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.国際  投稿日:2016/2/16

中国軍高官、日本人差別発言 「米太平洋軍司令官は日系人」


古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

中国の人民解放軍高官が日本人の母親を持つアメリカ太平洋軍司令官に対し「日本人の血が入っているから中国に対して強硬なのだ」という民族差別むきだしの発言をした。

アメリカの「ワシントン・タイムズ」など数紙の報道によると、中国共産党機関紙英語版の「環球時報」は2月1日付で米海軍艦艇の南シナ海での「航行の自由」作戦を中国の主権侵害だと非難する記事を載せ、そのなかで中国海軍の上級大佐の李傑氏の論評として「この作戦の責任者であるアメリカ太平洋軍の最高司令官ハリー・ハリス海軍大将は中国に誤解と偏見を抱いており、とくに日本人の血が入っているため中国の封じこめに熱心な強硬派だ」と非難した。

この論評はアメリカ海軍のミサイル駆逐艦が1月30日、南シナ海のパラセル諸島(中国名・西沙諸島)から12海里以内の海域に入ったことへの抗議として掲載された。アメリカ海軍では中国側がパラセル諸島の一部に埋め立ての人工島を造成し、中国領土だと宣言していることへの抗議として、中国側が自国の領海だと主張する海域を公海とみなして自国の艦艇を進入させた。南シナ海での米側のこうした「航行の自由」作戦ではこれが二度目となる。

「環球時報」のこの記事はその米側の行動を中国領海への侵犯だと非難する主旨で、この作戦の総指揮官であるハリス大将にとくに糾弾の矛先を絞っていた。その糾弾ではハリス司令官に対して「とくに日本人の血が彼を強硬派にしている」と明確に述べており、特定の人種や民族を総括して、ああだ、こうだと断定するという、まさに異民族に対する差別や偏見に匹敵する記述となった。

ハリス司令官は日本人の母親とアメリカ人の父親の間に横須賀で生まれた。中国側はその出自について、日本人の血が入っているから中国に敵対的になると断じており、まさに現代の民族差別に相当するわけだ。


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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