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.社会  投稿日:2019/4/26

人工肉バーガー、日本販売へ


ファイゲンバーム 裕香

「裕香のFrom California」

【まとめ】

・人工肉バーガー、食感もボリュームも本物の肉と遜色ない。

・健康、環境、動物愛護の観点から、人工肉の市場は拡大中。

・植物性人工肉という呼び方に議論も。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合、Japan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45427でお読みください。】

 

欧米では、植物性たんぱく質で作った人工肉が定着しつつある。その勢いは、ファーストフード店にも広がってきた。アメリカで人気のファーストフード店バーガーキングが、今月牛肉を使っていないハンバーガーの販売を開始した。シリコンバレーのベンチャー企業インポッシブルフーズと共同開発した「インポッシブル・ワッパー」だ。

同社の主力商品のハンバーガー「ワッパー」と見た目は変わらないものの、100パーセント大豆由来の人工肉を使い、脂質は15パーセント低く、コレステロールは90パーセントカットされている。トランス酸脂肪も含まれていない。代わりに値段は5.59ドルと普通のワッパーより1ドルほど高い。そして見た目だけではなく、味もほとんど普通のハンバーガーと変わらないのが、人気の秘密という。

大豆の根から抽出されたヘムと呼ばれる物質を配合させることで、肉独特の鉄の味を作り、肉汁滴るパティを再現した。売れ行きは上々で、フロリダやカリフォルニアからその味を試したくて買いに来る人もいるという。

バーガーキングの北米代表Chris Finazzoによれば、この人工肉を買う人の9パーセントがベジタリアンで、あとの90パーセントはヘルシーなオプションを望んで購入しているという。毎日ハンバーガーを食べたい人は沢山いるが、彼らは必ずしも毎日肉を食べたいわけではない、とChrisは言う。市場調査会社ミンテルのフードアナリストBartelmeによれば、アメリカの人口の7パーセントだけがビーガンかベジタリアンで、この傾向はここ最近あまり変わっていない。その代わりに多くの人が、フレキシタリアン(フレキシブルとベジタリアンを合わせた造語)で、基本はベジタリアンだけれど、食事に対して柔軟な選択ができ、時々肉や魚を食べる人だという。

アメリカのメキシカンファーストフードチェーンのDel Taco(デル タコ)も、2種類の植物性たんぱく質で作った人工肉を使ったタコスの販売を4月25日に開始するという。カリフォルニア州にある植物性の肉を製造するビヨンドミートとパートナーを結び、チーズの入ったベジタリアン用、ビーガン用の2種類を2.49ドルで販売予定だ。こちらも通常のタコスに比べると1ドルほど高い。他にもファーストフードチェーンのWhite Castleが去年9月にインポッシブルフーズの植物性ひき肉を使ったインポッシブル・スライダーを売り始め、今年1月にはCarl’s Jr.がビヨンドミートと提携して、ビヨンドバーガーを売り始めた。

実際に筆者がCarl’s Jr.のビヨンドバーガーを食べてみたが、これが豆からできているとは全く思えず、ジューシーで食感も肉に近く、ボリュームもあって意外とおいしかった。原材料を言われなければ、肉を使用していないとは、気づかなかったかもしれない。

▲写真 Carl’s Jr.の店頭 出典:著者撮影

▲写真 Carl’s Jr.のビヨンドバーガー 出典:著者撮影

世界最大のリサーチ会社「ニールセン」の調査によれば、植物性たんぱく質で作った人工肉のアメリカ国内年間売上高は、2016年3月から2019年3月の間で42パーセント上昇し、計8億8,800万ドルとなった。また、世界の人工肉の市場規模は、2020年までに52億ドルに達するとみられている。その背景には、健康志向、環境保全、動物愛護の高まりがあげられる。植物性たんぱく質で作った肉を使ってハンバーガーを作る場合、必要な水の99パーセント、土地の93パーセント、エネルギーの50パーセントを削減することができ、排出される温室効果ガスは90パーセント減少するという。

アメリカ食肉加工の最大手、タイソンフーズは、2016年競争力を維持する1つの方法として、代替タンパク源や食の持続可能性に投資を行うベンチャーキャピタル部門を立ち上げた。植物性由来の人工肉ビヨンドミートへの持ち株5%を出資した。また、今年末までに自社で、代替肉の販売をスタートすることを計画しているという。

人工肉ブームに対しては、ヘルシーで環境に優しく、美味しいという意見が多い一方で、通常のハンバーガーに比べると高いし、あっさりしていて少し物足りないと感じる人もいるようだ。また、アメリカ畜産協会の広報担当者は、「Plant-based meat(植物性の肉)という言葉は、消費者の混乱を招く。肉とは、伝統的な方法で、動物の肉からとられたたんぱく質食品にのみ使用される言葉だ。」とこの植物性人工肉の呼び方に反論をしている。現に去年5月アメリカのミズーリ州では、肉代用食品を「meat(肉)」として販売することが禁じられた。このような州法が施行されるのは、アメリカでは初めてだ。

▲写真 人工肉はPlant-based meat(植物性の肉)として売られている 出典:著者撮影

日本からは、三井物産がビヨンドミートに出資していて、今後日本での発売に向けて準備中だという。ダイエット食品市場が拡大している日本でも大きな関心を呼ぶのは間違いなさそうだ。

トップ写真:Carl’s Jr.店内 出典:著者撮影


この記事を書いた人
ファイゲンバーム 裕香ジャーナリスト

1999~2004:株式会社テレビ西日本 (福岡)にて、アナウンサーとして勤務。

2004~2006:ウガンダ共和国 NGO Ashinaga Rainbow Houseにてケアテイカーとして従事。

2006~2007:東京放送株式会社 24 時間ニュースチャンネル NEWS BIRD 契約キャスター 。

2007 :NPO 法人MUKWANOを設立。

2009:イギリス ブラッドフォード大学 アフリカの平和と紛争学修士号取得

東京大学大学院 総合文化研究科 地域文化学科(国際貢献)修士号取得

 

現在、カリフォルニア在住。バイリンガルMCプロフェッショナル所属

ファイゲンバーム 裕香

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