[遠藤功治]【急増する軽“新古車”、深刻な悪影響】~軽自動車“S-D戦争”の真実 4~
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
急増した自社登録車は大きく分けて3方向に流れます。第1には自社で中古車として販売する、第2はオークションで処分する、第3は新古車や中古車の専門業者に流す、というものです。
まず、第1の自社で中古車として販売する場合。自社登録は登録してノルマをクリアし報奨金を受け取る、までは美味しい話ですが、その後は苦難の連続です。自社の中古車として店頭に置くことは、同じ車種の新車販売に明らかに影響します。ほぼ全く同じ走行距離の車が20-30%安い訳ですから、誰もその新車を買おうとは思いません。
また、中古車として価格が下がりますから、下取り価格も下がります。つまり自動車を買う際に20%安いといっても、次の車を買う際に、その下取り価格も20%下がっていれば、ネットでは同じ訳です。すると、新古車ではない普通に打っている同じ車種の新車の査定価格も下がることとなります。ないしは、その新車が売れにくいので、値引き率が高くなるのも当然です。
第2のその車をオークション会場で処分するという場合、これも問題です。何故ならそのような新古車が大量にオークション会場に集まれば、やはり相場が崩れます。本当なら80万円で売りさばきたい、だけれども70万円でしか落札者がいない、ただ在庫として持っていても価値はどんどん下がる一方、ならば損失覚悟で処分する、すると益々、相場が崩れる、といことになります。
市場が正常なら、その車は新車として販売されていた筈で、5万円なり10万円の粗利を挙げていた筈なのが、反対に5万円の赤字で在庫処分をする羽目になる訳です。この中古車価格の下げというのは、中長期的にはその車種のブランドイメージを低下させることになり、しいては、そのメーカーの他の車種の実質価格の低下、値引き額の拡大、収益の低下、というサイクルを生みだすこととなります。
1車種のモデルサイクルは、平均4-5年ですから、1度この状況に陥ると、そこから脱するためには次のフルモデルチェンジまで4-5年間、待たなければいけない、という状況に陥ることとなります。
第3の新古車専門店に流すというやり方。これが今は花盛りです。インターネットで“未使用車専門店”で検索をして頂くと、出てくる、出てくる、日本全国至る所に新古車を専門に売る販売業者があることに驚きます。
特に大都市よりも、その郊外、ないしは地方に多くが立地しています。軽自動車や中古車は特に地方で普及率が高いのが特徴です。都道府県別で軽自動車の普及率が最も高いのが、佐賀・鳥取・長野・山形・島根の各県、最も低いのが、東京・神奈川です。結果、ただ東京や大阪の周辺、国道沿いには中古車専門店と並んで、未使用車専門店の販社も近年非常に増えてきたようです。
これだけの業者が存在しうるということは、それだけの新古車が発生している証拠であり、旺盛な需要もあるということです。新古車が発生するから需要が生まれるのか、そこの需要があるから新古車が発生するのか、鶏と卵の関係でしょう。
(5に続く。このシリーズ全6回です。)