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.経済  投稿日:2015/1/30

[遠藤功治]【スズキ1位復帰宣言のワケはハスラーと円安】~軽自動車“S-D戦争”の真実 5~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

それでは何故、スズキが突然に1位確保を宣言したのか、何故8年振りにS-D戦争が再開となったのか、その理由を考えてみたいと思います。鈴木会長が今年はシェア1位をプライオリティーのトップとする、とはっきり宣言したにも拘わらず、スズキに聞いても“あくまで収益とのバランスを考えながら粛々と販促をしている”という禅問答のような答えしか返ってきません。

スズキに聞いても、ダイハツに聞いても、“メーカーとしては積極的に自社登録をしていることはありません”と、これも優等生的回答しか返ってきません。ただ、実際はPART4までに説明した通り、市場は乱売合戦一色、自社登録花盛り、収益は大きく打撃を受けている、というのが実情でしょう。

第1にあるのは、スズキの“ハスラー”です。2014年初めに投入された、軽のSUV、非常に積極的なTVコマーシャルもあり、軽自動車のジャンルとしては珍しいSUV市場ということもあり、また装備に比べ価格はそれほど高い訳でもない、などの理由で大ヒットとなりました。

スズキは当初平均月販目標を7,000台として発売を開始しましたが、あまりに旺盛な受注に生産が追い付かず、夏場にかけてその生産台数を2倍に引き上げました。このような非常に強力な商品が現われたことで、スズキ(ないしは鈴木会長)は、8年振りの1位奪還の可能性を確信したのでしょう。

これ以外にも、2014年は主力のアルトやワゴンRもフルモデルチェンジを実施、主力車種の多くが新型となったことで、商品力が一気に高まったことが、スズキに1位奪還を決意させた第一の要因でしょう。

第2には、今期の利益が想定以上に膨らむ可能性が出てきたことです。要因は円安とインド子会社の好調です。スズキは今期営業利益を前年度比微増の1,880億円としています。ただ当初の前提為替レートである対ドル105円からは10円以上円安に動いており、これだけでも80億円以上の利益嵩上げ効果があります。ユーロ分を考慮するとそのプラス要因は100億円にも上るでしょうか。

またスズキが世界で最もシェアの高い地域、インドの子会社、“マルチスズキ”の販売・業績が絶好調であることも、更に収益を押し上げる要因になると思われます。マルチの純利益は昨年度430億円前後、今期はこれを更に大幅に上回るものと予想されます。

結果、スズキが公表している今期利益計画は大幅に増額される余地があります。この利益嵩上げ部分を、国内の販売促進の原資として使える貯金が出来たという訳です。

更に、第3の理由があります・・・

(6に続く。このシリーズ全6回です。)

タグ遠藤功治

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