[遠藤功治]【軽“新古車”急増で販社苦境に】~軽自動車“S-D戦争”の真実 3~
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
国内自動車販社の問題点、それは大多数(トヨタ系を除いて)が、実質的には赤字であるという事実です。例えば日産系販社は国内に約120社程度ありますが、3分の2程度は赤字ではないでしょうか。
また、黒字となっている販社も、販売が好調だから黒字なのではなく、メーカーからの報奨金が入ってくるから黒字に見える、という会社が多いのです。ですから、メーカーからの報奨金が無ければ赤字転落、この報奨金を獲得するために、自社登録も厭わない、ということになります。
ただ、自社登録をし過ぎると、前回説明した新古車が市場に溢れることとなります。つまり、実際には殆ど走っていないので新車と同様な筈が、正式には登録をしているので、中古車扱いになっている車が増加している、ということです。
各社共に新古車の話しになると全否定をするのですが、実際は相当な数量の新古車が発生している模様です。通常でも、販社はディ―ラー内に展示する車や、試乗用の車、営業用の車など、ある程度の新古車を持っています。ただその比率は販売台数の10%にも満たないでしょう。
それが、販売競争の激化と共に比率が急上昇、2014年は平均的に20-30%、販社によっては販売台数の40%以上が自社登録車であった、などという噂も聞こえてきます。今回のS-D戦争によりこの2社の販売が、12月から急増したと記しましたが、当然のこととして、スズキとダイハツの2社を中心にして、自社登録の台数が大幅に増加していることは、容易に想像できるでしょう。
この急増した自社登録車はどこにいくのか、大きく分けて3方向です。第1には自社で中古車として販売する、第2はオークションで処分する、第3は新古車や中古車の専門業者に流す、というものです。
あくまで一般論ですが、走行距離が殆どゼロに近い新古車は原則、新車と同じ品質であるにも拘わらず、それが登録をしただけで、表面上の価格は20-30%価格が下がることとなります。
日本は世界で稀に見るほど、中古車の価格低下の速度が早いのです。よく“中古車は生もの”と言われるのは、新車は昨日でも今日でも価格は原則一定ですが、中古車は1日経つと価格が下がっていくのです。従って、中古車は新車以上に早く捌く必要があるのです。勿論、在庫として抱えるのは金利も罹りますし保管場所も必要、車はホコリをかぶってどんどん古くなる訳です。
(その4に続く。このシリーズは全6回です)