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.国際  投稿日:2017/5/7

朝日が認めたくないトランプ政権の成果


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・オバマケア撤廃法案、下院で可決。トランプ政権公約達成。

朝日新聞、トランプ政権の撤廃法案提出延期を「敗北」と報道。

・残る上院も共和党が過半数だが朝日新聞は尚「難航必至」としている。

 

■オバマケア撤廃法案下院で可決

アメリカのトランプ政権が内政面では最大公約の一つだったオバマケア(オバマ政権による医療保険改革制度)の撤廃に向け、大きな前進を果たした。トランプ大統領の意を受けた連邦議会下院の共和党勢力が5月4日、オバマケア撤廃の法案を可決したのだ。

オバマケアの撤廃はトランプ氏の選挙公約の筆頭であり、そのための法案の下院での可決はまだ上院での審議が残っているとはいえ、同氏の公約達成としての大きな成果だといえる。

 

■トランプ政権の成果認めたくない朝日新聞

だが反トランプ基調を明確にする朝日新聞はその成果を認めず、いかにも悔しそうな反応をあらわにして、このオバマケア撤廃法案下院可決という重要な出来事をきわめて小さく報道している。トランプ政権の動向についての日本側の報道にはどうもこうした偏りが多いようだ。

アメリカ側で反トランプ色を鮮明にするニューヨーク・タイムズなどの民主党支持の主要メディアの影響も大きいといえよう。そういえば、朝日新聞はニューヨーク・タイムズとの報道交換の取り決めをしている。

トランプ政権はオバマケア撤廃法案については4月下旬に下院本会議に提出を図ったが、事前の票読みで賛成票が十分でないと判断し、提出を延期した。この際はニューヨーク・タイムズや朝日新聞はトランプ政権の「大きな挫折」とか「敗北」として大々的に報道した。

だが実際には法案はまだ表決もされず、当面の審議の延期にすぎなかった。しかも共和党内でその時点で起きた反対はオバマケアの保持を求めるのではなく、トランプ政権の提示法案がオバマケアを十分に抹殺していないとする反オバマ志向の動きだった。

この法案の延期が大ニュースなら、実際の提出、審議、可決という動きも同様に大きなニュースとなるはずである。だが朝日新聞では一面には載せないごく地味な扱いだった。しかも同法案可決後の5月6日の朝刊でもトランプ政権を採点する記事で、「目玉政策 立ち往生」と主見出しでうたい、その対象として「オバマケア撤廃、国境の壁」と副見出しで記していた。

この見出しだけみれば、オバマケア撤廃法案がつい2日前に下院で可決されたことを無視するどころか、「立ち往生」と反対の趣旨を報じたことになる。トランプ政権の政策の実現はとにかく認めたくないという子供っぽい、ゆがみ報道ともいえそうだ。とにかくトランプ政権の前進や成功は認めたくない、という悔しさ丸出しとも映る。

 

■「上院でも難航必至」と書く朝日の姿勢に疑問符

朝日新聞の【ワシントン=佐藤武嗣】発のその記事は「オバマケア撤廃の立ち往生」の根拠らしい記述として「定数100の上院で共和党は52議席しかなく、難航は必至だ」と書いていた。

しかし上院でも過半数の51票の賛成があれば、法案は可決されるのだ。僅差は公然の事実である。であるのに、共和党側がすでに過半数の議席を保持していながら、なお「難航」だとして、可決できないことがわかっているかのようにこの段階でもう書いているわけだ。これが客観報道なのだろうか。


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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