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スポーツ  投稿日:2015/3/14

[Football Edge 編集部]【現地発コラム】〜なぜタイリーグで60名以上の日本人選手がプレーするようになったのか?〜


Football EDGE 編集部

(文・写真 本多辰成)

執筆記事

ここ数年、タイリーグでプレーする日本人選手が急増している。その数、およそ60人。単純計算で、Jクラブ2チーム分の選手がタイでプレーしているのだ。 なぜ、こんなにもタイリーグでプレーする選手が増えたのだろう? タイサッカーの事情に精通する現地在住ジャーナリストに、現状を解説してもらった。

近年、タイでプレーする日本人選手が増えている。2009年ではわずか3名だったのが、年々増え続け、昨季はついに60名を突破。現在、世界で最も多くの日本人選手がプレーする海外のリーグとなっている。

昨季は岩政大樹(現・ファジアーノ岡山)、茂庭照幸(現・セレッソ大阪)、カレン・ロバート(現・韓国・ソウルイーランドFC)といった、日本でも名の知れた選手たちがプレーしたことで、その事実は日本のファンの間でもずいぶん認知されたことだろう。

今季はリーグの外国人枠が7から「5」へと縮小した影響で、日本人選手の総数も昨年よりは減少したものの、1部であるタイ・プレミアリーグから3部に相当するディビジョン2まで、計50名ほどの日本人がタイでプレーしている。

では、なぜこれほど多くの日本人がプレーするようになったのか。そのきっかけとなったのが、2009年から3シーズンをタイでプレーした丸山良明(現・セレッソ大阪U18コーチ)の存在だ。

丸山は横浜F・マリノス、アルビレックス新潟などでプレーした後、タイに渡ると、タイサッカーのポテンシャルに魅力を感じ、独自にレポートを作成するなどして日本人選手に情報を提供。日本人とタイリーグの、最初の架け橋となった。

それをきっかけに、タイでプレーする日本人が瞬く間に増えていったというのが、その後の2、3シーズンで起きたことだった。だが、ここ1、2シーズンに見られる現象は、もはやそれだけで語りきれるものではない。

丸山の行動と時を同じくして動き出した、Jリーグの『アジア戦略』によってタイリーグにスポットが当たったこと、さらにはリーグの規模拡大による『サラリーの上昇』や『環境面の改善』が著しいことなども、日本人選手のタイ進出を後押ししてきた。

待遇面については一概に語ることはできないが、日本代表歴を持つ選手たちがやってきたことからもわかるように、今のタイリーグには、日本で実績のある選手にとっても十分な選択肢となりうるクラブが存在するのも事実だ。

120ものクラブが存在、根底には友好的な両国関係

もう一つ注目すべきは、タイリーグが3部リーグ計約120ものクラブからなるという点。タイの全77県のほぼすべての県にチームが点在し、Jリーグをはるかに上回る数のプロチームが活動していることはあまり知られていない。

3部リーグにあたる『ディビジョン2』は日本の地域リーグのように、タイ全土を6つの地区に分けてリーグ戦を行い、最後に上位チームが「チャンピオンズリーグ」と呼ばれる『ディビジョン1(2部リーグ)』昇格をかけた決勝リーグを行うレギュレーションになっている。

下部リーグは事実上、地元有力者のポケットマネーによって運営が成り立っているクラブも多く、プロとして健全かといえば疑問符はつく。とはいえ、プロクラブ数の多さが「世界一多くの日本人がプレーするリーグ」の一因となっている。

ディビジョン2には日本でプロ経験のない若い選手も多く在籍しており、現地の平均的な月給程度のサラリー(5〜6万円ほど)を得てプロキャリアをスタートさせている。

また、昨季はタイでの活躍が認められて平野甲斐がセレッソ大阪へ移籍。今季もJリーグでのプレー経験のなかった能登正人がタイリーグを経てジェフ千葉に加入するなど、「タイ経由Jリーグ行き」のパターンも生まれ始めている。

プロ選手としてのキャリアをスタートさせる場として、あるいはステップアップの場としてのタイリーグの可能性は、今後ますます広がっていくだろう。

最後にもう一つ、タイリーグで日本人選手が急増した理由を、日本とタイの関係性、そして受け入れる側のタイの視点からも挙げておきたい。

タイには『世界最古の歴史を持つ日本人会』が存在するなど、深く長い日本人との関係があり、日本を自然に受け入れられる土壌がある。タイで日本人を 語るときに必ず出てくるフレーズが「規律」だが、秩序やマナーなどにおいて「日本を見習おう」という空気は古くからあるものだという。

日本サッカーがアジアをリードするようになった昨今、サッカーにおいても「日本から学ぼう」という発想が自然に生まれているのを感じる。

日本人が所属するチームの客席には、必ずと言っていいほど日の丸が掲げられている。日本を好意的に受け入れてくれるタイという国、その友好的な両国関係が、日本人が多くプレーする現象の根底に存在しているのだ。

提供元:<Football EDGE>10849790_1522512774673452_699522702208334408_n


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