドネック」地域で、銃規制反対派が多い。

同郡のジョン・ハンリン保安官は銃規制に反対し、20人の幼い子供を含む26人が犠牲になった2012年12月のコネチカット州サンディフック小学校銃乱射事件の後、2013年1月にバイデン副大統領に対し、「銃規制は、学校における銃乱射事件の防止策にはならない」との書簡を送っていた。

この事件で筆者が思い出したのは、娘と息子が通うユージーンの高校で今年6月に起こった、学校完全封鎖事件である。きっかけは、同校近隣のYMCAの託児所に、ライフル銃で完全武装した男が、幼い子供を連れて現れたことだった。

彼は、ユージーン市警の特殊火器戦術部隊(SWAT)所属の警官で、訓練に向かうため制服着用で武装し、その途中でYMCAに子供を預けに来たのだった。子供の手をつないで仲良く駐車場から建物へ歩いていた。だが、それを目撃した市民が仰天し、警察に通報したのである。市警は、まさかその重武装の男が自らの組織のSWAT要員だとは夢にも思わず、完全武装の不審者が徘徊していると誤解し、YMCAに駆けつけ、近隣の高校に完全封鎖を要請の上、包囲した。

当時、同校にいた娘をはじめ、全生徒・全職員に完全封鎖命令が出された。門・廊下・教室の扉という扉はすべて閉じられ、施錠され、何人たりとも席から動くことが許されなかった。完全武装の男が市警のSWATメンバーであり、彼が誰にも危害を加えていない、加えようとしていない、という事実が確認されるまでの数時間、生徒と先生はトイレに立つことも許可されず、閉じ込められたのだ。

もっとも、娘によると、誰も怖がったりパニックに陥ったりしなかったそうだ。暇つぶしのため、ツイッターやSNSを、それぞれのスマホで楽しみ始めた。だが、学校封鎖のSNSを見た親たちが逆にパニックを起こし、高校に車で押し寄せ始めた。そうした親たちを、「大丈夫だから、自宅に戻って、封鎖解除の知らせを待ってほしい」と追い返すのに、警察は苦労したという。

筆者は当時、「何と大げさな」と思った。通報者は、そのSWAT隊の男が、子供と仲良く歩いているのが目に入らなかったのだろうか。彼は、明らかに託児が目的だったのである。確かに重武装で街中に出るべきではなかったが、決して怪しい者ではなかった。通報者も警察も高校生の親たちも、過剰反応だと感じた。

だが、今回のローズバーグの事件で、予想される乱射に対して封鎖は有効な対策になり得ると、見直した。あらゆるドアが固く閉じられ、施錠されていれば、乱射犯は侵入しにくくなる。侵入されても、一つ一つのドアを突破するには時間と手間がかかる。その間に外や別の場所に逃げる余裕も出てくる。こうして、銃乱射に備えるオレゴン州の教育機関だが、ローズバーグでは突然のことで封鎖をする余裕もなかったのだろう。やはり、銃規制以外、抜本的な対策はない。

オレゴン州は最近、マリファナの所持と使用が合法化された。また、同性愛婚や安楽死の法制化も大々的に推進された。だが、肝心の人の命を守る銃規制は、進まない。また、同州はいつ大地震と津波に襲われてもおかしくないが、優先順位は低い。オレゴン州は、これでいいのか。

(2に続く。
「大地震・津波対策よりマリファナ解禁(仮題)」
本シリーズ全2回)

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